キャサリン・ファン
<2020年の米大統領選では票の集計が終わる前に「勝利宣言」をしたトランプ前大統領。今回もその作戦を取るかと思われるが、4年前とは共和党支持者の投票方法が大きく変化しており──>
アメリカ大統領選の「開票日」は、「開票週間」に変わった感がある。今年の大統領選で11月5日の投票日の夜に結果が全て判明することはないだろうと、専門家は予測している。前回の2020年も激戦州で票の集計が終わるまでに数日を要した。
しかし、今回の大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領は、全ての票の集計が終わる前に勝利宣言をする可能性がある。バイデン大統領に敗れた4年前の大統領選でもそうだった。
4年前の選挙で集計が終わる前に勝利宣言をしたトランプ前大統領
開票作業では一般的に、当日に投票所で投票された票の集計が郵便投票や期日前投票の票より先に進む。加えて、これまでの傾向では、共和党支持者よりも民主党支持者のほうが郵便投票に積極的なケースが多かった。
その結果、開票プロセスの序盤では共和党候補がリードするが、最終的に民主党候補に逆転を許すということがしばしば起きてきた。共和党のイメージカラーの赤にちなんで、「赤い蜃気楼」と呼ばれる現象である。
今回の大統領選挙でそうしたことが起きれば、トランプは開票・集計結果に異議を申し立てて裁判を起こすだろう。
トランプは4年前、ジョージア州の当局者たちに対して、選挙結果をひっくり返せるだけの「票を探し出せ」と命令し、自身の支持者に対しては、選挙結果を「盗む」行為を阻止せよと呼びかけた。この呼びかけが21年1月の連邦議会議事堂襲撃事件につながったという指摘もある。
トランプと大統領の座を争う民主党候補のハリス副大統領は、トランプが再び同じ手法を用いることは想定済みだという。それに対処するための「手段と専門知識」が民主党にはあると、NBCニュースのインタビューで述べている。
トランプは今回も早期に勝利宣言をする可能性が高いと、ウォッシュバーン大学(カンザス州)のボブ・ベイティ教授(政治学)は本誌に語っている。接戦になった場合はとりわけ、「早々と勝利宣言して、投票日の夜にトランプがリードしていた州で最終的にハリスの(逆転)勝利が発表されれば『不正選挙』だと決め付けるだろう」。
ただし、4年前と違う点が1つある。トランプは前回、郵便投票と期日前投票で大々的な不正が行われたと主張した(この主張には根拠がない)。しかし、今回は方針を転換したようだ。トランプ陣営は支持者に郵便投票と期日前投票を呼びかけ始めたのだ。
その効果はあったらしい。フロリダ大学選挙ラボによると、郵便投票もしくは期日前投票を済ませた有権者の支持政党別の割合では、共和党支持者が民主党支持者に迫る水準に達している。期日前投票に限れば、共和党支持者のほうが民主党支持者より多い。
こうした変化により、今回は「赤い蜃気楼」が生まれないかもしれないと、ハムライン大学(ミネソタ州)のデービッド・シュルツ教授(政治学)は本誌に語る。
当日に投票所で投票する共和党支持者が減った結果、トランプは投票日夜の時点でハリスにリードを許す可能性がある。その場合は、早い段階で勝利宣言をする作戦に修正が必要になるかもしれない。
それでも、トランプが敗北を認めることはないだろうと、シュルツは言う。「(投票日の夜に)リードされていれば不正選挙だと言い、自身がリードしていれば早々と勝利を宣言して、それ以降の開票・集計結果を不正だと主張するだろう」
<2020年の米大統領選では票の集計が終わる前に「勝利宣言」をしたトランプ前大統領。今回もその作戦を取るかと思われるが、4年前とは共和党支持者の投票方法が大きく変化しており──>
アメリカ大統領選の「開票日」は、「開票週間」に変わった感がある。今年の大統領選で11月5日の投票日の夜に結果が全て判明することはないだろうと、専門家は予測している。前回の2020年も激戦州で票の集計が終わるまでに数日を要した。
しかし、今回の大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領は、全ての票の集計が終わる前に勝利宣言をする可能性がある。バイデン大統領に敗れた4年前の大統領選でもそうだった。
4年前の選挙で集計が終わる前に勝利宣言をしたトランプ前大統領
開票作業では一般的に、当日に投票所で投票された票の集計が郵便投票や期日前投票の票より先に進む。加えて、これまでの傾向では、共和党支持者よりも民主党支持者のほうが郵便投票に積極的なケースが多かった。
その結果、開票プロセスの序盤では共和党候補がリードするが、最終的に民主党候補に逆転を許すということがしばしば起きてきた。共和党のイメージカラーの赤にちなんで、「赤い蜃気楼」と呼ばれる現象である。
今回の大統領選挙でそうしたことが起きれば、トランプは開票・集計結果に異議を申し立てて裁判を起こすだろう。
トランプは4年前、ジョージア州の当局者たちに対して、選挙結果をひっくり返せるだけの「票を探し出せ」と命令し、自身の支持者に対しては、選挙結果を「盗む」行為を阻止せよと呼びかけた。この呼びかけが21年1月の連邦議会議事堂襲撃事件につながったという指摘もある。
トランプと大統領の座を争う民主党候補のハリス副大統領は、トランプが再び同じ手法を用いることは想定済みだという。それに対処するための「手段と専門知識」が民主党にはあると、NBCニュースのインタビューで述べている。
トランプは今回も早期に勝利宣言をする可能性が高いと、ウォッシュバーン大学(カンザス州)のボブ・ベイティ教授(政治学)は本誌に語っている。接戦になった場合はとりわけ、「早々と勝利宣言して、投票日の夜にトランプがリードしていた州で最終的にハリスの(逆転)勝利が発表されれば『不正選挙』だと決め付けるだろう」。
ただし、4年前と違う点が1つある。トランプは前回、郵便投票と期日前投票で大々的な不正が行われたと主張した(この主張には根拠がない)。しかし、今回は方針を転換したようだ。トランプ陣営は支持者に郵便投票と期日前投票を呼びかけ始めたのだ。
その効果はあったらしい。フロリダ大学選挙ラボによると、郵便投票もしくは期日前投票を済ませた有権者の支持政党別の割合では、共和党支持者が民主党支持者に迫る水準に達している。期日前投票に限れば、共和党支持者のほうが民主党支持者より多い。
こうした変化により、今回は「赤い蜃気楼」が生まれないかもしれないと、ハムライン大学(ミネソタ州)のデービッド・シュルツ教授(政治学)は本誌に語る。
当日に投票所で投票する共和党支持者が減った結果、トランプは投票日夜の時点でハリスにリードを許す可能性がある。その場合は、早い段階で勝利宣言をする作戦に修正が必要になるかもしれない。
それでも、トランプが敗北を認めることはないだろうと、シュルツは言う。「(投票日の夜に)リードされていれば不正選挙だと言い、自身がリードしていれば早々と勝利を宣言して、それ以降の開票・集計結果を不正だと主張するだろう」