ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
<最近よく耳にする「整う」。日本では子供の頃から規則正しく整えることを学んでいくが、ジョージア人も「整える」ことには熱心。その違いとジョージア大使の「整え方」について>
歴史・伝統・文化を重んじ、人と人とのつながりを大切にする国民性。そして何よりもおもてなしを大事にしているという点で、ジョージアと日本は共通点が多い。
私はそう常々思っており、あらゆる機会を通じて両国の共通点について話しているが、とことん違う点もある。その中の1つが最近よく耳にする「整える」、つまり 身辺や心身の「整え方」である。
まずは、日本の「整え方」に着目したい。日本では幼い頃から生活の至る所で整えることを学んでいく。例えば、人間にとって最も大切な営みの1つである「食」においても、規則正しくきちんと食べることを幼少時から身に付けている。
私は妻との間に3人の女の子に恵まれ、現在、日本の公立保育園に通わせている。その娘たちの保育園生活での「整え方」に夫婦ともども驚いているが、妻が特に驚いているのは給食だ。娘たちが日々、何をどれだけ食べていたかが給食アプリによって確認できるようになっているのだ。
そのアプリには毎日異なる食事メニューが写真と共に掲載されている。スープや野菜がいつも入っているなど、栄養バランスもとても考慮されている。それを毎日必ず同じ時間に子供たちが規則正しく食べているのだ。まさに食生活が「整っている」状態である。
それは小学校入学以降にも続いていく。筆箱、給食袋、教科書や副読本やノート、裁縫道具などさまざまなセットを毎日携えて、地域や学校によってはきちんと整列して集団で登下校する。
また、給食も多くの場合は当番制で自分たちで配膳し、掃除も分担して行う。夏・冬休みも部活や課外活動、自由研究などがある。とにかく、日本では子供の頃から規則正しく生活し、忙しい。しかし、やはりここでも「整っている」のだ。
他方、ジョージア人も「整える」ことに関しては意外に熱心だ。ただし、アプローチが日本人とは全く異なっている。
まず、ジョージア人はびっくりするほど生活が不規則だ。朝8時に散歩していても、外にはほとんど誰もいない。食事時間も、いつも自由気ままでバラバラなため、15時や16時に昼食に誘われることも普通にある。
長年日本で暮らし、決まった時間に規則正しく昼食を取ることを心がけてきた私にとっては、非常に困っている点でもある。
ジョージア人は「დაიკიდე(ダイキデ)」、つまり「(問題を)放っておけ」という言葉をよく使う。人生は楽しみ、幸せであるべきものであるからこそ、ちょっとした問題なんぞ気にするな、というニュアンスだ。
彼らにとっては、意識しなくても自然と調子がよいことが大切なのだ。つまり人生最大の天敵であるストレスをうまくかわし、それをため込まないための術を習得して、普段の調子を保つことが「整える」ということにほかならない。
日本では整理整頓や時短など、生活に関するライフハックが人気で、それに関連したテレビ番組や出版物、デジタル情報が非常に多い。そうやって工夫して生活を快適にすることによって、子供の頃から自然に整え方を身に付けていく。
他方、ジョージア人は自由に人生を楽しむことに対する努力を怠らない。そのためにもストレスを抱え込まないように自分をしっかり守ることによって自分を整えているのだ。
ちなみに私はと言えば、一年中運動を続け、ダイエットに挑戦し、呼吸法を試したり、瞑想をやったり、早寝早起きをするなど規則正しくいつも自分を整えているが、ジョージアではそんな人間はまだ一度も見たことがない。
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
TEIMURAZ LEZHAVA
1988年、ジョージア生まれ。1992年初来日。早稲田大学卒業後にキッコーマン勤務を経て、ジョージア外務省入省。2021年より駐日ジョージア特命全権大使を務める。共著に『大使が語るジョージア』など。
ジョージアの首都トビリシの朝の様子
朝のトビリシは閑散としております。 pic.twitter.com/pDIj37MfjP— ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使 (@TeimurazLezhava) August 20, 2024
何というわけでもないトビリシの朝です。 pic.twitter.com/pC1kUpQjOt— ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使 (@TeimurazLezhava) August 22, 2024
<最近よく耳にする「整う」。日本では子供の頃から規則正しく整えることを学んでいくが、ジョージア人も「整える」ことには熱心。その違いとジョージア大使の「整え方」について>
歴史・伝統・文化を重んじ、人と人とのつながりを大切にする国民性。そして何よりもおもてなしを大事にしているという点で、ジョージアと日本は共通点が多い。
私はそう常々思っており、あらゆる機会を通じて両国の共通点について話しているが、とことん違う点もある。その中の1つが最近よく耳にする「整える」、つまり 身辺や心身の「整え方」である。
まずは、日本の「整え方」に着目したい。日本では幼い頃から生活の至る所で整えることを学んでいく。例えば、人間にとって最も大切な営みの1つである「食」においても、規則正しくきちんと食べることを幼少時から身に付けている。
私は妻との間に3人の女の子に恵まれ、現在、日本の公立保育園に通わせている。その娘たちの保育園生活での「整え方」に夫婦ともども驚いているが、妻が特に驚いているのは給食だ。娘たちが日々、何をどれだけ食べていたかが給食アプリによって確認できるようになっているのだ。
そのアプリには毎日異なる食事メニューが写真と共に掲載されている。スープや野菜がいつも入っているなど、栄養バランスもとても考慮されている。それを毎日必ず同じ時間に子供たちが規則正しく食べているのだ。まさに食生活が「整っている」状態である。
それは小学校入学以降にも続いていく。筆箱、給食袋、教科書や副読本やノート、裁縫道具などさまざまなセットを毎日携えて、地域や学校によってはきちんと整列して集団で登下校する。
また、給食も多くの場合は当番制で自分たちで配膳し、掃除も分担して行う。夏・冬休みも部活や課外活動、自由研究などがある。とにかく、日本では子供の頃から規則正しく生活し、忙しい。しかし、やはりここでも「整っている」のだ。
他方、ジョージア人も「整える」ことに関しては意外に熱心だ。ただし、アプローチが日本人とは全く異なっている。
まず、ジョージア人はびっくりするほど生活が不規則だ。朝8時に散歩していても、外にはほとんど誰もいない。食事時間も、いつも自由気ままでバラバラなため、15時や16時に昼食に誘われることも普通にある。
長年日本で暮らし、決まった時間に規則正しく昼食を取ることを心がけてきた私にとっては、非常に困っている点でもある。
ジョージア人は「დაიკიდე(ダイキデ)」、つまり「(問題を)放っておけ」という言葉をよく使う。人生は楽しみ、幸せであるべきものであるからこそ、ちょっとした問題なんぞ気にするな、というニュアンスだ。
彼らにとっては、意識しなくても自然と調子がよいことが大切なのだ。つまり人生最大の天敵であるストレスをうまくかわし、それをため込まないための術を習得して、普段の調子を保つことが「整える」ということにほかならない。
日本では整理整頓や時短など、生活に関するライフハックが人気で、それに関連したテレビ番組や出版物、デジタル情報が非常に多い。そうやって工夫して生活を快適にすることによって、子供の頃から自然に整え方を身に付けていく。
他方、ジョージア人は自由に人生を楽しむことに対する努力を怠らない。そのためにもストレスを抱え込まないように自分をしっかり守ることによって自分を整えているのだ。
ちなみに私はと言えば、一年中運動を続け、ダイエットに挑戦し、呼吸法を試したり、瞑想をやったり、早寝早起きをするなど規則正しくいつも自分を整えているが、ジョージアではそんな人間はまだ一度も見たことがない。
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
TEIMURAZ LEZHAVA
1988年、ジョージア生まれ。1992年初来日。早稲田大学卒業後にキッコーマン勤務を経て、ジョージア外務省入省。2021年より駐日ジョージア特命全権大使を務める。共著に『大使が語るジョージア』など。
ジョージアの首都トビリシの朝の様子
朝のトビリシは閑散としております。 pic.twitter.com/pDIj37MfjP— ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使 (@TeimurazLezhava) August 20, 2024
何というわけでもないトビリシの朝です。 pic.twitter.com/pC1kUpQjOt— ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使 (@TeimurazLezhava) August 22, 2024