ジェス・トムソン(科学担当)
<北極や南極の氷が溶けて大量の水が赤道付近に移動する結果、地球の自転にブレーキが。うるう秒の運用にも問題発生──【最新研究】>
気候変動が実にさまざまな面で地球に大きな影響を及ぼしていることは、よく知られている。例えば、気候変動は強力なハリケーンや深刻な干ばつ、外来種の増加や海洋の酸性化を引き起こす。
しかし、最新の研究によると、ほかにも思いも寄らない(もしかすると、あなたが聞いたことがない)影響があるのかもしれない。
先頃、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によれば、気候変動の影響で地球の1日が少しずつ長くなっている可能性がある。それは、地球温暖化により北極と南極の氷が溶け、海面が上昇している結果だという。
「今日の気候変動は、歴史上前例のない規模で進んでいる。ここ数十年、気候変動により氷河と氷床の融解が加速し、海水面が上昇してきた」と、この論文の著者であるスイス連邦工科大学チューリヒ校のモスタファ・キアニ・シャフバンディらは記している。
「その結果、両極地方から赤道地帯へ海水が大量に移動し、地球がより扁平型になり、その影響で地球の1日の長さが長くなっている」
地球の赤道付近が太くなると、その形状が原因で自転の速度が減速し、1日の長さが長くなるのだ。
「うるう秒」も延期に?
地球の1日の長さは、およそ8万6400秒。シャフバンディらの論文によると、1日の長さは、月の引力の影響により、これまでも長い時間をかけて少しずつ延びてきた。
月の引力によって潮の満ち引きが起こり、大量の海水が移動することで、海水と海底の間に摩擦が生じ、地球の自転にブレーキがかかるためだ。
この研究によると、両極地方から赤道地帯への海水の移動により、20世紀の100年間で1日の長さは0.3~1.0ミリ秒延びた(1ミリ秒=1000分の1秒)。
ところが、2000年以降、この原因により1日の長さが延びるペースは、100年当たり1.33ミリ秒±0.03ミリ秒に上昇しているという。南極は年間平均約1500億トンの氷を失っており、グリーンランドの氷冠も年間平均約2700億トン減っている。
今回の論文によると、もし温室効果ガスが大量に排出される状況が変わらず、気候変動が加速し続けるとすると、気候変動が原因で1日の長さが延びるペースは、2100年には100年当たり2.62ミリ秒±0.79ミリ秒に達する可能性もある。
これは、月の引力の影響(100年当たり2.40ミリ秒)を上回る。
「仮に温室効果ガスの排出が大幅に抑制されたとしても、向こう数十年間は、100年当たり1.0ミリ秒のペースが続くと予想できる」と、この論文は記している。「もし温室効果ガスの排出が増え続ければ、このペースはさらに上昇する」
これにより、時間の計測の仕方にも影響が及ぶ可能性がある。これまで、世界的な時刻の基準である協定世界時と、地球の自転のペースのズレを補正するために、26年に協定世界時に1秒の「負のうるう秒」を導入する必要があるとされてきた。
しかし、いくつかの研究によると、地球の自転速度が遅くなっている結果、その時期を29年まで延ばすことになるかもしれない。
地球温暖化の影響は、思わぬところにも波及するのだ。
<北極や南極の氷が溶けて大量の水が赤道付近に移動する結果、地球の自転にブレーキが。うるう秒の運用にも問題発生──【最新研究】>
気候変動が実にさまざまな面で地球に大きな影響を及ぼしていることは、よく知られている。例えば、気候変動は強力なハリケーンや深刻な干ばつ、外来種の増加や海洋の酸性化を引き起こす。
しかし、最新の研究によると、ほかにも思いも寄らない(もしかすると、あなたが聞いたことがない)影響があるのかもしれない。
先頃、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によれば、気候変動の影響で地球の1日が少しずつ長くなっている可能性がある。それは、地球温暖化により北極と南極の氷が溶け、海面が上昇している結果だという。
「今日の気候変動は、歴史上前例のない規模で進んでいる。ここ数十年、気候変動により氷河と氷床の融解が加速し、海水面が上昇してきた」と、この論文の著者であるスイス連邦工科大学チューリヒ校のモスタファ・キアニ・シャフバンディらは記している。
「その結果、両極地方から赤道地帯へ海水が大量に移動し、地球がより扁平型になり、その影響で地球の1日の長さが長くなっている」
地球の赤道付近が太くなると、その形状が原因で自転の速度が減速し、1日の長さが長くなるのだ。
「うるう秒」も延期に?
地球の1日の長さは、およそ8万6400秒。シャフバンディらの論文によると、1日の長さは、月の引力の影響により、これまでも長い時間をかけて少しずつ延びてきた。
月の引力によって潮の満ち引きが起こり、大量の海水が移動することで、海水と海底の間に摩擦が生じ、地球の自転にブレーキがかかるためだ。
この研究によると、両極地方から赤道地帯への海水の移動により、20世紀の100年間で1日の長さは0.3~1.0ミリ秒延びた(1ミリ秒=1000分の1秒)。
ところが、2000年以降、この原因により1日の長さが延びるペースは、100年当たり1.33ミリ秒±0.03ミリ秒に上昇しているという。南極は年間平均約1500億トンの氷を失っており、グリーンランドの氷冠も年間平均約2700億トン減っている。
今回の論文によると、もし温室効果ガスが大量に排出される状況が変わらず、気候変動が加速し続けるとすると、気候変動が原因で1日の長さが延びるペースは、2100年には100年当たり2.62ミリ秒±0.79ミリ秒に達する可能性もある。
これは、月の引力の影響(100年当たり2.40ミリ秒)を上回る。
「仮に温室効果ガスの排出が大幅に抑制されたとしても、向こう数十年間は、100年当たり1.0ミリ秒のペースが続くと予想できる」と、この論文は記している。「もし温室効果ガスの排出が増え続ければ、このペースはさらに上昇する」
これにより、時間の計測の仕方にも影響が及ぶ可能性がある。これまで、世界的な時刻の基準である協定世界時と、地球の自転のペースのズレを補正するために、26年に協定世界時に1秒の「負のうるう秒」を導入する必要があるとされてきた。
しかし、いくつかの研究によると、地球の自転速度が遅くなっている結果、その時期を29年まで延ばすことになるかもしれない。
地球温暖化の影響は、思わぬところにも波及するのだ。