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アフガニスタンが国際テロの「発射台」に? 米軍撤退3年後、拡大するアルカイダの影

ニューズウィーク日本版 2024年9月2日 13時10分

ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者〔米国防総省担当〕)
<米軍撤退後3年が経ち、アフガニスタンでアルカイダが拠点を拡大。タリバン政権の存続を脅かす存在に?>

米軍が全面撤退して3年。国際テロ組織のアルカイダがアフガニスタンで勢力を拡大させている。2024年に入って新たに設けた軍事拠点は、9カ所に上る。アフガニスタンのタリバン政権は、テロ組織を取り締まるという方針を徹底できていないようだ。

「アルカイダは、パンジシール渓谷の中心にも基地と武器庫を確保し始めている」と語るのは、タリバン政権に抵抗するアフガニスタンの武装勢力「民族抵抗戦線(NRF)」の外交トップ、アリ・マイサム・ナザリーだ(北東部のパンジシール渓谷はNRFの拠点)。「そんなことは過去に例がなかった。1990年代にもあり得なかったことだ」

ナザリーによれば、21年8月にタリバンが政権を掌握し、その後程なく米軍がアフガニスタンから撤退して以降、アルカイダ、過激派組織「イスラム国」(IS)傘下の「ISホラサン州(IS-K)」、パキスタン・タリバン運動(TTP)、ウズベキスタン・イスラム運動(IMU)といったテロ組織が活動の規模と範囲を広げている。

タリバン政権による国境管理が行き届いていないために、アラブ諸国、中央アジア、ヨーロッパからの戦闘員もアフガニスタンに流入している。現在、アフガニスタンで活動していることが分かっているテロ組織は21団体に上ると、ナザリーは言う。

タリバン政権は、国内にアルカイダは存在しないと公式には主張している。しかし、国連によると、アフガニスタンの全34州の少なくとも10州にアルカイダの訓練拠点がある。アルカイダの最高幹部の1人であるサイフ・アル・アデルも、外国人戦闘員たちにアフガニスタンへ入国して西洋との戦いに備えよと、公然と呼びかけている。

ナザリーいわく、タリバンとさまざまなテロ組織は極めて密接な関係にあり、タリバンはテロ組織のメンバーが入国できるように旅券も発行しているという。実際、この7月に発表された国連の報告書によると、IS-Kはアフガニスタンとトルコに支援者を持っていて、その助けを借りてテロリストをヨーロッパに送り込めるとのことだ。

しかしアメリカの情報機関当局者たちは、少なくとも公式には、アフガニスタンが世界にテロリストを送り出す「発射台」になる可能性をさほど心配していない。

CIAのデービッド・コーエン副長官によれば、CIAはテロ対策でタリバン政権と連絡を取り合っているという。8月には、ISが人気歌手テイラー・スウィフトのウィーンでのコンサートで企てていたテロ計画について地元オーストリア当局に情報提供し、テロ攻撃を阻止した。

NRFは、アメリカ政府がアフガニスタン発の国際テロの脅威と、タリバン政権による女性の人権侵害および対立勢力への弾圧に対して懸念を強めていることを利用しようとしているのだろうと、ワシントンの有力シンクタンク、ウッドロー・ウィルソン国際研究センターの南アジア研究所長を務めるマイケル・クーゲルマンは指摘する。

「NRFは、より強力な支援を引き出す狙いで、現在のアフガニスタンの危うさについて、特にテロのリスクについて大げさに主張している可能性があると思う」と、クーゲルマンは言う。「それに、そもそもタリバン政権の政治的存続を脅かすような勢力は全く存在しない」

From Foreign Policy Magazine

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