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拡散された暴行動画の波紋...高校生殺害で10代4人が罪を認める

ニューズウィーク日本版 2024年9月10日 16時40分

アネシュカ・ピフルトヴァ
<ラスベガスで高校生が暴行を受けて死亡した事件で、4人の未成年が司法取引に応じ、殺人の罪を認めた。事件の暴行動画がSNSで拡散し、地域社会に大きな衝撃を与えている>

ラスベガスの男子高校生が殴る蹴るの暴行を受けて死亡した事件で、クラスメイトだった10代の4人が司法取引に応じて殺人の罪を認めた。この事件では暴行の現場を撮影した動画がSNSに出回り、地域社会に衝撃を与えた。

【動画】高校生の命を奪った暴行動画...4人の未成年が罪を認める

10代の4人は9月3日に司法取引を受け入れ、成人としての起訴を免れた。4人は当初、ジョナサン・ルイス(当時17歳)の死亡をめぐって2024年1月に第2級殺人の罪に問われていた。

事件は2023年1月、ラスベガスにあるランチョ高校付近の路地裏で発生。ルイスの友人から盗まれたとされる電子タバコとワイヤレスヘッドフォンをめぐってけんかになった。教員は「残虐な暴行」だったとAP通信に語っている。暴行の現場を携帯電話で撮影した動画はSNSで拡散した。

ルイスは頭部に重傷を負って意識不明になり、6日後に死亡した。

殺人の罪を認めた4人は少年院へ

報道によると、ルイスはこの日の放課後、現場の路地裏に呼び出された友人に付き添った。警察によれば、ルイスが最初からけんかにかかわるつもりだったのかどうかは分かっていない。

携帯電話の映像には、シャツを脱ぎ捨てて身構えるルイスにグループが襲いかかる様子が映っていた。13~17歳の生徒少なくとも10人が、ルイスを地面に引きずり倒して殴る蹴るの暴行を加え、体を踏みつけた。

ルイスはその後、生徒1人と通行人が学校へ運び、ランチョ高校の職員が応急処置をして救急車を呼んだ。ルイスは生命維持装置を装着されたが、このけがが原因で死亡した。

殺人の罪を認めた4人はいずれも当時18歳未満の未成年で、今後少年院に送致される。収容期間は未定。クラーク郡検察の青年局長ブリジッド・ダフィがABC系列局のローカル10で指摘した通り、ネバダ州の法律では少年裁判所で裁判が行われた未成年者に禁錮刑が言い渡されることはなく、更生プログラムが終了すれば釈放される。

4人のうち1人の弁護を担当するロバート・ドラスコビッチ弁護士は、司法取引について「非常に公正な解決策」として評価した。

一方、ルイスの母親メリッサ・レディは「息子の殺害に対して事実上、何の刑罰もなく、誰も責任を問われない。ひどすぎる」とローカル10に怒りをぶつけている。

AP通信によると、クラーク郡のスティーブ・ウルフソン地方検事事務所は司法取引について、事実関係と刑事裁判にかけた場合の法的問題を考慮した、熟慮の末の判断だったと説明した。さらに、若い被告人を処罰して更生させるためには少年裁判制度の方が適していると強調した。

米シンクタンク「プリズン・ポリシー・イニシアチブ」によると、アメリカでは2023年3月現在、約3万6000人が少年矯正施設に入所している。

(翻訳:鈴木聖子)

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