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「宇宙でナイフで刺されたら血しぶきはどう飛び散る?」宇宙犯罪に備え宇宙法医学が誕生

ニューズウィーク日本版 2024年8月17日 11時15分

茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
<米英研究者が協力。無重力下では、血痕が特有のパターンを示すことも既に分かっている>

アルテミス計画では、日本人宇宙飛行士が月面着陸することが正式に決定した。

国際宇宙ステーション(ISS)では2011年の運用開始以来、微小重力環境で宇宙飛行士たちが健康チェックや科学実験をして、来たる宇宙生活時代に備えている。

だが、人が集まれば争いは避けられない。宇宙で恨みを買ってナイフを突き刺されたら、血しぶきはどう飛び散るのか。地球の常識は通用しないだろう。

現役の犯罪捜査官であり英スタッフォードシャー大学で血痕の研究もするザッカリー・コワルスキーは、将来の宇宙犯罪捜査のために立ち上がった。

米ルイビル大学で宇宙での外科手術を研究するジョージ・パンタロスに協力を依頼。無重力体験ができる飛行機で、密度と粘度を本物と同じように調整した疑似血液を20センチ離れた紙に噴射する様子を動画撮影してもらった。

結果は、地上のように放物線を描かず直線的に飛んだ。宇宙では血液は物体の表面にくっつきやすくなることが理由だ。また、無重力下では血液の表面張力が非常に大きくなり、血痕が特有のパターンを示すことも分かった。

将来、ISSや月で事件や事故が起きた場合、捜査の重要な手掛かりになりそうだ。

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