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学校で生成AI「禁止令」... 人工知能は先生たちの敵か味方か

ニューズウィーク日本版 2024年10月11日 20時2分

トニー・ラズロ(ジャーナリスト、講師)
<学校の宿題に生成AIを活用しているケースが見受けられるという。ただ単に禁止するのではなく、うまく活用できれば教育環境はもっと豊かになるはずだ>

ジェネレーティブAI(生成AI)を学校の授業で活用すべきか──。

NTTドコモのモバイル社会研究所が4月に公表した調査結果が目に留まった。小中学生の保護者のうち賛成派は37%で、反対派21%、「分からない」42%。これを見てしばし考え込んだ。37%って低くない?

生成AIは教師の助っ人として教育プランの斬新なアイデアを提供できる。生徒の討論や外国語会話の相手になれるし、原稿や作文を評価するコーチにもなれるだろう。

文科省が昨夏、小中高生による利用についてかなり肯定的なガイドラインを出したので、全国の学校が生成AIを導入し始めているはずだとすっかり思っていたが......。AIが正確でない返答をしたり、偏った答えを出してしまうという問題もあるだろうが、先生たちはプロの教育者だ。そこは彼らの腕を信じたい。

そもそも注目すべきは、生成AIの授業内活用よりも「外」での活用ではないか。つまり、子供が家でやる宿題についてだ。

文科省のガイダンスに「生成AIが作り上げたものを生徒がそのまま自分のものとして提出しないように」という旨の記載があるが、先生が見ていない状況で、生徒はこれに従うだろうか? AI丸写しレポートを提出する生徒もいるのではないか?

わが家は最近、この問題を意識せざるを得ない状況になった。子供が通うインタナショナルスクールから「宣告」が届いたのだ。どうやら学校が特殊ソフトの力を借りて、AI丸写しのレポートを検出したらしい。しかも、複数件あったという。

文面からは、学校の憤りとフラストレーションがまざまざと伝わってきた。「担当の先生が生成AIを活用せよと言わない限り、宿題に使うな。使った形跡がある場合は罰する」。来た! 生成AI禁止令だ。

インターナショナルスクールは日本の学校よりも服装や髪形などはいくらか自由だが、このテーマに関してはシビアなようだ。この問題に対して、外国の学校はどう対応しているのだろう?

多くの国が教育政策を定めるのにユネスコ(国連教育科学文化機関)のガイダンスを参考にしている。「教育・研究分野における生成AIのガイダンス」は文科省の方針と共通する部分も多いが、相違点もある。

ユネスコは倫理上の懸念を指摘し、13歳未満の利用を制限すべきと勧告しているが、利用自体はおおむね前向きに捉えているようだ。

例えば、生徒が生成AIに「現在の知識レベルを伝え、学習を伸ばすためのアイデアを出させること」や「タスクをこなすために情報源を提案してもらうこと」といった活用法を提案している。

これに対して、文科省ははなから慎重で、避けるべき事項が目立つ。「活用が有効な場面を検証しつつ、限定的な利用から始めることが適切」とした上で、「子供の感や独創性を発揮させたい場面」などで「最初から(生成AIを)安易に使わせる」のは適切ではないと記す。

ユネスコはAI丸写しレポート問題には触れていない。一方、文科省はいいアイデアをガイドラインに盛り込んだ。それは「クラス全体又はグループ単位等での口頭発表の機会を設ける」こと。

なるほど。宿題を教師がチェックしても、生徒が自力でやったかどうかは確認できない。だが、学んだはずの内容について語ってもらえば、生徒が課題や学習すべき内容を十分理解できているのかを確認できるはずだ。

生成AIが世界的に普及している今、幅広い活用の必要性を認めたほうがいい。ユネスコの前向きな姿勢を持ちつつ、この新しいツールを教育現場に浸透させ、効率よく活用できる方法を探るべきだろう。

トニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動。コミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)の主人公。

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