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大谷翔平効果か......ワールドシリーズのチケットが異常高騰

ニューズウィーク日本版 2024年10月16日 16時15分

冷泉彰彦
<大谷とジャッジの対決という歴史的ドラマへの期待感からか、通常の公式戦の22倍という前代未聞の高額に>

メジャーリーグのチケット価格は、球団によってバラツキがありますが、公式戦の場合、最低価格はそれほど高くはありません。対戦カードによっては、5ドルとか、10ドルといった格安のチケットを出すこともあります。また、チケットの販売を大手に委託している場合は、ダイナミックプライシングといって需要と供給で価格が変動することもあります。

例えば、ニューヨーク・ヤンキースの場合、シーズンの大詰めの優勝決定直前の段階では、ブリーチャーという一番高い階段席が39ドル。外野だとホームランボールが飛んできそうな席が80ドル、もう少し上で60ドルというような水準でした。ちなみに、ネット裏のプレミアム席だと最高880ドルというような価格になっていました。

これが、ポストシーズンになると、どんどん価格が上がっていきます。ワイルドカード、地区シリーズ、リーグ優勝決定戦とランクが上がるにつれて、チケットもどんどん高くなっていきます。そんな中で、現地時間の15日からワールドシリーズ(WS)のチケットが順次発売になりました。ヤンキースの場合は現時点では、7試合制のALCSで1勝しただけですが、早くもこの日の午後2時(一部は1時から先行販売)から主催ゲームのチケットを一般に販売し始めたのです。

もちろん、このALCSで敗退した場合は、ヤンキースタジアムでのWSは消滅します。その場合のチケット代金は、購入者のクレジットカードに返金されることになっています。そうではあるのですが、売上を早く確定したい各球団はこのタイミングでWSのチケットを発売したのでした。もっとも、シーズンチケット保有者にはその前に先行発売がされているので、この日に入手できるチケットはそれほど沢山はありません。それでも、ネットには多数のファンが殺到し、ブラウザ上で待ち行列を形成しています。

前代未聞の価格高騰

問題はその価格です。過去の経緯を無視したような、高騰が起きているのです。ダイナミックプライシングのアルゴリズムが需給関係から価格を設定したのかもしれませんが、とにかく前代未聞の価格になっています。

昨年までは、一般的な傾向として公式戦、地区シリーズ(DS)、リーグ優勝決定戦(LCS)と倍々になっていき、WSはさらにその倍というのが「相場」でした。近年は、公式戦と地区シリーズの間に、ワイルドカードゲームが開催されるようになりましたが、そのチケットは大体公式戦の1.5倍であり、全体の「倍々ゲーム」には変わりはなかったのです。ちなみに、今年もリーグ優勝決定戦(LCS)までの価格は、ヤンキースの場合はこの公式から大きく外れてはいませんでした。

ところが、今回発売されたWSのチケットはこの計算を大幅に超えた価格になっています。

まず一番「標高の」高い、従って見づらいので一番安いブリーチャーは、例年なら公式戦の8倍で320ドル前後になるはずでした。ところが、発売された正規料金は890ドル(約13万2000円)、これがWSの最低価格だというのです。つまり公式戦の22倍という水準となっています。外野のセクション最後列でも2700ドル。報道によればバックネット裏の最前列は2万2000ドル、つまり日本円で330万円というのですから、これはスーパーボウル並みと言えます。しかもWSの場合はスーパーボウルのような1度きりの勝負ではないのです。

LCSまでは倍々の公式に従っていたのに、今年に限ってWSが一気に跳ね上がったのは、どう考えても大谷効果ということが言えると思います。ヤンキースのファンにとっては、自分たちのヒーローであるアーロン・ジャッジ選手と、大谷翔平選手という不世出のホームランバッターの2人がWSという最高の舞台で対決する(可能性がある)ということで、ここまでチケットが高騰している、としか考えられません。

もちろん、この名門球団同士の対決は1981年以来44年ぶりだとか、ともに公式戦でリーグ最高勝率を達成した同士のハイレベルな対決だという理由もあると思います。また、仮にドジャースがLCSで敗退したとしても、相手はメッツになるわけで、その場合はNYのチーム同士の「地下鉄シリーズ」になるという期待もあるかもしれません。そうした要素はあるにしても、大谷とジャッジの対決というWSの歴史に残るかもしれないドラマへの期待感が、公式戦の22倍という価格に反映しているのは間違いなさそうです。

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