木村正人
<キャサリン皇太子妃が、感動的な家族の動画を投稿し「化学療法を終えた」と報告。彼女の伝記を出版したベテランジャーナリストが今後の見通しなどを語った>
[ロンドン発]王室取材35年のベテランジャーナリスト、ロバート・ジョブソン氏が新著『キャサリン皇太子妃:未来の王妃の伝記』を出版し、9月10日、外国人特派員協会(FPA)で質疑に応じた。キャサリン妃は前日の9日、がんの化学治療を終えたことを明らかにしたばかり。
1月に腹部手術、3月にがん治療を告白、6月チャールズ国王の誕生日を祝う行事で公務に限定復帰したキャサリン妃はX(旧ツイッター)に家族の動画を投稿し「夏も終わりに近づき、ようやく化学療法を終えることができ、どんなにホッとしているか分かりません」と報告した。
A message from Catherine, The Princess of WalesAs the summer comes to an end, I cannot tell you what a relief it is to have finally completed my chemotherapy treatment.The last nine months have been incredibly tough for us as a family. Life as you know it can change in an... pic.twitter.com/9S1W8sDHUL— The Prince and Princess of Wales (@KensingtonRoyal) September 9, 2024 家族で撮影した感動的な映像付きのキャサリン妃のXでのメッセージ
「家族にとって信じられないほど辛い9カ月間はウィリアム(皇太子)と私に、人生においてシンプルでありながら重要なことに感謝することを思い出させてくれました。ただ愛し、愛されることを。がんにならないためにできることをすることに集中しています」(キャサリン妃)
「治癒と完全回復への道のりは長く、一日一日を大切に過ごしていかなければなりません。今後数カ月のうちに公務に復帰し、可能な限り人前で仕事をすることを楽しみにしています。私は希望と人生への感謝の気持ちを新たにして回復の新たな段階を迎えます」(同)
キャサリン妃について、ジョブソン氏との質疑は以下の通り。
記者の質疑に応じるジョブソン氏(9月10日、筆者撮影)
──キャサリン妃(通称・ケイト)はどんな人ですか。
ケイトが本当に謎めいた人だということは誰しもが認めるところだ。個人的には9日、Xで公開したメッセージはとてもいいビデオだと思ったし、子どもたちがリラックスできる環境で撮影できた。ケイトが元気で、回復していることを示すためにもね。
がんはいつ再発するか分からない。私の知人の中にはあわてて仕事に復帰したものの、良い結果につながらず、最悪の結末を迎えてしまった人も何人もいる。だから私たちは彼女の発言や生き方を尊重しなければならない。国内外のメディアは信じられないほど敬意を払っている。
彼女が復帰したという見出しがたくさん出ているが、年末まで、おそらく1回か2回、非常に抑制された形で公務が行われるだけだろう。年明けの1月以降もそれは続くと思う。チャールズ国王や他の王族と同じように王室担当記者が事前に連絡を受けることもないだろう。
彼女は批判される人だ。彼女は明らかに家族を第一に考え、自分の限界を知り、医学的なアドバイスに注意深く耳を傾けるつもりだ。国王は非常に明確な医学的助言を与えられている。国王は全ての仕事に真っ向から取り組んでいるので、私は少し不安にならざるを得ない。
ケイトは今後、英国の君主制にとって非常に重要な人物になる。新しい王室、新しいやり方への接着剤になる。ウィリアム皇太子とケイトのもとでの君主制が方向転換を迫られることは間違いない。
若い世代の人たち、私の息子の世代は君主制について、私の母や私の視点とは全く違う見方をしている。彼らにとっては選挙で選ばれたわけでもない国家元首、生まれながらにしてそこにいる国家元首を持つという考えはとても奇妙なことなのだと思う。
王室は当たり前のことを当たり前だと思ってはいけないということを自覚しなければならない。ケイトとウィリアム皇太子がプライバシーを守りながら活動しようとする姿は非常に難しく微妙なバランスだ。とはいえ、最も重要なのはケイトの健康だ。
ケイトのビデオメッセージの中でそのことが非常に明確になっている。今後12カ月の間に劇的な方向転換が見られるとは思えない。クリスマス後にはケイトを見る機会は増えると思うが、フルプログラムではなく、一部の露出になる。それはおそらく妥当だと思う。
私たちは皆、キャサリン皇太子妃のことをケイト・ミドルトンと呼び続けている。健康は個人の領域だ。国王でさえがんの種類について具体的なことは話していないし、それ以上のことはもう分からない。タフな時間を過ごしてきた彼女はかなり丈夫だと思う。
露出という点で彼女のカムバックには細心の注意を払い、彼女がそれに対処できるようにし、過度なストレスを与えないようにしなければならない。ケイトはそのまま仕事に戻れるわけではない。もしそれを期待しているのであれば、人々は失望すると思う。
──21世紀の王室はどうなって行きますか。
ケイトは賢い女性だ。自分の考えを持っている。王族は絶大な特権を持って生まれてきた。彼らはキャリアの選択について心配する必要はない。生活のために何をするのか、住宅ローンを払うために何をするのか、ケイトは他の王族と違って普通の生活を理解している。
これから王位の世襲に疑問を抱く新しい世代に移って行く。新労働党政権の下で世襲貴族は貴族院(上院)から追放されようとしている。そのピラミッドの次の段階が君主制だ。英連邦王国のオーストラリア、カナダ、ニュージーランドでは今後20年の間に疑問視されることになる。
故ダイアナ元皇太子妃が2人の王子をどんなに立派に育てたとしても結局のところ、彼らはメディアを意識し、非常に特権的な人々だ。ウィリアム皇太子は、コーンウォール公領から毎年2500万ポンド(約46億5700万円)を手にしている。
彼はあなたや私と同じように苦労したり、考えたりすることはない。チャールズ国王は過渡的な君主になるだろう。在位15年なら90歳近くなる。もし国王がそんなに長く在位するのであれば、次の世代はどうなるのだろうと考える人がたくさんいるだろう。
ウィリアム皇太子はあれをやろう、これをやろうとするのを私たちは見てきた。ケイトは早期教育の問題に取り組んでいる。次の王妃になるまで、おそらくその先も彼女の主な課題になる。5歳以下の幼い子どもやホームレスの生活を改善しようとする人を批判することはできない。
本当に若い世代、つまり40代以下、30代以下、20代の人たちを対象にしなければならない。その世代には王室とのつながりの欠如という問題がある。チャールズ国王は故エリザベス女王の時代よりも小さな王室のビジョンを持っている。
新しい君主制とは何なのか。北欧の王室風になるのか、違うスタイルになるのか、オランダのようになるのか、分からないが、同じ方向性ではないようだ。ウィリアム皇太子とケイトが英連邦ツアーを行った時、植民地の支配者として見られていると感じた。
彼らは自分たちの立ち位置を確認しなければならない。一般家庭出身のケイトはウィリアム皇太子に助言する重要な役割を果たすと思う。より批判的な方法で助言する人たちを加える必要がある。王族の周りには常にイエスと言う人がいるが、それが常に正しい答えとは限らない。
──9日に公開したビデオメッセージをどう見ましたか。
彼らはメディアとの関係を完全にコントロールしたい。それは彼女の健康状態に基づいて今後も続くだろう。彼らはそこに独立したジャーナリストを置くことはできないと言うだろう。契約カメラマンを同席させ、何が起こったかを伝える。2人はそれが良いという意向だ。
──英国の大衆紙(タブロイド)が大人しくしているのはどうしてですか。
彼らはたぶん知らないし、望む情報を持っていないのだろう。報道するのであれば正しい情報を得なければならない。ブラックアウトの状態(2人からの直接の情報発信以外は報道がない)はタブロイドが本当に知らないということを意味している。
編集者全員が同意して署名した自主規制のカテゴリーがある。医療と健康もその一つだ。
ダイアナ元妃は全く違う時代だった。元妃はあまりにも若く、露出しすぎた。王室は彼女をサポートするためにほとんど何もしなかった。25年以上前のことで、かなり違う風景だった。独立報道基準機構(旧報道苦情処理委員会)のあり方と変化、編集者の自主規制は妥当だと思う。
しかし商業的なビジネスという観点からは注意しなければならない。25年前、30年前、タブロイドは西部開拓時代のような雰囲気で、やりたい放題だった。規制があるのは当然だと思う。ただ一つ言えるのは、記者がネタをもっていれば最終的には新聞に載るということだ。
ケイトの言うことにタブロイドも耳を傾けることを強く意識した。彼女は家族を最優先させたがっていた。彼女はとても幸せな子ども時代を過ごしたからだ。両親は働いていたけど、良い経験をした。
ジョージ王子はまだ小さな少年だ。ジョージ王子にしっかり接し、彼に期待されていることを理解させなければならない。ケイトは接着剤だと思う。彼女はとても重要だ。
ケイトが注目されることに国王が嫉妬しているという見方はナンセンスだ。国王は彼女が魅力的な女性であることを十分に理解している。(つづく)
<キャサリン皇太子妃が、感動的な家族の動画を投稿し「化学療法を終えた」と報告。彼女の伝記を出版したベテランジャーナリストが今後の見通しなどを語った>
[ロンドン発]王室取材35年のベテランジャーナリスト、ロバート・ジョブソン氏が新著『キャサリン皇太子妃:未来の王妃の伝記』を出版し、9月10日、外国人特派員協会(FPA)で質疑に応じた。キャサリン妃は前日の9日、がんの化学治療を終えたことを明らかにしたばかり。
1月に腹部手術、3月にがん治療を告白、6月チャールズ国王の誕生日を祝う行事で公務に限定復帰したキャサリン妃はX(旧ツイッター)に家族の動画を投稿し「夏も終わりに近づき、ようやく化学療法を終えることができ、どんなにホッとしているか分かりません」と報告した。
A message from Catherine, The Princess of WalesAs the summer comes to an end, I cannot tell you what a relief it is to have finally completed my chemotherapy treatment.The last nine months have been incredibly tough for us as a family. Life as you know it can change in an... pic.twitter.com/9S1W8sDHUL— The Prince and Princess of Wales (@KensingtonRoyal) September 9, 2024 家族で撮影した感動的な映像付きのキャサリン妃のXでのメッセージ
「家族にとって信じられないほど辛い9カ月間はウィリアム(皇太子)と私に、人生においてシンプルでありながら重要なことに感謝することを思い出させてくれました。ただ愛し、愛されることを。がんにならないためにできることをすることに集中しています」(キャサリン妃)
「治癒と完全回復への道のりは長く、一日一日を大切に過ごしていかなければなりません。今後数カ月のうちに公務に復帰し、可能な限り人前で仕事をすることを楽しみにしています。私は希望と人生への感謝の気持ちを新たにして回復の新たな段階を迎えます」(同)
キャサリン妃について、ジョブソン氏との質疑は以下の通り。
記者の質疑に応じるジョブソン氏(9月10日、筆者撮影)
──キャサリン妃(通称・ケイト)はどんな人ですか。
ケイトが本当に謎めいた人だということは誰しもが認めるところだ。個人的には9日、Xで公開したメッセージはとてもいいビデオだと思ったし、子どもたちがリラックスできる環境で撮影できた。ケイトが元気で、回復していることを示すためにもね。
がんはいつ再発するか分からない。私の知人の中にはあわてて仕事に復帰したものの、良い結果につながらず、最悪の結末を迎えてしまった人も何人もいる。だから私たちは彼女の発言や生き方を尊重しなければならない。国内外のメディアは信じられないほど敬意を払っている。
彼女が復帰したという見出しがたくさん出ているが、年末まで、おそらく1回か2回、非常に抑制された形で公務が行われるだけだろう。年明けの1月以降もそれは続くと思う。チャールズ国王や他の王族と同じように王室担当記者が事前に連絡を受けることもないだろう。
彼女は批判される人だ。彼女は明らかに家族を第一に考え、自分の限界を知り、医学的なアドバイスに注意深く耳を傾けるつもりだ。国王は非常に明確な医学的助言を与えられている。国王は全ての仕事に真っ向から取り組んでいるので、私は少し不安にならざるを得ない。
ケイトは今後、英国の君主制にとって非常に重要な人物になる。新しい王室、新しいやり方への接着剤になる。ウィリアム皇太子とケイトのもとでの君主制が方向転換を迫られることは間違いない。
若い世代の人たち、私の息子の世代は君主制について、私の母や私の視点とは全く違う見方をしている。彼らにとっては選挙で選ばれたわけでもない国家元首、生まれながらにしてそこにいる国家元首を持つという考えはとても奇妙なことなのだと思う。
王室は当たり前のことを当たり前だと思ってはいけないということを自覚しなければならない。ケイトとウィリアム皇太子がプライバシーを守りながら活動しようとする姿は非常に難しく微妙なバランスだ。とはいえ、最も重要なのはケイトの健康だ。
ケイトのビデオメッセージの中でそのことが非常に明確になっている。今後12カ月の間に劇的な方向転換が見られるとは思えない。クリスマス後にはケイトを見る機会は増えると思うが、フルプログラムではなく、一部の露出になる。それはおそらく妥当だと思う。
私たちは皆、キャサリン皇太子妃のことをケイト・ミドルトンと呼び続けている。健康は個人の領域だ。国王でさえがんの種類について具体的なことは話していないし、それ以上のことはもう分からない。タフな時間を過ごしてきた彼女はかなり丈夫だと思う。
露出という点で彼女のカムバックには細心の注意を払い、彼女がそれに対処できるようにし、過度なストレスを与えないようにしなければならない。ケイトはそのまま仕事に戻れるわけではない。もしそれを期待しているのであれば、人々は失望すると思う。
──21世紀の王室はどうなって行きますか。
ケイトは賢い女性だ。自分の考えを持っている。王族は絶大な特権を持って生まれてきた。彼らはキャリアの選択について心配する必要はない。生活のために何をするのか、住宅ローンを払うために何をするのか、ケイトは他の王族と違って普通の生活を理解している。
これから王位の世襲に疑問を抱く新しい世代に移って行く。新労働党政権の下で世襲貴族は貴族院(上院)から追放されようとしている。そのピラミッドの次の段階が君主制だ。英連邦王国のオーストラリア、カナダ、ニュージーランドでは今後20年の間に疑問視されることになる。
故ダイアナ元皇太子妃が2人の王子をどんなに立派に育てたとしても結局のところ、彼らはメディアを意識し、非常に特権的な人々だ。ウィリアム皇太子は、コーンウォール公領から毎年2500万ポンド(約46億5700万円)を手にしている。
彼はあなたや私と同じように苦労したり、考えたりすることはない。チャールズ国王は過渡的な君主になるだろう。在位15年なら90歳近くなる。もし国王がそんなに長く在位するのであれば、次の世代はどうなるのだろうと考える人がたくさんいるだろう。
ウィリアム皇太子はあれをやろう、これをやろうとするのを私たちは見てきた。ケイトは早期教育の問題に取り組んでいる。次の王妃になるまで、おそらくその先も彼女の主な課題になる。5歳以下の幼い子どもやホームレスの生活を改善しようとする人を批判することはできない。
本当に若い世代、つまり40代以下、30代以下、20代の人たちを対象にしなければならない。その世代には王室とのつながりの欠如という問題がある。チャールズ国王は故エリザベス女王の時代よりも小さな王室のビジョンを持っている。
新しい君主制とは何なのか。北欧の王室風になるのか、違うスタイルになるのか、オランダのようになるのか、分からないが、同じ方向性ではないようだ。ウィリアム皇太子とケイトが英連邦ツアーを行った時、植民地の支配者として見られていると感じた。
彼らは自分たちの立ち位置を確認しなければならない。一般家庭出身のケイトはウィリアム皇太子に助言する重要な役割を果たすと思う。より批判的な方法で助言する人たちを加える必要がある。王族の周りには常にイエスと言う人がいるが、それが常に正しい答えとは限らない。
──9日に公開したビデオメッセージをどう見ましたか。
彼らはメディアとの関係を完全にコントロールしたい。それは彼女の健康状態に基づいて今後も続くだろう。彼らはそこに独立したジャーナリストを置くことはできないと言うだろう。契約カメラマンを同席させ、何が起こったかを伝える。2人はそれが良いという意向だ。
──英国の大衆紙(タブロイド)が大人しくしているのはどうしてですか。
彼らはたぶん知らないし、望む情報を持っていないのだろう。報道するのであれば正しい情報を得なければならない。ブラックアウトの状態(2人からの直接の情報発信以外は報道がない)はタブロイドが本当に知らないということを意味している。
編集者全員が同意して署名した自主規制のカテゴリーがある。医療と健康もその一つだ。
ダイアナ元妃は全く違う時代だった。元妃はあまりにも若く、露出しすぎた。王室は彼女をサポートするためにほとんど何もしなかった。25年以上前のことで、かなり違う風景だった。独立報道基準機構(旧報道苦情処理委員会)のあり方と変化、編集者の自主規制は妥当だと思う。
しかし商業的なビジネスという観点からは注意しなければならない。25年前、30年前、タブロイドは西部開拓時代のような雰囲気で、やりたい放題だった。規制があるのは当然だと思う。ただ一つ言えるのは、記者がネタをもっていれば最終的には新聞に載るということだ。
ケイトの言うことにタブロイドも耳を傾けることを強く意識した。彼女は家族を最優先させたがっていた。彼女はとても幸せな子ども時代を過ごしたからだ。両親は働いていたけど、良い経験をした。
ジョージ王子はまだ小さな少年だ。ジョージ王子にしっかり接し、彼に期待されていることを理解させなければならない。ケイトは接着剤だと思う。彼女はとても重要だ。
ケイトが注目されることに国王が嫉妬しているという見方はナンセンスだ。国王は彼女が魅力的な女性であることを十分に理解している。(つづく)