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パリ・パラ男子バレー競技で「無敵」の強さのイラン...「世界で2番目に高身長の男」の異次元プレー

ニューズウィーク日本版 2024年9月4日 21時45分

シャノン・マクドナー
<パリパラリンピックで3大会連続となる金メダルを目指すイラン代表だが、その無敵の強さを支えているのは身長246cmを誇るモルテザ・メヘルザドセラクジャニ選手だ>

シッティングバレーボールは、身体障害があるアスリート向けに作られたスポーツで、一般のバレーボールより狭いコートに、高さ120cm以下という低い位置にネットを張ってプレーを行う。この競技でもう何年も「無敵」の強さを誇り、パリパラリンピックで連覇を目指しているのがイラン。そして、その強さの原動力となっているのが、現在世界で2番目に身長の高い男性であるモルテザ・メヘルザドセラクジャニ選手だ。

■【動画】相手はなす術なし...パリ・パラ、座位バレーで「無敵」のイラン代表「世界2位の高身長」の男が異次元すぎる

この競技で選手は、座ったままの体勢でコート内を移動するため、敏捷性や、状況に応じて適切に体を動かす能力が非常に重要とされる。だが、36歳のモルテザ・メヘルザドセラクジャニの武器は、その並外れた高身長。そのおかげでイラン代表は、対抗できるチームがほとんどいないほどのアドバンテージを手に入れている。

身長246cmのメヘルザドセラクジャニは、史上最も背が高いパラリンピック選手であるだけでなく、金メダルを獲得しようとしているイラン代表チームの躍進を支える原動力となっている。パリパラリンピックでイランはこれまで1セットも失っておらず、1次リーグではブラジル、ウクライナ、ドイツにオールストレート勝ちした。

1次リーグ最終戦となるドイツ戦でも勝利を収めたイランは準決勝に進み、3大会連続となるこの競技での金メダル獲得に向けて絶好の位置につけている。仮に今回も優勝すれば、イランが最初に金メダルを獲得した1988年大会以降、パラリンピックのシッティングバレーボール競技では、10大会で通算8つ目の金メダルとなる。(準決勝は9月5日の予定)

イラン男子チームがパリ大会で準決勝に駒を進める中で、チームを牽引するメヘルザドセラクジャニの存在が、イランにさらなるパリパラリンピックのメダルをもたらすことを期待されている。現時点で、イランのメダル獲得数は12個(うち金2つ、銀7つ、銅3つ)となっている。

事故で片脚の成長が止まり、引きこもった時期も

メヘルザドセラクジャニの人生は、アクロメガリー(先端巨大症)と診断されたことで、大きな転換点を迎えた。アクロメガリーとは、成長ホルモンの過剰分泌によって生じる症状だ。

メヘルザドセラクジャニは、モロッコのアミューズメントパークに勤務するブラヒム・タキオウラと並んで、世界で2番目に身長の高い男性とされている。タキオウラも、メヘルザドセラクジャニと同じくアクロメガリーを発症している。世界で最も身長の高い男性はトルコで農業を営むスルタン・キョセンで、2人を約5cm上回っている。

メヘルザドセラクジャニがスポーツ選手となるまでの道には、紆余曲折があった。15歳の時には、自転車事故に遭って骨盤に重傷を負い、右脚の成長が止まった。このため、彼の右脚は左脚よりも約15cm短くなっている。

この負傷によって、彼の運動能力には大きな制約が生じ、肉体的・精神的に多くの困難に直面したことで、引きこもりがちな生活を送るようになった。そんなメヘルザドセラクジャニが、イランのシッティングバレーボールチームによって見出されたのは、彼が20代半ばになってからのことだった。

イラン代表チームのヘッドコーチを務めるハディ・レザエイがメヘルザドセラクジャニを見出したきっかけは、特別な能力や障害を持つ人を特集したテレビ番組を見たことだった。メヘルザドセラクジャニの能力に興味を持ったレザエイは、さらに詳しい情報を手に入れようと、即座にこの番組を制作したテレビ局に連絡を取った。

コーチ陣は、メヘルザドセラクジャニが、とりわけその高身長と、人並外れたリーチによって、シッティングバレーボールの強力な選手になりうる可能性を持つことを認識したのだった。

アメリカの車いすバスケットボールチーム、無敗で準々決勝に進出

その他の競技では、アメリカの車いすバスケットボール男子チームが、オーストラリアに76対69で勝利し、1次リーグを無敗で終えた。

この勝利により、アメリカは3連勝となり、2大会連続で金メダルを獲得しているチームとして、その強さを改めて印象づけた。パリ大会におけるこれまでの3試合の合計スコアは202-159と、相手チームに大幅な得点差をつけている。

選手の1人、ファビアン・ロモは、「我々は、強さを印象付けるプレーで1次リーグを終えたかった」と語った。「だが今は、我々の視点は準々決勝に移った。対戦相手がどのチームであれ、準備を整える必要がある」

この試合の終了時点で、アメリカの準々決勝での対戦相手はまだ決定しておらず、他試合の結果を待つ必要があったが、地元フランスになる可能性が高いとみられている。(編集部注:記事執筆後にフランスと対戦し、82-47で勝利)

ベテラン選手のネーサン・ヒンズは、対戦相手に関してこうコメントした。「開催国と対戦するのは、いつも刺激的だ。会場を満員にし、興奮を生み出す雰囲気作りについて、パリは大いに成功していると言えるだろう」

ウクライナのズブコフスカ、5大会連続で走り幅跳び金メダル

ウクライナのオクサナ・ズブコフスカは、走り幅跳び選手として、17年にわたって並外れた選手生活を送ってきた。だが、2008年北京大会以降5大会連続となる5つ目の金メダルは、特別な意味を持つものとなった。

「獲得したすべてのメダルが大切だが、母国の今の状況があるので、このメダルはさらに大きな意味を持っている」と、ズブコフスカは心境を明かした。成功した5回の跳躍の記録は、すべて他の選手を上回り、最長跳躍距離は5.78mに達した。

ズブコフスカは、女子走り幅跳び視覚障害T12のカテゴリーでプレーしている。これは、重度弱視のアスリートを対象に設けられたカテゴリーだ。

オランダのペア、車いすテニスのクアードダブルス決勝進出

車いすテニスでは、オランダのサム・スフローダーとニールス・フィンクのペアが、引き続き圧倒的な強さを見せつけ、準決勝で南アフリカのドナルド・ラムファディ、ルーカス・シソレのペアを、セットカウント6-1、6-1と圧倒して快勝した。

この勝利によって、スフローダーとフィンクは、クアード(上下肢障害)ダブルスの決勝に進出した。同ペアは、前回の東京パラリンピックでも金メダルを獲得している。

同ペアは、パリ16区・ブローニュの森にあるテニス競技場「スタッド・ローラン・ギャロス」で現地時間9月4日に開催される、金メダルをかけた決勝において、イギリスのアンディ・ラプソーン、グレゴリー・スレイドのペアと対戦することになる。

スフローダーとフィンクは、前回の東京大会ではシングルスでも結果を出しており、クアードシングルス種目で、スフローダーは銀を、フィンクは銅を獲得している。
(翻訳:ガリレオ)


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