ケイトリン・ルイス
<9月10日に行われたテレビ討論会ではハリス副大統領が「勝利」したとの見方が強いが、これで選挙の趨勢が決まったとは言えない。専門家たちの見解は――>
米大統領候補のカマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領が、初めてのテレビ討論会を終えた。ハリスが優位に立ったように見えるが、彼女の力強いパフォーマンスが世論調査にどう反映されるかはまだ不透明だ。
9月10日夜にペンシルベニア州フィラデルフィアで行われた討論会では、ハリスが勝利したと多くの専門家は示唆しており、直後の世論調査もハリス有利に傾いている。
世論調査分析サイト「ファイブ・サーティエイト」によれば、米東部標準時11日午後1時の時点で、アメリカ国内でテレビ討論会を見た人の平均57%が、ハリスはトランプに勝ったと考えている。
この結果は、同サイトが3つの全国調査を集計したもので、トランプを勝者と考えた人は討論会を見た人の平均34%にすぎなかった。
おなじみの暴言を繰り返したトランプ
ハリスは討論会の序盤でトランプに暴言を吐かせることに成功した。トランプは質問への回答中に脱線し、民主党の中絶への対応や2020年大統領選挙の結果について、おなじみの誤った暴言を繰り返した。
米ケンタッキー大学の政治学教授D・スティーブン・ボスは本誌のメール取材に対し、ハリスはステージ上でトランプを怒らせるために「トランプをあまりからかう必要はなかった。トランプのパフォーマンスは最初から最後まで弱かった」と述べている。
「トランプはハリスに対してほとんど打撃を与えられず、討論が進むごとに自分の首を絞めていった」
ボスはさらに、討論会を通して「右派の有権者はトランプが何に言及しているかわかっただろう」が、トランプは「選挙の行方を左右する『普通の人』に話しかける方法を知らない」と分析する。
「もしトランプが今夜、大統領選挙への出馬を断念しないのであれば、討論会があまり重要ではないことを証明するだろう」
楽観的で前向きだったハリス
一方、討論会におけるハリスの重要な目標は、誰に投票するかを「決めかねている」有権者にアピールすることだった。米ミシガン大学のディベート責任者アーロン・カルは本誌のメール取材に対し、ハリスは有権者に自分の政策を紹介するという点で「全体的に良い仕事」をしたと評価している。
「ハリスの演説の全体的な基調は、より楽観的で前向きなものだった」とカルは指摘する。
「ハリスは、過去数回の政権下でアメリカを悩ませてきた政治的な敵意を一掃すると語った。支持者を決めていない有権者は一般的に、より楽観的なメッセージに惹かれる傾向がある。なぜなら、彼らは政治に深い関心がなく、ワシントンの政界で日々繰り広げられる政治的な策謀についてはよく知らないからだ」
討論会では選挙の行方は変わらない?
しかし、ハリスがどれほど力強いパフォーマンスを見せたとしても、討論会が選挙の行方に与える影響を計るのは難しいと政治評論家のクレイグ・アグラノフは考える。
アグラノフは11日、本誌宛てのテキストメッセージで「討論会は物語を形づくり、重要な瞬間をもたらすが、その重要性はしばしば見る人の視点に左右される」と述べた。
アグラノフは「凝り固まった有権者にとっては、意見を変えるどころか既存の信念を強化することになるかもしれない」と説明する。
「今回のように両極化した選挙戦では、たとえ討論会でトランプが負けたと認識されても、多くの有権者がすでに心を固めているため、針が大きく動くことはないだろう」
CNNのデータ担当記者ハリー・エンテンは11日、討論会後の数日間、世論調査ではハリスの支持率が急上昇するだろうと述べた。
過去の大統領選でも、最初の討論会で力強いパフォーマンスを見せて勝利した候補者が「世論調査で支持率が2ポイント以上上昇した」という。
それでもエンテンは、大統領選は今後も接戦が続くと予想している。ファイブ・サーティエイトの集計によれば、11日時点でハリスは、全米規模の世論調査でトランプを平均2.7ポイントリードしていた(47%対44.3%)。
ニューヨーク・タイムズが集計している全米規模の世論調査では、ハリスのリードはもっと小さく、平均で49%対47%だった。
(翻訳:ガリレオ)
<9月10日に行われたテレビ討論会ではハリス副大統領が「勝利」したとの見方が強いが、これで選挙の趨勢が決まったとは言えない。専門家たちの見解は――>
米大統領候補のカマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領が、初めてのテレビ討論会を終えた。ハリスが優位に立ったように見えるが、彼女の力強いパフォーマンスが世論調査にどう反映されるかはまだ不透明だ。
9月10日夜にペンシルベニア州フィラデルフィアで行われた討論会では、ハリスが勝利したと多くの専門家は示唆しており、直後の世論調査もハリス有利に傾いている。
世論調査分析サイト「ファイブ・サーティエイト」によれば、米東部標準時11日午後1時の時点で、アメリカ国内でテレビ討論会を見た人の平均57%が、ハリスはトランプに勝ったと考えている。
この結果は、同サイトが3つの全国調査を集計したもので、トランプを勝者と考えた人は討論会を見た人の平均34%にすぎなかった。
おなじみの暴言を繰り返したトランプ
ハリスは討論会の序盤でトランプに暴言を吐かせることに成功した。トランプは質問への回答中に脱線し、民主党の中絶への対応や2020年大統領選挙の結果について、おなじみの誤った暴言を繰り返した。
米ケンタッキー大学の政治学教授D・スティーブン・ボスは本誌のメール取材に対し、ハリスはステージ上でトランプを怒らせるために「トランプをあまりからかう必要はなかった。トランプのパフォーマンスは最初から最後まで弱かった」と述べている。
「トランプはハリスに対してほとんど打撃を与えられず、討論が進むごとに自分の首を絞めていった」
ボスはさらに、討論会を通して「右派の有権者はトランプが何に言及しているかわかっただろう」が、トランプは「選挙の行方を左右する『普通の人』に話しかける方法を知らない」と分析する。
「もしトランプが今夜、大統領選挙への出馬を断念しないのであれば、討論会があまり重要ではないことを証明するだろう」
楽観的で前向きだったハリス
一方、討論会におけるハリスの重要な目標は、誰に投票するかを「決めかねている」有権者にアピールすることだった。米ミシガン大学のディベート責任者アーロン・カルは本誌のメール取材に対し、ハリスは有権者に自分の政策を紹介するという点で「全体的に良い仕事」をしたと評価している。
「ハリスの演説の全体的な基調は、より楽観的で前向きなものだった」とカルは指摘する。
「ハリスは、過去数回の政権下でアメリカを悩ませてきた政治的な敵意を一掃すると語った。支持者を決めていない有権者は一般的に、より楽観的なメッセージに惹かれる傾向がある。なぜなら、彼らは政治に深い関心がなく、ワシントンの政界で日々繰り広げられる政治的な策謀についてはよく知らないからだ」
討論会では選挙の行方は変わらない?
しかし、ハリスがどれほど力強いパフォーマンスを見せたとしても、討論会が選挙の行方に与える影響を計るのは難しいと政治評論家のクレイグ・アグラノフは考える。
アグラノフは11日、本誌宛てのテキストメッセージで「討論会は物語を形づくり、重要な瞬間をもたらすが、その重要性はしばしば見る人の視点に左右される」と述べた。
アグラノフは「凝り固まった有権者にとっては、意見を変えるどころか既存の信念を強化することになるかもしれない」と説明する。
「今回のように両極化した選挙戦では、たとえ討論会でトランプが負けたと認識されても、多くの有権者がすでに心を固めているため、針が大きく動くことはないだろう」
CNNのデータ担当記者ハリー・エンテンは11日、討論会後の数日間、世論調査ではハリスの支持率が急上昇するだろうと述べた。
過去の大統領選でも、最初の討論会で力強いパフォーマンスを見せて勝利した候補者が「世論調査で支持率が2ポイント以上上昇した」という。
それでもエンテンは、大統領選は今後も接戦が続くと予想している。ファイブ・サーティエイトの集計によれば、11日時点でハリスは、全米規模の世論調査でトランプを平均2.7ポイントリードしていた(47%対44.3%)。
ニューヨーク・タイムズが集計している全米規模の世論調査では、ハリスのリードはもっと小さく、平均で49%対47%だった。
(翻訳:ガリレオ)