Picture Power
<イスラム主義勢力タリバンの支配が復活してから3年ほどが経過したアフガニスタン。女子の権利は大きく制限されて、少女たちは教育機会を失い、男性の保護者なしに公園に行くことさえままならない。>
アフガニスタンで2021年8月にイスラム主義勢力タリバンの支配が復活してから3年、女性たちは社会制度上その存在を消去され、最も基本的な権利さえ奪われている。学校、大学に通うことはおろか、仕事に就き、好きな服装をすること、公衆浴場や公園、美容室に行くこともできない。今年8月、タリバン政権は新法によって、女性が公の場で大声を上げたり、歌ったりすることも禁止した。国外脱出したある女性活動家は、アフガニスタンにはもう将来を見いだせないと語る。「私たちは『喜び』を忘れてしまった。どこにも見つけられないから」
写真家キアナ・ヘイエリと女性の人権問題研究家のメリッサ・コルネは今年、半年間にわたって7つの州を訪れ、100人以上の女性たちから話を聞き、その姿を写真に収めた。今回の作品は、優れた調査報道に贈られる仏「カルミニャック・フォトジャーナリズム賞」を受賞し、10月25日~11月18日にパリの写真祭で展示される。
好転の兆しが見えない現状に、アフガニスタンの女性たちの苦悩は深まっている。
<次ページで「No Woman's Land」から写真10点を紹介>
PHOTOGRAPHS BY © KIANA HAYERI FOR FONDATION CARMIGNAC
Photographs from No Woman's Land by Kiana Hayeri and Mélissa Cornet, laureates of the 14th edition of the Carmignac Photojournalism Award Carmignac
【連載20周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
2024年10月15日号 掲載
首都カブールの集合住宅の裏庭で今年2月、降り積もる雪の中遊ぶ少女たち。タリバン政権下では、男性の保護者なしに少女たちが外出したり公園に行ったりする権利は奪われた。雪嵐は少女たちにとって一緒に遊べる数少ない貴重な時間だが、タリバンの監視がいないか常に周囲への警戒は怠らない
東部ナンガルハル州の野外学校で授業を受ける生徒たち。男子は高校まで進学できるが、女子は6年生まで(州によっては3年生まで)しか教育を受けられない。民家やモスク(イスラム礼拝所)などで女子の地下学校の取り組みも行われているが摘発のリスクは高い
北東部バダフシャン州ファイザバードの街角で破られたポスター。女性がどうやって顔を覆えばいいかが示されている。顔全体を覆うブルカ(アフガニスタンではチャドリと呼ばれる)のほか、目だけは覆わないニカブの着用も許されている
友人の誕生日を祝うカブールの10代の少女たち。音楽やダンスはタリバン政権によって禁止されているが、少女たちは家の中や閉ざされた空間で、ダンスや誕生日会を続けている
カブール西部でアメリカのカリキュラムを英語で行う教育施設。10代の女子教育を当局が黙認しているまれなケースであり、約700人の生徒が厳重に警備された施設で学んでいる。施設の出入りは1人ずつで、持ち物は入り口に預けておかなくてはならない
カブールで困窮する母子。息子の1人は皮膚病とてんかんに苦しんでいるが、医療費が払えず治療を受けさせられない。夫はけがで働けず、息子たちも拘束の恐れがあり働きに出せない。近所の人にもらったボロ布や服を燃やして暖を取る
北東部バダフシャン州の池で子供を遊ばせる女性。彼女の高校2年生だった娘といとこは、1年前に学校をやめさせられ2人とも自殺した。「ワハン回廊」と呼ばれるこの地は、21年以前はタリバンの支配下ではなかった
中部ワルダク州の自宅前でポーズを取る50歳のサイラ。壁に貼ってあるのは、息子たちがパキスタンのマドラサ(イスラム神学校)で入手したポスター。ワルダク州は内戦の影響が大きかったが、サイラは「内戦が終わった今は平和で静かだ」と語る
女性問題を中心に扱うメディアで働く女性ジャーナリストたち。タリバン政権下でメディアの43%が消滅し、ジャーナリストの3分の2が仕事を辞めた。特にタリバン政権復活後の2年の間に女性ジャーナリストの8割が仕事を離れた
友人の誕生日会でダンスをするカブールの10代の少女たち。タリバン政権は今年8月、女性に屋外で顔を覆わせる一方で、公の場で大声を上げたり歌ったりすることを禁止する新たな法律を発効させた
【連載20周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
2024年10月15日号 掲載
<イスラム主義勢力タリバンの支配が復活してから3年ほどが経過したアフガニスタン。女子の権利は大きく制限されて、少女たちは教育機会を失い、男性の保護者なしに公園に行くことさえままならない。>
アフガニスタンで2021年8月にイスラム主義勢力タリバンの支配が復活してから3年、女性たちは社会制度上その存在を消去され、最も基本的な権利さえ奪われている。学校、大学に通うことはおろか、仕事に就き、好きな服装をすること、公衆浴場や公園、美容室に行くこともできない。今年8月、タリバン政権は新法によって、女性が公の場で大声を上げたり、歌ったりすることも禁止した。国外脱出したある女性活動家は、アフガニスタンにはもう将来を見いだせないと語る。「私たちは『喜び』を忘れてしまった。どこにも見つけられないから」
写真家キアナ・ヘイエリと女性の人権問題研究家のメリッサ・コルネは今年、半年間にわたって7つの州を訪れ、100人以上の女性たちから話を聞き、その姿を写真に収めた。今回の作品は、優れた調査報道に贈られる仏「カルミニャック・フォトジャーナリズム賞」を受賞し、10月25日~11月18日にパリの写真祭で展示される。
好転の兆しが見えない現状に、アフガニスタンの女性たちの苦悩は深まっている。
<次ページで「No Woman's Land」から写真10点を紹介>
PHOTOGRAPHS BY © KIANA HAYERI FOR FONDATION CARMIGNAC
Photographs from No Woman's Land by Kiana Hayeri and Mélissa Cornet, laureates of the 14th edition of the Carmignac Photojournalism Award Carmignac
【連載20周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
2024年10月15日号 掲載
首都カブールの集合住宅の裏庭で今年2月、降り積もる雪の中遊ぶ少女たち。タリバン政権下では、男性の保護者なしに少女たちが外出したり公園に行ったりする権利は奪われた。雪嵐は少女たちにとって一緒に遊べる数少ない貴重な時間だが、タリバンの監視がいないか常に周囲への警戒は怠らない
東部ナンガルハル州の野外学校で授業を受ける生徒たち。男子は高校まで進学できるが、女子は6年生まで(州によっては3年生まで)しか教育を受けられない。民家やモスク(イスラム礼拝所)などで女子の地下学校の取り組みも行われているが摘発のリスクは高い
北東部バダフシャン州ファイザバードの街角で破られたポスター。女性がどうやって顔を覆えばいいかが示されている。顔全体を覆うブルカ(アフガニスタンではチャドリと呼ばれる)のほか、目だけは覆わないニカブの着用も許されている
友人の誕生日を祝うカブールの10代の少女たち。音楽やダンスはタリバン政権によって禁止されているが、少女たちは家の中や閉ざされた空間で、ダンスや誕生日会を続けている
カブール西部でアメリカのカリキュラムを英語で行う教育施設。10代の女子教育を当局が黙認しているまれなケースであり、約700人の生徒が厳重に警備された施設で学んでいる。施設の出入りは1人ずつで、持ち物は入り口に預けておかなくてはならない
カブールで困窮する母子。息子の1人は皮膚病とてんかんに苦しんでいるが、医療費が払えず治療を受けさせられない。夫はけがで働けず、息子たちも拘束の恐れがあり働きに出せない。近所の人にもらったボロ布や服を燃やして暖を取る
北東部バダフシャン州の池で子供を遊ばせる女性。彼女の高校2年生だった娘といとこは、1年前に学校をやめさせられ2人とも自殺した。「ワハン回廊」と呼ばれるこの地は、21年以前はタリバンの支配下ではなかった
中部ワルダク州の自宅前でポーズを取る50歳のサイラ。壁に貼ってあるのは、息子たちがパキスタンのマドラサ(イスラム神学校)で入手したポスター。ワルダク州は内戦の影響が大きかったが、サイラは「内戦が終わった今は平和で静かだ」と語る
女性問題を中心に扱うメディアで働く女性ジャーナリストたち。タリバン政権下でメディアの43%が消滅し、ジャーナリストの3分の2が仕事を辞めた。特にタリバン政権復活後の2年の間に女性ジャーナリストの8割が仕事を離れた
友人の誕生日会でダンスをするカブールの10代の少女たち。タリバン政権は今年8月、女性に屋外で顔を覆わせる一方で、公の場で大声を上げたり歌ったりすることを禁止する新たな法律を発効させた
【連載20周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」
2024年10月15日号 掲載