ハッティ・ウィルモス
<アメリカ人が欧州各国と比べて背が低くなった原因は、国民的な健康状態の悪化が原因か?>
今度の米大統領選は異例ずくめの展開だが、まさか候補者の身長まで話題になるとは思わなかった。
当初、共和党の副大統領候補J・D・バンス(写真右)の身長は5フィート7インチ(約170センチ)と伝えられていた。対して大統領候補ドナルド・トランプ(同左)の身長は公称6フィート3インチ(約190センチ)。それなのに2人が並んだ写真では、背丈はほぼ同じに見える。
もしかして、これってトランプの身長詐称?
......ではなかった。バンスの身長に関する当初の報道は誤りで、本当は6フィート2インチ(約188センチ)だという。
なるほど。しかし一般論として、アメリカ人の平均身長は近年、縮小傾向にあるらしい。
「身長は遺伝と生育環境で決まる。60~80%が遺伝、20~40%が環境の影響と言えるだろう」と語るのは、英オックスフォード大学人口統計科学センターのメリンダ・ミルズ所長。「1980年頃から、アメリカ人の平均身長は下がりつつある」
高い身長は職業的に有利に働く可能性があり、身長が10センチ高くなると男性で5%、女性で12%の収入増につながる可能性を示唆するデータもあるという。
ミルズによれば、「背が高いと偉いように見える」ことを裏付ける研究はたくさんある。例えばFIFA(国際サッカー連盟)の主審は、一般に背の高い人のほうが試合をコントロールしやすいことが知られている。
ミルズは、アメリカ人の平均身長の低下は栄養状態や健康状態の悪化を反映しているのではないかと指摘する。
2016年に国際共同疫学研究グループ(NCD-RisC)が約1860万人のデータを分析したところ、1896年の時点で北米在住者の身長は世界最高レベルだった。
しかし20世紀に入ると徐々に優位が失われていき、1980年以降はアメリカよりも背の高い国が増えている。
アメリカ生まれの若年成人男性の平均身長は現時点で5フィート9インチ(175センチ)強で、オランダやイギリスよりも低い。
オランダは20センチ増
「平均身長の低下には当該集団全体の健康状況が反映される。食料の供給量、学校給食、幼年期のストレス、医療へのアクセスなどを映し出す鏡だ」とミルズは言う。
「地球上で最も背の高いオランダ人は、過去200年で20センチも身長が伸びた。生活環境が良く、乳製品の摂取が多いからだ」
アメリカ人の平均身長は産業革命後に急速に伸びたが、その後は他国に追い越された。
オックスフォード大学人口統計科学センターの調査でも、アメリカの中高年者はイギリスに比べて健康状態が著しく劣ることが分かった。
1970〜83年に生まれたアメリカとイギリスの女性1万5000人を比較すると、アメリカ女性はイギリス女性よりも心臓の健康状態が悪く、肥満度も高かったとされる。
調査を担当したアンドリア・ティルストラは「因果関係は明らかでないが、イギリスに比べてアメリカの社会環境は健康的な生活に向いていないようだ」と指摘する。
「アメリカは、同レベルの高所得国と比べて国民の健康状態や平均寿命の点で遅れている」と、ミルズは言う。「子供の成長や、良質な栄養摂取、医療へのアクセスに、もっと注意を向けてほしい」
<アメリカ人が欧州各国と比べて背が低くなった原因は、国民的な健康状態の悪化が原因か?>
今度の米大統領選は異例ずくめの展開だが、まさか候補者の身長まで話題になるとは思わなかった。
当初、共和党の副大統領候補J・D・バンス(写真右)の身長は5フィート7インチ(約170センチ)と伝えられていた。対して大統領候補ドナルド・トランプ(同左)の身長は公称6フィート3インチ(約190センチ)。それなのに2人が並んだ写真では、背丈はほぼ同じに見える。
もしかして、これってトランプの身長詐称?
......ではなかった。バンスの身長に関する当初の報道は誤りで、本当は6フィート2インチ(約188センチ)だという。
なるほど。しかし一般論として、アメリカ人の平均身長は近年、縮小傾向にあるらしい。
「身長は遺伝と生育環境で決まる。60~80%が遺伝、20~40%が環境の影響と言えるだろう」と語るのは、英オックスフォード大学人口統計科学センターのメリンダ・ミルズ所長。「1980年頃から、アメリカ人の平均身長は下がりつつある」
高い身長は職業的に有利に働く可能性があり、身長が10センチ高くなると男性で5%、女性で12%の収入増につながる可能性を示唆するデータもあるという。
ミルズによれば、「背が高いと偉いように見える」ことを裏付ける研究はたくさんある。例えばFIFA(国際サッカー連盟)の主審は、一般に背の高い人のほうが試合をコントロールしやすいことが知られている。
ミルズは、アメリカ人の平均身長の低下は栄養状態や健康状態の悪化を反映しているのではないかと指摘する。
2016年に国際共同疫学研究グループ(NCD-RisC)が約1860万人のデータを分析したところ、1896年の時点で北米在住者の身長は世界最高レベルだった。
しかし20世紀に入ると徐々に優位が失われていき、1980年以降はアメリカよりも背の高い国が増えている。
アメリカ生まれの若年成人男性の平均身長は現時点で5フィート9インチ(175センチ)強で、オランダやイギリスよりも低い。
オランダは20センチ増
「平均身長の低下には当該集団全体の健康状況が反映される。食料の供給量、学校給食、幼年期のストレス、医療へのアクセスなどを映し出す鏡だ」とミルズは言う。
「地球上で最も背の高いオランダ人は、過去200年で20センチも身長が伸びた。生活環境が良く、乳製品の摂取が多いからだ」
アメリカ人の平均身長は産業革命後に急速に伸びたが、その後は他国に追い越された。
オックスフォード大学人口統計科学センターの調査でも、アメリカの中高年者はイギリスに比べて健康状態が著しく劣ることが分かった。
1970〜83年に生まれたアメリカとイギリスの女性1万5000人を比較すると、アメリカ女性はイギリス女性よりも心臓の健康状態が悪く、肥満度も高かったとされる。
調査を担当したアンドリア・ティルストラは「因果関係は明らかでないが、イギリスに比べてアメリカの社会環境は健康的な生活に向いていないようだ」と指摘する。
「アメリカは、同レベルの高所得国と比べて国民の健康状態や平均寿命の点で遅れている」と、ミルズは言う。「子供の成長や、良質な栄養摂取、医療へのアクセスに、もっと注意を向けてほしい」