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シニカルなイギリス風ユーモアでスターマー英首相を斬ると...

ニューズウィーク日本版 2024年11月9日 15時3分

コリン・ジョイス
<日本人が和食好きなのと同じくらいジョーク好きなイギリス人。政権交代早々人気急落の首相ももちろんその標的に>

イギリスに住んでいて好きなことの一つはユーモアのセンス。かなりシニカルな時もあるが、ある種の「癒やし」だったりもする。

僕がイギリス人だから好きなのかもしれない。日本人が和食はいいよと言っているようなものだ。

僕は時々、あるテーマについて人々が言うおもしろいことをただ集めて、ちょっとした話を加えるだけで、いとも簡単、記事になるじゃないか!と思うことがある。

先日、英労働党のキア・スターマー新政権の人気が急落したことについて書いていたときに、まさにそれが頭に浮かんだ。これまで67歳以上の全ての高齢者に支給されていた冬季燃料手当について、労働党が対象の限定に乗り出したことを、僕は指摘した。

国からの給付金を得るための条件があるときはいつでもどこかで線引きがあり、線引きがあるときにはいつでもギリギリで対象にならない人が大勢いるものだ(例えば、国からの300ポンドの給付金を受けられる年収を11ポンド上回っている、とか)。

そんなときによく耳にするセリフがある。「もう少し貧乏だったら、もっと金持ちになっていたのに」。

僕はまた、スターマーが「とんでもなく清廉潔白」ではないことに人々が失望していることを書いた。例えばアーセナルから無料チケットを受け取っていることは、実際にはそれほどの悪事ではなかったのかもしれない。

スターマーは、以前は自費で試合観戦に行っていたが、今は首相になったので、普通の席に座ったら納税者に莫大な費用負担をかけて警備を付けることになってしまうからできないのだ、と説明した。

スターマーの妻は数々の国家行事に出席することになるので、きちんとした服装をする必要がある。彼女がプライマーク(イギリスで人気のファストファッションブランド)などを着ていたら、イギリスにとっては恥ずべき事態だろう。

さらに、高級なドレスを1枚買って今後4年間とことん着倒すこともできない。さりとて年に数回、1000ポンドの買い物がまるで大したものではないかのように支払えるだけの高額な給与が首相に支払われているわけではない。

イギリスには、首相夫人が服を買うために国庫を利用するようなシステムはない。だから、裕福な労働党支持者が出資してあげたとしても、おそらくそれほど悪いことではない。衣装提供を隠れ蓑にした巨額の「賄賂」などではないと、はっきり分かるような透明性さえあるのなら。

そして、イギリスにはそのためのガイドラインがあり、スターマーはそれに従ったと言っている。

でも、とにかく重要なのは、スターマーが「たちが悪く」見えてしまうのは、庶民がほしくても決して手に入らないようなものを山ほど無料でもらっているからだ。そして、あまりのがめつさにうんざりさせられた前保守党政権の面々と、なんら変わらないように見えるからだ。

ということで、こんなジョークを耳にする。「新しいボスに会ってみな。前のボスと同じさ」(これはザ・フーの楽曲「無法の世界(Won't Get Fooled Again)」の歌詞だ)

最後にお伝えしたいジョークは、「大衆」が考え出したものではない。コメディアンのソフィー・デューカーが書いたもので、スコットランドの芸術祭「エディンバラ・フリンジ・フェスティバル」の最高ジョークの1つに選ばれた。おもしろいことに、それほど笑える冗談ではないが、的を射ているようだ。今ではスターマーを見ると、どうしてもこのジョークを思い出さずにはいられないくらいだから。いわく、「キア・スターマーはAIが作成した代理教員の画像みたいに見える」

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