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新発見の白亜紀ワニ、化石が解き明かす古代の海洋生態

ニューズウィーク日本版 2024年8月16日 13時20分

アリストス・ジョージャウ
<白亜紀の海を泳いでいた新種のワニ目生物が、化石からその生態と姿を明らかに>

およそ1億3500万年前の中生代、いわゆる恐竜の時代に生息していた生物の化石について、「注目すべき」ワニの仲間の新種だったとする研究結果が発表された。

【画像】白亜紀の海を泳いだ新種ワニ、化石からその姿が明らかに

 

古生物学誌のジャーナル・オブ・システマティック・ペリオントロジーに発表された研究によると、「Enalioetes schroederi(E. schroederi)」と命名されたこの水生海洋生物は、白亜紀(1億4500万年~6600万年前)に現在のドイツを覆っていた浅い海に生息していた。

E. schroederiはワニ目メトリオリンクス科に分類されている。メトリオリンクスはイルカのような体の構造、鱗のない滑らかな皮膚、ひれ、尾びれといった特徴的な進化を遂げたことで知られる。そうした特徴は、クロコダイルやアリゲーター、カイマン、ガビアル、さらには既に絶滅した種も含めて、現代のワニとは大きく異なる(ワニ目は、絶滅した種も生きている種も含め、ワニのような爬虫類に関連した全ての種を網羅する)。

メトリオリンクスはイカや魚など動きの速い生物も含め、さまざまな獲物を捕食していた。大きなのこぎりのような歯を持つ種もあり、海洋爬虫類の仲間を餌にしていたことがうかがえる。

E. schroederiは白亜紀の最も早い時期に現れたメトリオリンクスの一種で、この時代の生物の多様性に改めて脚光を浴びせている。メトリオリンクスはその前のジュラ紀(2億100万年~1億4500万年前)に生息していた種が最も有名だが、白亜紀の化石はほとんど見つかっていなかった。

「Enalioetesは、白亜紀にメトリオリンクスがどう進化したかを探る手がかりを与えてくれる。ジュラ紀のメトリオリンクスは、ひれ、尾びれ、鱗板の喪失、鱗のない滑らかな皮膚など、ほかのワニとは大きく異なる体の形状を進化させた。そうした変化は海洋性が強まったことに対する順応だった」。論文を発表したスコットランドのエディンバラ大学ジオサイエンス校のマーク・ヤングはプレスリリースの中でそう解説している。

「その傾向が白亜紀に入っても続いたことを、Enalioetesは示している。ほかのメトリオリンクスに比べて目はさらに大きくなり、耳骨は一層コンパクトになった。泳ぐのも恐らくEnalioetesの方が速かった」

新種と分類した根拠

新種とする分類は、ドイツ・ハノーバー近郊にあるザクセンハーゲンの採石場から出土した立体的な頭骨と第一頸椎に基づく判断だった。この標本は白亜紀のメトリオリンクスの頭骨の中では最も保存状態が良く、完全な形を保っていた。

論文筆頭筆者でドイツのビーレフェルトにある自然史博物館のスヴェン・ザックスはリリースの中でこう述べている。「この標本は、3次元の形状を保った頭骨で知られる数少ないメトリオリンクスの一つとして注目に値する。そのおかげで標本のCTスキャンができ、こうした海洋ワニの生体構造について多くを学ぶことができた」

「保存状態が並外れて良好だったおかげで、この動物の体腔や内耳まで再現できた」(ザックス)

化石標本は100年以上前にドイツ政府の建築家が発見し、研究のためベルリンにあるプロイセン地質調査所のヘンリー・シュローダーの手に渡った。第2次世界大戦中に紛失したと思われていたが、後にドイツ西部のミンデン博物館で発見され、現在も同博物館が所蔵している。

過去にはメトリオリンクス科の別の属に分類されていたが、最新の研究の結果、「独特の」骨格の特徴から研究チームが新種と判断した。

(鈴木聖子)

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