エリー・クック
<韓国はNATO以外でNATO型兵器を供給できる最大級の軍需大国。これまでウクライナに対しては人道支援に留めていたが、「露朝同盟」は座視できない>
北朝鮮軍部隊がロシア軍と肩を並べてウクライナの前線で戦うことになるかもしれないという見通しに、韓国は北朝鮮への対抗上、初めてウクライナに武器を供与することを検討している。そうなればロシアの思惑とは裏腹に、ウクライナに強い追い風が吹くことになる。
韓国はこれまで同盟国アメリカと歩調を合わせ、ウクライナを支援してきたが、医薬品の提供など人道的な支援に限定し、殺傷兵器の供与は拒否してきた。
軍事物資に関しては、ウクライナに武器支援をしているアメリカなどに補充用の武器弾薬を輸出することで、いわば間接的な支援を行ってきただけだ。
だがその韓国が10月22日、北朝鮮とロシアに対し「段階的な措置」を取ることを検討していると発表。ウクライナへの「攻撃用」兵器の提供もあり得ると、大統領府高官が言明した。
そうなれば、韓国の対ウクライナ政策は大きな転換を遂げることになる。ロシアへの攻撃を続行するために必要な武器弾薬と自国の防空に必要な迎撃ミサイルが手に入るとあれば、ウクライナにとっては願ってもない展開だ。
開戦から2年半余り、ウクライナ、ロシア共に前線の兵士は疲弊しきっている。過酷な冬を越すには、何としても補給物資を確保したいところだ。
「捨て駒となる新兵の募集が困難になればなるほど、この違法な戦争で(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)はますます北朝鮮に頼るようになる」と、バーバラ・ウッドワード英国連大使は、国連安全保障理事会の会合で指摘した。
韓国政府は北朝鮮とロシアの軍事協力を「違法」と非難。駐韓ロシア大使を召還し、北朝鮮兵士をロシアから「即時撤収」させるよう要求した。
韓国は「この状況を傍観したりはしない。国際社会と強固に連携して、しかるべき措置を取る」。金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長のコメントを聨合ニュースが伝えた。
韓国がロシアと北朝鮮の軍事協力に神経を尖らすのは、軍事境界線を隔てて睨み合う北朝鮮が、ロシアの技術援助を受けて軍備を近代化し、核開発も進めて、それを韓国に対して使う恐れがあるからだ。
韓国は、ウクライナにおける北朝鮮の活動を監視するため、自国の軍事・情報要員をウクライナに派遣することも検討していると、聨合ニュースは22日付けの別の記事で、匿名の情報筋の話として伝えた。
北朝鮮がどの程度ロシアを支援しているかは不明な点も多いが、ウクライナと韓国の情報機関はかなり前から北朝鮮が弾薬とミサイルを大量にロシアに提供しているとの情報をつかんでいた。
「ロシア政府は、北朝鮮との軍事協力は韓国の脅威にならないと保証し、韓国政府を納得させようとしているようだ。それを見る限り、ロシアは韓国がウクライナに武器を供与することを非常に恐れていると考えられる」と、米シンクタンク・戦争研究所が21日に発表したリポートは指摘している。
韓国には豊富な武器弾薬の備蓄があり、世界有数の軍需産業がある。「ウクライナにNATO型の兵器を供与する能力があるが、まだ供与していない最大の武器調達先の1つ」が韓国だと、米シンクタンク・ランド研究所のヨーロッパ部門の防衛研究を率いるジェイコブ・パラキラスは本誌に語った。
北朝鮮がロシアに戦闘要員を派遣しているとすれば、ロシアは「かなり切羽詰まった状況」に陥っているとみていいが、それは逆に言えばまだ頼れる援軍がいた、ということでもあると、英シンクタンク・ジオストラテジー評議会のジェームズ・ロジャーズは本誌に話した。
韓国がウクライナに武器供与を行えば、「ロシアの試みは挫かれ」、NATOとインド太平洋諸国の連携を強く国際社会に印象付ける効果もあると、ロジャーズはみている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週、北朝鮮は「既にウクライナと戦う分遣隊を準備」していて、1万人前後の兵士が派遣される見込みだと語った。
ウクライナ軍の情報機関を率いるキーロ・ブダノフは、その4分の1程度の約2600人はまず、今年8月にウクライナが越境攻撃を行ったロシア西部クルスク州の国境地帯に送り込まれるだろうと述べた。
韓国の情報機関・国家情報院が18日に発表した声明によれば、北朝鮮は既に1500人前後の特殊部隊の兵士をロシア極東の港湾都市ウラジオストクに派遣し、引き続き増派を行う模様だ。
北朝鮮の兵士たちは「適応訓練が終わり次第、前線に送られるだろう」と、声明は述べている。この兵士たちにはロシア軍の軍服とロシア製の武器、シベリア出身であることを示す偽の身分証明書が支給されたという。
「北朝鮮が兵士を派遣していることを隠すために、彼らをロシア人に見せ掛けようとしているのだろう」と、声明は指摘している。
<韓国はNATO以外でNATO型兵器を供給できる最大級の軍需大国。これまでウクライナに対しては人道支援に留めていたが、「露朝同盟」は座視できない>
北朝鮮軍部隊がロシア軍と肩を並べてウクライナの前線で戦うことになるかもしれないという見通しに、韓国は北朝鮮への対抗上、初めてウクライナに武器を供与することを検討している。そうなればロシアの思惑とは裏腹に、ウクライナに強い追い風が吹くことになる。
韓国はこれまで同盟国アメリカと歩調を合わせ、ウクライナを支援してきたが、医薬品の提供など人道的な支援に限定し、殺傷兵器の供与は拒否してきた。
軍事物資に関しては、ウクライナに武器支援をしているアメリカなどに補充用の武器弾薬を輸出することで、いわば間接的な支援を行ってきただけだ。
だがその韓国が10月22日、北朝鮮とロシアに対し「段階的な措置」を取ることを検討していると発表。ウクライナへの「攻撃用」兵器の提供もあり得ると、大統領府高官が言明した。
そうなれば、韓国の対ウクライナ政策は大きな転換を遂げることになる。ロシアへの攻撃を続行するために必要な武器弾薬と自国の防空に必要な迎撃ミサイルが手に入るとあれば、ウクライナにとっては願ってもない展開だ。
開戦から2年半余り、ウクライナ、ロシア共に前線の兵士は疲弊しきっている。過酷な冬を越すには、何としても補給物資を確保したいところだ。
「捨て駒となる新兵の募集が困難になればなるほど、この違法な戦争で(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)はますます北朝鮮に頼るようになる」と、バーバラ・ウッドワード英国連大使は、国連安全保障理事会の会合で指摘した。
韓国政府は北朝鮮とロシアの軍事協力を「違法」と非難。駐韓ロシア大使を召還し、北朝鮮兵士をロシアから「即時撤収」させるよう要求した。
韓国は「この状況を傍観したりはしない。国際社会と強固に連携して、しかるべき措置を取る」。金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長のコメントを聨合ニュースが伝えた。
韓国がロシアと北朝鮮の軍事協力に神経を尖らすのは、軍事境界線を隔てて睨み合う北朝鮮が、ロシアの技術援助を受けて軍備を近代化し、核開発も進めて、それを韓国に対して使う恐れがあるからだ。
韓国は、ウクライナにおける北朝鮮の活動を監視するため、自国の軍事・情報要員をウクライナに派遣することも検討していると、聨合ニュースは22日付けの別の記事で、匿名の情報筋の話として伝えた。
北朝鮮がどの程度ロシアを支援しているかは不明な点も多いが、ウクライナと韓国の情報機関はかなり前から北朝鮮が弾薬とミサイルを大量にロシアに提供しているとの情報をつかんでいた。
「ロシア政府は、北朝鮮との軍事協力は韓国の脅威にならないと保証し、韓国政府を納得させようとしているようだ。それを見る限り、ロシアは韓国がウクライナに武器を供与することを非常に恐れていると考えられる」と、米シンクタンク・戦争研究所が21日に発表したリポートは指摘している。
韓国には豊富な武器弾薬の備蓄があり、世界有数の軍需産業がある。「ウクライナにNATO型の兵器を供与する能力があるが、まだ供与していない最大の武器調達先の1つ」が韓国だと、米シンクタンク・ランド研究所のヨーロッパ部門の防衛研究を率いるジェイコブ・パラキラスは本誌に語った。
北朝鮮がロシアに戦闘要員を派遣しているとすれば、ロシアは「かなり切羽詰まった状況」に陥っているとみていいが、それは逆に言えばまだ頼れる援軍がいた、ということでもあると、英シンクタンク・ジオストラテジー評議会のジェームズ・ロジャーズは本誌に話した。
韓国がウクライナに武器供与を行えば、「ロシアの試みは挫かれ」、NATOとインド太平洋諸国の連携を強く国際社会に印象付ける効果もあると、ロジャーズはみている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週、北朝鮮は「既にウクライナと戦う分遣隊を準備」していて、1万人前後の兵士が派遣される見込みだと語った。
ウクライナ軍の情報機関を率いるキーロ・ブダノフは、その4分の1程度の約2600人はまず、今年8月にウクライナが越境攻撃を行ったロシア西部クルスク州の国境地帯に送り込まれるだろうと述べた。
韓国の情報機関・国家情報院が18日に発表した声明によれば、北朝鮮は既に1500人前後の特殊部隊の兵士をロシア極東の港湾都市ウラジオストクに派遣し、引き続き増派を行う模様だ。
北朝鮮の兵士たちは「適応訓練が終わり次第、前線に送られるだろう」と、声明は述べている。この兵士たちにはロシア軍の軍服とロシア製の武器、シベリア出身であることを示す偽の身分証明書が支給されたという。
「北朝鮮が兵士を派遣していることを隠すために、彼らをロシア人に見せ掛けようとしているのだろう」と、声明は指摘している。