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ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間

ニューズウィーク日本版 2024年8月16日 19時21分

エリー・クック
<ウクライナ軍による突然の「国境を越えた進軍」への対応に追われるロシア軍。その慌てぶりが表れたような「誤射」の瞬間が撮影されていた>

8月上旬、ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃が突如開始されたことで、ロシア軍に動揺が広がっている。ウクライナ軍を撃退するため「対テロ作戦」を展開するクルスク州の戦闘地域の近くでは、ロシア軍のヘリコプターが誤って味方の装甲車を攻撃してしまう出来事も発生。この瞬間は動画に収められており、SNSで拡散されている。

■【動画】ウクライナ「越境攻撃」で大混乱中...ロシア軍ヘリ、誤って味方を「爆撃」してしまう瞬間の映像

ウクライナ内務省の元顧問であるアントン・ゲラシチェンコとオープンソース・インテリジェンスの複数のアカウントがインターネット上で共有した動画には、ロシア軍の攻撃ヘリKa-52がウクライナとの国境地帯にあるクルスク州の町スジャ近郊で、同じロシア軍の装甲車の車列を攻撃した瞬間とされるシーンが映っている。

ウクライナ軍は8月6日にロシアへの越境攻撃を開始。何千人ものウクライナ兵が国境を越えてクルスク州に入っている。約2年半前にロシアがウクライナへの本格侵攻を開始して以降、ウクライナがロシア領のこれほど奥深くまで侵入したのは今回が初めてだ。ウクライナ軍は素早く進軍し、15日にはスジャを完全制圧したと主張している。

ロシア側は、ロシア連邦保安局(FSB)が率いる「対テロ作戦」のもと、ウクライナ軍の進軍を阻止したと主張している。だがロシアの著名な軍事ブロガーたち(ウクライナとの戦争についてロシア政府が公表しない情報の発信源となることが多い)や西側のアナリスト、ウクライナの当局者らは、ウクライナ軍が今もクルスク州で進軍を続けていると指摘している。

隣接するベルゴロド州も非常事態を宣言

14日にはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、ウクライナ軍は「クルスク州で進軍を続けており、夜明け以降に同州内の複数の地域で1~2キロ前進した」と発言。このことはウクライナ軍が同州で数時間のうちに1.6キロ超の進軍を果たしたことを意味している。

また同日、同じくウクライナとの国境地帯にありクルスク州の南東に位置するロシアのベルゴロド州が非常事態を宣言した。同州のアレクセイ・スミルノフ知事代行は、「クルスク州の状況は依然として厳しい」と述べた。

ウクライナ北東部スーミ州でクルスクの状況を監視している匿名のウクライナ兵は英BBCに対して、ウクライナ軍の部隊は国境を越えて「ほぼ直後にスジャの西郊に達した」と述べた。

現在スジャが誰の支配下にあるのかは明らかになっていない。ロシア南部チェチェン共和国の特殊部隊で司令官を務める人物は14日、ロシアの国営メディアに対して、ウクライナ軍がスジャを制圧したという報道を否定。現地では「戦闘が続いて」いるが、スジャの町の中には今もロシア軍の部隊がいると述べた。

ウクライナは「戦争をロシア領に移す」決意

米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」によれば、ウクライナのメディアはウクライナ人ジャーナリストがスジャ中心部にいる映像を含むリポートを報じ、ウクライナ軍がスジャの「少なくとも一部」とその周辺を掌握していることを示唆している。

ウクライナの当局者らは、ロシアへの越境攻撃は自衛に重点を置いたもので、クルスク州を拠点に行われる破壊的な攻撃からウクライナの領土を守るためだとしている。

ウクライナ大統領府のミハイロ・ポドリャク顧問は14日、ロシア語の独立系メディア「メドゥーザ」に対して「ウクライナが展開しているのは防衛戦だ。ロシア軍との間に必要な距離を確保すべく彼らを押し戻し、ロシア軍の砲弾がウクライナの民間人に対して使われることがないようにしている」と述べた。

ポドリャクはまた、ウクライナ側はロシア軍がウクライナ領内にいる部隊への物資補給に使用しているルートの遮断やロシア指導部の「失敗を明らかに示す」ことにも注力しているとつけ加え、ウクライナは「戦争をロシア領に移す」決意だと述べた。

クルスク州に経験豊富なロシア軍の増援部隊が到着するなか、ウクライナ軍が次にどのようなステップを取るのかは明らかになっていない。


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