舞田敏彦(教育社会学者)
<平均年収は一部の極端な数値に影響されるため、全体の中での位置付けを見るには年収分布の方が精度が高い>
自分の年収は高いのか、それとも低いのか――。関心を持っている人は多いだろう。ニュースで報じられる平均年収と比べる人が多いが、平均値は普通の目安を知る指標としては怪しい面がある。一部の極端な値に影響されるためだ。
ならば中央値はどうかというと、これとて全体のちょうど真ん中というだけで、この値と比較してどうか、という情報だけでは物足りない。全体の中のどの辺りか、上位20%に入るか......。こういうことも知りたいものだ。
そのためには、元データの分布に当たる必要がある。働く人の年収を知るのに最適な資料は、総務省の『就業構造基本調査』だ。雇用労働者ではないフリーランス等も含む全労働者の年収分布が出ているが、ここでは正規職員(正社員)に限定する。<表1>は、働き盛りの40代男性正社員の年収分布だ。
中ほどが厚い標準的な分布だ。年収が分かる633万人のうち、最も多いのは年収400万円台。中央値(累積%=50)は、赤色の年収500万円台の階級に含まれることが分かる。按分比を使って、中央値を割り出すと以下のようになる。
・按分比=(50.0-41.7)/(57.6-41.7)≒0.5211
・中央値=500万円+(100万円×0.5211)=552.1万円
40代男性正社員の年収中央値は552万円。違和感のない数値だ。これは100人中50位(真ん中)の数値だが、100人中20位の値はどうか。上位20位の数値(累積%=80)は、青色の700万円台の階級に含まれる。先ほどと同じく按分比を使って算出してみる。
・按分比=(80.0-71.3)/(81.9-71.3)≒0.8203
・中央値=700万円+(100万円×0.8203)=782.0万円
40代男性正社員の場合、年収782万円が上位20%のラインということになる。同じやり方で、他の順位値(10位、30位...)も計算できる。男女の年齢層ごとに、主な順位値を示すと<表2>のようになる。
20代の男性正社員では、100人中5位の値は598万円。大よそ年収600万円あれば、上位5%以内ということになる。
表の赤いラインは年収600万円の位置を示していて、30代男性では20~30位、40代では40~50位、50代では50~60位の間ということになる。50代の男性では、年収600万円は中央値(50位)を下回るが、同年代の女性では上位20~30%の間だ。賃金のジェンダー差も出ている。
自分の年収は全体の中のどの辺りか。判断する上での目安として使える。
<資料:総務省『就業構造基本調査』(2022年)>
【関連記事】
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ならば中央値はどうかというと、これとて全体のちょうど真ん中というだけで、この値と比較してどうか、という情報だけでは物足りない。全体の中のどの辺りか、上位20%に入るか......。こういうことも知りたいものだ。
そのためには、元データの分布に当たる必要がある。働く人の年収を知るのに最適な資料は、総務省の『就業構造基本調査』だ。雇用労働者ではないフリーランス等も含む全労働者の年収分布が出ているが、ここでは正規職員(正社員)に限定する。<表1>は、働き盛りの40代男性正社員の年収分布だ。
中ほどが厚い標準的な分布だ。年収が分かる633万人のうち、最も多いのは年収400万円台。中央値(累積%=50)は、赤色の年収500万円台の階級に含まれることが分かる。按分比を使って、中央値を割り出すと以下のようになる。
・按分比=(50.0-41.7)/(57.6-41.7)≒0.5211
・中央値=500万円+(100万円×0.5211)=552.1万円
40代男性正社員の年収中央値は552万円。違和感のない数値だ。これは100人中50位(真ん中)の数値だが、100人中20位の値はどうか。上位20位の数値(累積%=80)は、青色の700万円台の階級に含まれる。先ほどと同じく按分比を使って算出してみる。
・按分比=(80.0-71.3)/(81.9-71.3)≒0.8203
・中央値=700万円+(100万円×0.8203)=782.0万円
40代男性正社員の場合、年収782万円が上位20%のラインということになる。同じやり方で、他の順位値(10位、30位...)も計算できる。男女の年齢層ごとに、主な順位値を示すと<表2>のようになる。
20代の男性正社員では、100人中5位の値は598万円。大よそ年収600万円あれば、上位5%以内ということになる。
表の赤いラインは年収600万円の位置を示していて、30代男性では20~30位、40代では40~50位、50代では50~60位の間ということになる。50代の男性では、年収600万円は中央値(50位)を下回るが、同年代の女性では上位20~30%の間だ。賃金のジェンダー差も出ている。
自分の年収は全体の中のどの辺りか。判断する上での目安として使える。
<資料:総務省『就業構造基本調査』(2022年)>
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