ジャック・ベレスフォード
<英ウェールズに住む女性が運河に浮かぶ「人間の手」のようなものを目撃。数日前には遺体も見つかった場所だっただけに警察に通報したが、その結果は...>
ある心配性の母親が、少々決まりが悪い思いをする一件があった。「事件」が起きたのは、2019年2月23日。英ウェールズのニースに住むヘイリー・トーマスは子どもたちと散歩に出かけたとき、町を流れるニース運河に何かが浮かんでいるのを発見し、これを人の手だと思った。
【画像】「怖い」「これは見間違える」...運河に浮かぶ「人間の手」の正体は?
しかし警察の調べで、この物体は結局死体ではなく、どこにでもあるような日用品だったことが確認された。
「正直に言うと、私は完全にショック状態で信じられない思いだった。特に子どもたちを連れていたから」とトーマスは本誌の取材に語った。「私は何度か行ったり来たりし、『いや、そんなはずはない』と、頭の中で言葉をめぐらせた」
とはいえ、彼女がこの結論に飛びついてしまったのも無理はない。実際に、人間の視覚系には脳を騙して、自分の周囲に存在する物体について不正確な推察をさせる能力があると研究で判明しているからだ。
2023年には、イギリスのヨーク大学とアストン大学のメンバーからなる研究チームが、この理論を検証している。この研究では、参加者たちに2種類の写真が提示された。ひとつはフルスケール(実物)の鉄道を写した写真だが、上下をぼやけさせたもの。もうひとつは、より小さなスケールの鉄道模型をくっきりと写したしたものだ。
参加者たちは、2枚のうちどちらが「現実の」写真かを判定するよう要請されたが、誰もが繰り返し、模型の写真のほうを選んだという。参加者たちには、ぼやけた写真に写った実際の列車が、もう1枚の写真に写っている模型の列車よりも小さいように見えたということだった。
この研究結果が発表されたとき、刑事司法制度や目撃者の証言の扱いに関して大きな影響があると受け止められた。冒頭で触れたトーマスの体験は、この研究結果を現実の場で示す、またとない好例にも見える。
ただし、彼女が警察に連絡する前に「セカンドオピニオン」を求めていたことは注目に値する。
「母や夫、友人に電話をして、彼らに(運河の)写真を送った。みんな、『何てことだ、君が遺体を見つけるなんて』と言っていた」。それでも確証が持てなかったトーマスは「このまま現場を立ち去ることも考えた」が、はっきりさせた方が良い、との結論に達したという
「このまま立ち去って、後になって本物の遺体が発見されたと聞いたら、自分を決して許せなかっただろう」と彼女は語った。さらにトーマスには、遺体が発見される可能性について警戒心を抱く別の理由もあった。
「手袋かもしれないという思いはあったが、この運河では数日前に遺体が見つかっていた。それで警察に電話しなければいけないと感じた」と彼女は説明する。
イギリスの民間放送「ITV」の報道によると、この2日前の2019年2月21日、この運河で男性の遺体が発見されている。警察はこの遺体について、「死因は不明で、突然死だった」と説明している。
通報してから起きたことに、彼女は衝撃を受けたという。「(通報から)少しして、3台のパトカーが到着し、周囲に非常線を張った」
彼女は帰宅したが、その後、警察からテキストメッセージが送られてきた。そして、彼女が目にした「手」は、実際にはマリーゴールド色のゴム手袋だったと知らされた。
彼女は「警察の時間を無駄に使わせた」ことが心苦しかったとしながらも、「遺体」の正体がゴム手袋だと知った時には「大爆笑した」という。
話をした警察官は見間違いに「とても寛容だった」と語り、「私が警察の時間を無駄に使わせたことにパニックになっていたのを見て、警察官たちは『気に病むことはない』と言ってくれた」と振り返った。
「それでも私は、とても決まりの悪い思いをした。控えめに言ってもね」
見間違いだったことが判明したものの、彼女は自身の発見が、ある意味で「ハッピーエンド」を迎えたことを喜んでいる。また、彼女が送った「手」の写真は、今でも友人や家族の間でお気に入りの1枚になっているという。
彼女はTikTokに、@hayleymt705というハンドル名でこのエピソードを投稿した。
「これは私の友人たちの間で内輪向けのジョークになっている」「この話題が出るといつもみんな大笑いして『こんなことはあなたにしか起こらないよ』と言ってくる」とのことだ。
(翻訳:ガリレオ)
<英ウェールズに住む女性が運河に浮かぶ「人間の手」のようなものを目撃。数日前には遺体も見つかった場所だっただけに警察に通報したが、その結果は...>
ある心配性の母親が、少々決まりが悪い思いをする一件があった。「事件」が起きたのは、2019年2月23日。英ウェールズのニースに住むヘイリー・トーマスは子どもたちと散歩に出かけたとき、町を流れるニース運河に何かが浮かんでいるのを発見し、これを人の手だと思った。
【画像】「怖い」「これは見間違える」...運河に浮かぶ「人間の手」の正体は?
しかし警察の調べで、この物体は結局死体ではなく、どこにでもあるような日用品だったことが確認された。
「正直に言うと、私は完全にショック状態で信じられない思いだった。特に子どもたちを連れていたから」とトーマスは本誌の取材に語った。「私は何度か行ったり来たりし、『いや、そんなはずはない』と、頭の中で言葉をめぐらせた」
とはいえ、彼女がこの結論に飛びついてしまったのも無理はない。実際に、人間の視覚系には脳を騙して、自分の周囲に存在する物体について不正確な推察をさせる能力があると研究で判明しているからだ。
2023年には、イギリスのヨーク大学とアストン大学のメンバーからなる研究チームが、この理論を検証している。この研究では、参加者たちに2種類の写真が提示された。ひとつはフルスケール(実物)の鉄道を写した写真だが、上下をぼやけさせたもの。もうひとつは、より小さなスケールの鉄道模型をくっきりと写したしたものだ。
参加者たちは、2枚のうちどちらが「現実の」写真かを判定するよう要請されたが、誰もが繰り返し、模型の写真のほうを選んだという。参加者たちには、ぼやけた写真に写った実際の列車が、もう1枚の写真に写っている模型の列車よりも小さいように見えたということだった。
この研究結果が発表されたとき、刑事司法制度や目撃者の証言の扱いに関して大きな影響があると受け止められた。冒頭で触れたトーマスの体験は、この研究結果を現実の場で示す、またとない好例にも見える。
ただし、彼女が警察に連絡する前に「セカンドオピニオン」を求めていたことは注目に値する。
「母や夫、友人に電話をして、彼らに(運河の)写真を送った。みんな、『何てことだ、君が遺体を見つけるなんて』と言っていた」。それでも確証が持てなかったトーマスは「このまま現場を立ち去ることも考えた」が、はっきりさせた方が良い、との結論に達したという
「このまま立ち去って、後になって本物の遺体が発見されたと聞いたら、自分を決して許せなかっただろう」と彼女は語った。さらにトーマスには、遺体が発見される可能性について警戒心を抱く別の理由もあった。
「手袋かもしれないという思いはあったが、この運河では数日前に遺体が見つかっていた。それで警察に電話しなければいけないと感じた」と彼女は説明する。
イギリスの民間放送「ITV」の報道によると、この2日前の2019年2月21日、この運河で男性の遺体が発見されている。警察はこの遺体について、「死因は不明で、突然死だった」と説明している。
通報してから起きたことに、彼女は衝撃を受けたという。「(通報から)少しして、3台のパトカーが到着し、周囲に非常線を張った」
彼女は帰宅したが、その後、警察からテキストメッセージが送られてきた。そして、彼女が目にした「手」は、実際にはマリーゴールド色のゴム手袋だったと知らされた。
彼女は「警察の時間を無駄に使わせた」ことが心苦しかったとしながらも、「遺体」の正体がゴム手袋だと知った時には「大爆笑した」という。
話をした警察官は見間違いに「とても寛容だった」と語り、「私が警察の時間を無駄に使わせたことにパニックになっていたのを見て、警察官たちは『気に病むことはない』と言ってくれた」と振り返った。
「それでも私は、とても決まりの悪い思いをした。控えめに言ってもね」
見間違いだったことが判明したものの、彼女は自身の発見が、ある意味で「ハッピーエンド」を迎えたことを喜んでいる。また、彼女が送った「手」の写真は、今でも友人や家族の間でお気に入りの1枚になっているという。
彼女はTikTokに、@hayleymt705というハンドル名でこのエピソードを投稿した。
「これは私の友人たちの間で内輪向けのジョークになっている」「この話題が出るといつもみんな大笑いして『こんなことはあなたにしか起こらないよ』と言ってくる」とのことだ。
(翻訳:ガリレオ)