ヴァレンタイン・ロウ(「タイムズ」紙・王室担当記者) for WOMAN
<「サセックス・サバイバーズ・クラブ」とは? メーガン妃の「問題のすり替え」とは? ヴァレンタイン・ロウ記者の話題書『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』より>
メーガン妃によるケンジントン宮殿スタッフに対するいじめ疑惑を2022年に最初に報じたのが、「タイムズ」紙のヴァレンタイン・ロウ記者だった...。王室ファンたちが注目してきた、ロウ記者による話題書『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』(作品社)がついに邦訳で刊行。
ロウ記者は「メーガン妃問題」に関してどのような証言を得て、どのように見てきたのか? 綿密な調査と貴重な証言の数々からベールに包まれたイギリス王室の真の姿、そしてイギリス現代史が浮かびあがる...。第14章「出口戦略」より一部抜粋。
◇ ◇ ◇
アフリカ外遊のころ、メーガンとシニアアドバイザーらとの関係は、急速に悪化していた。アドバイザーは、自分たちの助言は何も聞いてもらえないものだと感じていた。そのため、彼らの仕事は、アドバイザーがいてもいなくても変わらないものになった。
信頼と率直な意見交換は、疑心暗鬼の場に取って代わった。関係が完全に崩壊するころには、ハリーとメーガンのチームは(自称サセックス・サバイバーズ・クラブSussex Survivors' Clubで、中心メンバーはサム・コーエン、サラ・レイサム、オーストラリア人で報道担当秘書官補のマーニー・ガフニー)、メーガンの蔑称を考え出した。
それが「自己陶酔型ソシオパス」だ。彼らは事あるごとに「翻弄された」という表現を繰り返し使った。
ここには重大な疑問がある。メーガンの助けを求める叫びが、彼らを「翻弄」するという行為に表れていたのではないか。おそらく正解は分からない。
メーガンがオプラに心の痛みを吐露している様子や、もうこれ以上生きていたくないと表現している様子は、見ている側もつらくなる。ほとんどの人は、このような形で絶望を表現しているのだから、その話が真実に根ざしていないわけがないと考えるだろう。
しかしまともな考えの人たち(メーガンが正しいと信じていて、何とか立ち直ってもらいたいと考えている人たち)は、いったん正気に戻ると、助けを求める彼女の心からの訴えさえ、ひょっとしたらはっきりした目的のある用意周到な戦略の一環なのではないかと疑い始めた。
その目的とは王室離脱である。つまり、メーガンは何らかの証拠を残したかったのだ。証拠があれば、王室を離れるときが来たときに、こう言える――「ほら、ごらんなさい、こんなこともあんなこともあったのに、私を助けてくれませんでしたよね。もう王室を離れるしか選択肢はないわ」
これはあまりにも穿(うが)った見方だろうか? そうかもしれない。でも、実に悲しい真実だが、メーガンとアドバイザーたちの関係があまりにもこじれたため、彼らが信じたのはこのような筋書きだった。さらにその先を行く見解もある。あくまでも単なる意見であり、現場で働いていた人の論理にすぎない。
とはいえ、「メーガンと働く」とはどういうことなのか、彼女の下で働いた人たちがどのようにその経験を振り返るのかが手に取るように分かる考え方だ。
「周知の事実ですが、宮廷の評価は彼女が幸せかどうかで判断されていました」とある王室関係者は話す。「彼らの誤算は、彼女が幸せになりたいと考えていると思っていたことです。でも、本当のところ、彼女は拒絶されたがっていました。なぜならば、結婚初日から不幸なプリンセスのシナリオに心を奪われていたからです」
そう考えると、危険なサインは当初から見えていた。その一方で、警告も出されていたのだ。
サム・コーエンが、王室全体で最も重要な廷臣二名(女王の秘書官エドワード・ヤングとチャールズ皇太子の秘書官クライヴ・オルダートン)に対して、ハリーとメーガンの二人と袂を分かつようなことになれば、王室は組織として夫妻に十分に配慮し、その義務を果たしたという証拠が必要になると繰り返し話していた。
実際、配慮義務は極めて重要だった。ある関係者は、「その点[サムは]徹底していて、二人に対し、まるで壊れたレコードのように何度も何度も配慮を示していました」と話す。
しかしながらオプラのインタビューのころになると、バッキンガム宮殿は配慮義務の必要性をすっかり失念していた。
メーガンが心の病の話を持ち出して、話題をすり替えたため、それまで王室が二人に提供してきた支援のすべてが(例えば、二人の成功を支えるために何でもこなせるチームを用意したこと)忘れ去られた。その代わり、メーガンは事あるごとに、あの組織は私を見捨てたと指摘できるようになったのだ。
ヴァレンタイン・ロウ(Valentine Low)
イギリスのジャーナリスト。全寮制パブリックスクール、ウィンチェスターカレッジを経て、オックスフォード大学を卒業。1987年から『The London Evening Standard』で記者を務めた後、2008 年から『The Times』で王室取材を担当。2021年5月、オプラ・ウィンフリーのインタビュー映像が放映される数日前に、メーガンによるパワハラ疑惑の記事を発表する。著書に『One Man and His Dig』(Simon & Schuster、2008年、未邦訳)がある。
『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』
ヴァレンタイン・ロウ[著] 保科 京子 [訳]
作品社[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
<「サセックス・サバイバーズ・クラブ」とは? メーガン妃の「問題のすり替え」とは? ヴァレンタイン・ロウ記者の話題書『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』より>
メーガン妃によるケンジントン宮殿スタッフに対するいじめ疑惑を2022年に最初に報じたのが、「タイムズ」紙のヴァレンタイン・ロウ記者だった...。王室ファンたちが注目してきた、ロウ記者による話題書『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』(作品社)がついに邦訳で刊行。
ロウ記者は「メーガン妃問題」に関してどのような証言を得て、どのように見てきたのか? 綿密な調査と貴重な証言の数々からベールに包まれたイギリス王室の真の姿、そしてイギリス現代史が浮かびあがる...。第14章「出口戦略」より一部抜粋。
◇ ◇ ◇
アフリカ外遊のころ、メーガンとシニアアドバイザーらとの関係は、急速に悪化していた。アドバイザーは、自分たちの助言は何も聞いてもらえないものだと感じていた。そのため、彼らの仕事は、アドバイザーがいてもいなくても変わらないものになった。
信頼と率直な意見交換は、疑心暗鬼の場に取って代わった。関係が完全に崩壊するころには、ハリーとメーガンのチームは(自称サセックス・サバイバーズ・クラブSussex Survivors' Clubで、中心メンバーはサム・コーエン、サラ・レイサム、オーストラリア人で報道担当秘書官補のマーニー・ガフニー)、メーガンの蔑称を考え出した。
それが「自己陶酔型ソシオパス」だ。彼らは事あるごとに「翻弄された」という表現を繰り返し使った。
ここには重大な疑問がある。メーガンの助けを求める叫びが、彼らを「翻弄」するという行為に表れていたのではないか。おそらく正解は分からない。
メーガンがオプラに心の痛みを吐露している様子や、もうこれ以上生きていたくないと表現している様子は、見ている側もつらくなる。ほとんどの人は、このような形で絶望を表現しているのだから、その話が真実に根ざしていないわけがないと考えるだろう。
しかしまともな考えの人たち(メーガンが正しいと信じていて、何とか立ち直ってもらいたいと考えている人たち)は、いったん正気に戻ると、助けを求める彼女の心からの訴えさえ、ひょっとしたらはっきりした目的のある用意周到な戦略の一環なのではないかと疑い始めた。
その目的とは王室離脱である。つまり、メーガンは何らかの証拠を残したかったのだ。証拠があれば、王室を離れるときが来たときに、こう言える――「ほら、ごらんなさい、こんなこともあんなこともあったのに、私を助けてくれませんでしたよね。もう王室を離れるしか選択肢はないわ」
これはあまりにも穿(うが)った見方だろうか? そうかもしれない。でも、実に悲しい真実だが、メーガンとアドバイザーたちの関係があまりにもこじれたため、彼らが信じたのはこのような筋書きだった。さらにその先を行く見解もある。あくまでも単なる意見であり、現場で働いていた人の論理にすぎない。
とはいえ、「メーガンと働く」とはどういうことなのか、彼女の下で働いた人たちがどのようにその経験を振り返るのかが手に取るように分かる考え方だ。
「周知の事実ですが、宮廷の評価は彼女が幸せかどうかで判断されていました」とある王室関係者は話す。「彼らの誤算は、彼女が幸せになりたいと考えていると思っていたことです。でも、本当のところ、彼女は拒絶されたがっていました。なぜならば、結婚初日から不幸なプリンセスのシナリオに心を奪われていたからです」
そう考えると、危険なサインは当初から見えていた。その一方で、警告も出されていたのだ。
サム・コーエンが、王室全体で最も重要な廷臣二名(女王の秘書官エドワード・ヤングとチャールズ皇太子の秘書官クライヴ・オルダートン)に対して、ハリーとメーガンの二人と袂を分かつようなことになれば、王室は組織として夫妻に十分に配慮し、その義務を果たしたという証拠が必要になると繰り返し話していた。
実際、配慮義務は極めて重要だった。ある関係者は、「その点[サムは]徹底していて、二人に対し、まるで壊れたレコードのように何度も何度も配慮を示していました」と話す。
しかしながらオプラのインタビューのころになると、バッキンガム宮殿は配慮義務の必要性をすっかり失念していた。
メーガンが心の病の話を持ち出して、話題をすり替えたため、それまで王室が二人に提供してきた支援のすべてが(例えば、二人の成功を支えるために何でもこなせるチームを用意したこと)忘れ去られた。その代わり、メーガンは事あるごとに、あの組織は私を見捨てたと指摘できるようになったのだ。
ヴァレンタイン・ロウ(Valentine Low)
イギリスのジャーナリスト。全寮制パブリックスクール、ウィンチェスターカレッジを経て、オックスフォード大学を卒業。1987年から『The London Evening Standard』で記者を務めた後、2008 年から『The Times』で王室取材を担当。2021年5月、オプラ・ウィンフリーのインタビュー映像が放映される数日前に、メーガンによるパワハラ疑惑の記事を発表する。著書に『One Man and His Dig』(Simon & Schuster、2008年、未邦訳)がある。
『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』
ヴァレンタイン・ロウ[著] 保科 京子 [訳]
作品社[刊]
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