ジェス・トムソン(科学担当)
<「幻覚キノコ」を使った治療に期待が高まるが、マウスでの実験ではオスとメスで効果に大きな差が見られた──>
マジックマッシュルームはハイにさせるだけでなく、治療に役立つ「効能」があるかもしれない。一部の幻覚成分が精神疾患の治療に有望であることは、既に研究が示唆している。
【動画】万華鏡の中みたい...マジックマッシュルームで見える幻覚の世界
さらに、2023年11月の米神経科学学会で発表された複数の研究によると、シロシビン(マジックマッシュルームに含まれる幻覚を引き起こす有効成分)が、恐怖学習(特定の刺激と恐怖を関連付ける反応の獲得)や依存症の禁断症状に影響を与える可能性があるという。
例えばある研究によると、ニコチン依存症の治療に効果的かもしれない。
脳内の神経伝達物質セロトニンの受容体を発現しないよう遺伝子を組み換えたニコチン依存のマウスにシロシビンを投与しても、ニコチンの禁断症状に変化はなかった。だが、遺伝子を組み換えていないマウスには禁断症状の軽減が見られた。
「これらの初期研究は、昔から知られている幻覚成分が禁煙治療に有効かもしれないことを示唆している」と、論文は述べている。
低用量の投与で違いが
別の複数の研究ではシロシビンと、やはり幻覚作用のある化学化合物のジメチルトリプタミン(DMT)には抗鬱作用がある可能性と、恐怖記憶の再燃を軽減する効果が示された。
これは恐怖症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)など、恐怖に関連する精神疾患の治療にとって意義があるかもしれない。
マウスを使った実験では、恐怖学習の速さや、学習した恐怖が危険を取り除いた後に消える速さについては、シロシビンは直接の変化をもたらさなかった。ただし、オスのマウスはメスに比べて恐怖の再発率が低かった。論文の要旨は次のように述べている。
「生理食塩水とシロシビンをそれぞれ投与したマウスでは、恐怖の獲得または消滅に伴うすくみ反応(大きなストレスを受けて活動停止状態になること)に違いはなかった」
「シロシビンを投与したオスのマウスは恐怖の再発が軽減したが、メスにはそうした変化が見られなかった」
別の研究でも低用量のシロシビンを投与すると、オスとメスのマウスで恐怖の消去の強さが異なった。
実験では、マウスに電気ショックと音の関連付けを学習させ、音に反応して恐怖を感じるようにさせた。続いて電気ショックを取り除き、音から恐怖を連想しなくなるまでの時間を測定した。
その結果、シロシビンを投与したオスは投与する前に比べて、音に関連する脅威がなくなったことを早く学習したが、メスは反対に学習が遅くなった。
「これらの知見は、低用量のシロシビンはオスの恐怖消去の学習効果を補強するが、メスでは補強しないことを示唆している」。今後は、性別による違いについてのさらなる研究が待たれる。
<「幻覚キノコ」を使った治療に期待が高まるが、マウスでの実験ではオスとメスで効果に大きな差が見られた──>
マジックマッシュルームはハイにさせるだけでなく、治療に役立つ「効能」があるかもしれない。一部の幻覚成分が精神疾患の治療に有望であることは、既に研究が示唆している。
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さらに、2023年11月の米神経科学学会で発表された複数の研究によると、シロシビン(マジックマッシュルームに含まれる幻覚を引き起こす有効成分)が、恐怖学習(特定の刺激と恐怖を関連付ける反応の獲得)や依存症の禁断症状に影響を与える可能性があるという。
例えばある研究によると、ニコチン依存症の治療に効果的かもしれない。
脳内の神経伝達物質セロトニンの受容体を発現しないよう遺伝子を組み換えたニコチン依存のマウスにシロシビンを投与しても、ニコチンの禁断症状に変化はなかった。だが、遺伝子を組み換えていないマウスには禁断症状の軽減が見られた。
「これらの初期研究は、昔から知られている幻覚成分が禁煙治療に有効かもしれないことを示唆している」と、論文は述べている。
低用量の投与で違いが
別の複数の研究ではシロシビンと、やはり幻覚作用のある化学化合物のジメチルトリプタミン(DMT)には抗鬱作用がある可能性と、恐怖記憶の再燃を軽減する効果が示された。
これは恐怖症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)など、恐怖に関連する精神疾患の治療にとって意義があるかもしれない。
マウスを使った実験では、恐怖学習の速さや、学習した恐怖が危険を取り除いた後に消える速さについては、シロシビンは直接の変化をもたらさなかった。ただし、オスのマウスはメスに比べて恐怖の再発率が低かった。論文の要旨は次のように述べている。
「生理食塩水とシロシビンをそれぞれ投与したマウスでは、恐怖の獲得または消滅に伴うすくみ反応(大きなストレスを受けて活動停止状態になること)に違いはなかった」
「シロシビンを投与したオスのマウスは恐怖の再発が軽減したが、メスにはそうした変化が見られなかった」
別の研究でも低用量のシロシビンを投与すると、オスとメスのマウスで恐怖の消去の強さが異なった。
実験では、マウスに電気ショックと音の関連付けを学習させ、音に反応して恐怖を感じるようにさせた。続いて電気ショックを取り除き、音から恐怖を連想しなくなるまでの時間を測定した。
その結果、シロシビンを投与したオスは投与する前に比べて、音に関連する脅威がなくなったことを早く学習したが、メスは反対に学習が遅くなった。
「これらの知見は、低用量のシロシビンはオスの恐怖消去の学習効果を補強するが、メスでは補強しないことを示唆している」。今後は、性別による違いについてのさらなる研究が待たれる。