イアン・ランダル
<胃の中で呼吸と心拍を計測するカプセル型センサーの登場で検査がぐっと簡単に。ビタミン剤を飲む感覚で睡眠障害を突き止める>
ビタミン剤くらいの大きさの電子カプセルを飲み込むだけで、睡眠時無呼吸症候群など睡眠障害の検査ができる日が来るかもしれない。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)が中心となって開発したカプセル型センサーは、加速度計を使って胃の中から呼吸数と心拍数を測る。データは、内蔵の無線アンテナによってノートパソコンなどのデバイスに送信される。
就寝中に呼吸が何度も止まったり再開したりするのが、睡眠時無呼吸症候群。そのたびに覚醒してしまうため、睡眠の質が低下する。だが今のところ本格的な診断には、検査入院が必要だ。
カプセル型センサーが実用化されれば、自宅のベッドで寝ているうちに検査が終わるかもしれない。アイマスクの使用やCPAP療法(経鼻式持続的陽圧呼吸法)といった治療の効果を確認するときにも、センサーが役に立つ。
研究を主導するのはMITのジオバニ・トラバーソ准教授(機械工学、消化器学)。「ビタミン錠剤大のカプセルを飲んで眠るだけで、手軽に正確に呼吸数と心拍数が計測できる」と、彼は言う。
研究チームは過去に炎症性腸疾患などを調べる経口カプセル型センサーを開発しており、これが今回の研究の基礎になった。「心臓や肺に近いため、胃は概して最高のシグナルを発信してくれる」と、トラバーソは声明で述べた。
将来は投薬機能も搭載
チームはまずブタで実験し、呼吸数と心拍数を計測できることを確認した。その後10人の被験者で臨床試験を実施すると、センサーはバイタルサインを正確にモニタリングし、1人について睡眠時無呼吸症候群の症状を検出した。
副作用はなく、10人全てのケースでカプセルが消化管を無事通過したことが後日、エックス線画像で確認された。
だがこのサイズのカプセルは、約1日で体外に排出されてしまうのが難点。現在チームは胃と小腸をつなぐ幽門の手前でカプセルを止める方法を探っている。1週間程度胃にとどまらせ、睡眠時無呼吸症候群の進行度や不整脈の一種である発作性心房細動の有無を診断するのが狙いだ。
カプセル型センサーはまた、麻薬性鎮痛薬オピオイドを過剰摂取するリスクが高い人にも使える。ブタにオピオイドの一種フェンタニルを大量に投与する実験では、センサーが呼吸数の減少を検出した。
いずれはカプセルにナルメフェンのような拮抗薬を仕込み、呼吸数が減少しすぎると自動で放出される仕組みをつくりたいという。
「過剰摂取で死亡する人は、大半が誰にもみとられないで死ぬ。薬を自動的に投与できれば、そばに人がいないときに誤って鎮痛薬を飲みすぎても助かる」と、トラバーソは語る。
睡眠の専門家であるアリゾナ大学のサイラム・パーササラシー教授(医学)は、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸障害は珍しい病気ではなく、心臓発作や脳卒中を引き起こし死を招くことさえある」と、説明する。
「だが診断されないケースも多い。新しいセンサーが実用化されれば、家で簡単に検査ができるようになるだろう」
■バイタルを感知できる錠剤の人体初試験を報告
<胃の中で呼吸と心拍を計測するカプセル型センサーの登場で検査がぐっと簡単に。ビタミン剤を飲む感覚で睡眠障害を突き止める>
ビタミン剤くらいの大きさの電子カプセルを飲み込むだけで、睡眠時無呼吸症候群など睡眠障害の検査ができる日が来るかもしれない。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)が中心となって開発したカプセル型センサーは、加速度計を使って胃の中から呼吸数と心拍数を測る。データは、内蔵の無線アンテナによってノートパソコンなどのデバイスに送信される。
就寝中に呼吸が何度も止まったり再開したりするのが、睡眠時無呼吸症候群。そのたびに覚醒してしまうため、睡眠の質が低下する。だが今のところ本格的な診断には、検査入院が必要だ。
カプセル型センサーが実用化されれば、自宅のベッドで寝ているうちに検査が終わるかもしれない。アイマスクの使用やCPAP療法(経鼻式持続的陽圧呼吸法)といった治療の効果を確認するときにも、センサーが役に立つ。
研究を主導するのはMITのジオバニ・トラバーソ准教授(機械工学、消化器学)。「ビタミン錠剤大のカプセルを飲んで眠るだけで、手軽に正確に呼吸数と心拍数が計測できる」と、彼は言う。
研究チームは過去に炎症性腸疾患などを調べる経口カプセル型センサーを開発しており、これが今回の研究の基礎になった。「心臓や肺に近いため、胃は概して最高のシグナルを発信してくれる」と、トラバーソは声明で述べた。
将来は投薬機能も搭載
チームはまずブタで実験し、呼吸数と心拍数を計測できることを確認した。その後10人の被験者で臨床試験を実施すると、センサーはバイタルサインを正確にモニタリングし、1人について睡眠時無呼吸症候群の症状を検出した。
副作用はなく、10人全てのケースでカプセルが消化管を無事通過したことが後日、エックス線画像で確認された。
だがこのサイズのカプセルは、約1日で体外に排出されてしまうのが難点。現在チームは胃と小腸をつなぐ幽門の手前でカプセルを止める方法を探っている。1週間程度胃にとどまらせ、睡眠時無呼吸症候群の進行度や不整脈の一種である発作性心房細動の有無を診断するのが狙いだ。
カプセル型センサーはまた、麻薬性鎮痛薬オピオイドを過剰摂取するリスクが高い人にも使える。ブタにオピオイドの一種フェンタニルを大量に投与する実験では、センサーが呼吸数の減少を検出した。
いずれはカプセルにナルメフェンのような拮抗薬を仕込み、呼吸数が減少しすぎると自動で放出される仕組みをつくりたいという。
「過剰摂取で死亡する人は、大半が誰にもみとられないで死ぬ。薬を自動的に投与できれば、そばに人がいないときに誤って鎮痛薬を飲みすぎても助かる」と、トラバーソは語る。
睡眠の専門家であるアリゾナ大学のサイラム・パーササラシー教授(医学)は、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸障害は珍しい病気ではなく、心臓発作や脳卒中を引き起こし死を招くことさえある」と、説明する。
「だが診断されないケースも多い。新しいセンサーが実用化されれば、家で簡単に検査ができるようになるだろう」
■バイタルを感知できる錠剤の人体初試験を報告