村上尚己
<今の問題は、円高進行のスピードが速すぎること。「円安は害悪」との風説に岸田政権は過剰反応し、8月以降、日本株市場は停滞してしまった。誰が次期首相に望ましいか、その経済に対する理解度合いを見れば明白だ>
6月14日の当コラムでは、9月にFRB(米連邦準備理事会)が利下げを開始すると筆者は予想していたため、一部論者が懸念していた円安ドル高は早晩転換するとの見方を示した。
既に、9月18日夜のFOMC(連邦公開市場委員会)における4年半ぶりの利下げ開始は、パウエル議長らによって事実上予告されており、利下げ幅が0.25%か0.50%のいずれになるかが焦点になっている。6月に1ドル150円台後半推移していたドル円が、7月から円高に転じたのは筆者の想定に沿った値動きである。
7月まで散見された、「1ドル160円台を超えて円安が続く」といった自称専門家などによる予想は、メディア受けは良いが、多くは根拠が薄弱だった。ドル円は通貨の相対価格なのだから、やはり日米の金融政策の方向性でその趨勢が決まる、ということだろう。
問題は、円高進行のスピードが速すぎることである。
7月初旬には1ドル160円付近だったドル円は、通貨当局による大規模円買い介入、同月末の日本銀行の利上げを経て、9月18日時点で1ドル140円付近まで円高となり2024年初と同水準に戻った。1ドル160円台の大幅な円安はかなりの追い風であり、同時に「嬉しい誤算」(7月9日の当コラム参照)だったので、必然的に長く続かなかったとは言える。
1ドル150円台まで円安が進んだ方が日本経済にとって望ましい
足元の1ドル140円付近のドル円レートは、歴史的にみれば依然円安と位置付けられる。ただ、日本経済の成長率は2023年半ばから停滞が続き、デフレからの完全脱却の途上にあるのだから、再び1ドル150円台まで円安が進んだ方が日本経済にとって望ましい。
実際に、ドル円が年初と同水準に戻ったため、7月まで先進各国で最もパフォーマンスが高かった日本株市場は、8月初旬に急落して、トランプ・ハリス候補で接戦となっている大統領選挙が迫る中で、最高値圏で推移している米国株市場に対して大きく出遅れている。
「円安は日本経済にとって害悪」との多くの報道は、メディアによる一種の風説に過ぎないが、弱体化していた岸田政権がそうした世論に過剰に反応して、円高に誘導する通貨当局の対応を容認したということになる。7月末に日本銀行が利上げに踏み出した判断にも、岸田政権がレームダック化したことが影響していただろう。
その意味で、8月初旬の日本株の急落は、政策当局者による人災であると筆者は位置付けているが、多くの金融市場関係者が最近の経済政策運営に対する不信感を抱いているが故に、8月以降、日本株市場は停滞しているのである。
小泉、高市、石破の各氏いずれも首相になりうる状況だが
次の首相を決める自民党総裁選挙において、各種世論調査によれば、立候補した9名のうち、小泉進次郎、高市早苗、石破茂の各氏のいずれかが決選投票に進む可能性が高まっている。これら3名は現状ほぼ横一線であり、いずれも首相になりうると筆者は身構えている。
先述したとおり、2024年の前半まで大幅な株高が続き、7月から円高とともに下落に転じて失速した経緯を踏まえれば、日本株市場にとって、誰が次期首相として望ましいかは明白だろう。
各候補者は様々な見解を述べているが、以下の高市氏の発言が、最も重要だと筆者は考えている。
「失われた30年は日銀の金融政策の大失敗によってもたらされた」「2回の消費増税とコロナ禍によって、2%インフレ安定が実現しなかった」(2024年9月9日 BS日テレ「深層ニュース」)との、高市氏によるこれまでの金融財政政策についての総括である。
経済学の基本理論を踏まえた経済成長率を高める政策手段を理解しており、日本人を再び豊かにする具体策を高市氏は有していると評価される。
一方、小泉、石破両氏からはこうした発言を筆者は聞いたことがないが、彼らはどのように経済成長率を高めようとしているのだろうか。2人のいずれかが首相となれば、日本経済の成長率を高める政策運営は期待できず、日本人が経済的に豊かになることは期待し難いだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
<今の問題は、円高進行のスピードが速すぎること。「円安は害悪」との風説に岸田政権は過剰反応し、8月以降、日本株市場は停滞してしまった。誰が次期首相に望ましいか、その経済に対する理解度合いを見れば明白だ>
6月14日の当コラムでは、9月にFRB(米連邦準備理事会)が利下げを開始すると筆者は予想していたため、一部論者が懸念していた円安ドル高は早晩転換するとの見方を示した。
既に、9月18日夜のFOMC(連邦公開市場委員会)における4年半ぶりの利下げ開始は、パウエル議長らによって事実上予告されており、利下げ幅が0.25%か0.50%のいずれになるかが焦点になっている。6月に1ドル150円台後半推移していたドル円が、7月から円高に転じたのは筆者の想定に沿った値動きである。
7月まで散見された、「1ドル160円台を超えて円安が続く」といった自称専門家などによる予想は、メディア受けは良いが、多くは根拠が薄弱だった。ドル円は通貨の相対価格なのだから、やはり日米の金融政策の方向性でその趨勢が決まる、ということだろう。
問題は、円高進行のスピードが速すぎることである。
7月初旬には1ドル160円付近だったドル円は、通貨当局による大規模円買い介入、同月末の日本銀行の利上げを経て、9月18日時点で1ドル140円付近まで円高となり2024年初と同水準に戻った。1ドル160円台の大幅な円安はかなりの追い風であり、同時に「嬉しい誤算」(7月9日の当コラム参照)だったので、必然的に長く続かなかったとは言える。
1ドル150円台まで円安が進んだ方が日本経済にとって望ましい
足元の1ドル140円付近のドル円レートは、歴史的にみれば依然円安と位置付けられる。ただ、日本経済の成長率は2023年半ばから停滞が続き、デフレからの完全脱却の途上にあるのだから、再び1ドル150円台まで円安が進んだ方が日本経済にとって望ましい。
実際に、ドル円が年初と同水準に戻ったため、7月まで先進各国で最もパフォーマンスが高かった日本株市場は、8月初旬に急落して、トランプ・ハリス候補で接戦となっている大統領選挙が迫る中で、最高値圏で推移している米国株市場に対して大きく出遅れている。
「円安は日本経済にとって害悪」との多くの報道は、メディアによる一種の風説に過ぎないが、弱体化していた岸田政権がそうした世論に過剰に反応して、円高に誘導する通貨当局の対応を容認したということになる。7月末に日本銀行が利上げに踏み出した判断にも、岸田政権がレームダック化したことが影響していただろう。
その意味で、8月初旬の日本株の急落は、政策当局者による人災であると筆者は位置付けているが、多くの金融市場関係者が最近の経済政策運営に対する不信感を抱いているが故に、8月以降、日本株市場は停滞しているのである。
小泉、高市、石破の各氏いずれも首相になりうる状況だが
次の首相を決める自民党総裁選挙において、各種世論調査によれば、立候補した9名のうち、小泉進次郎、高市早苗、石破茂の各氏のいずれかが決選投票に進む可能性が高まっている。これら3名は現状ほぼ横一線であり、いずれも首相になりうると筆者は身構えている。
先述したとおり、2024年の前半まで大幅な株高が続き、7月から円高とともに下落に転じて失速した経緯を踏まえれば、日本株市場にとって、誰が次期首相として望ましいかは明白だろう。
各候補者は様々な見解を述べているが、以下の高市氏の発言が、最も重要だと筆者は考えている。
「失われた30年は日銀の金融政策の大失敗によってもたらされた」「2回の消費増税とコロナ禍によって、2%インフレ安定が実現しなかった」(2024年9月9日 BS日テレ「深層ニュース」)との、高市氏によるこれまでの金融財政政策についての総括である。
経済学の基本理論を踏まえた経済成長率を高める政策手段を理解しており、日本人を再び豊かにする具体策を高市氏は有していると評価される。
一方、小泉、石破両氏からはこうした発言を筆者は聞いたことがないが、彼らはどのように経済成長率を高めようとしているのだろうか。2人のいずれかが首相となれば、日本経済の成長率を高める政策運営は期待できず、日本人が経済的に豊かになることは期待し難いだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)