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米大統領選の現実を見よ――その傲慢さゆえ、民主党は敗北した

ニューズウィーク日本版 2024年11月21日 16時0分

サム・ポトリッキオ
<今や民主党のブランドイメージは「現実に目を向けない高慢なエリートの党」――トランプ勝利を受け入れられない人こそ読むべき、民主党敗北の根本要因とは。>

私のような「政治オタク」な人間にとって、現時点で最も重要な疑問は、ハリス副大統領以外の候補だったなら米大統領選でトランプ次期大統領に勝てたかどうかだ。

選挙とは、候補者が示す選択肢を比較するものだ。大統領選候補者討論会を除けば、今回の選挙戦で最も決定的だった比較の1つは、ハリスが人気ポッドキャスト司会者ジョー・ローガンの番組に出なかったことだ。一方、トランプは3時間も出演した。

ローガンの番組は幅広い層の有権者が聴いている。バイラル性(ソーシャルメディア上の口コミによる伝播力)の高さから、話題にもなりやすい。ハリスが番組出演を見送ったのは、陣営のリベラル派スタッフに批判される事態を懸念したからだ。

ここで政策面からトランプとハリスの支持者像を思い浮かべてほしい。後者のほうが具体的イメージが浮かびづらいはずだ。民主党の陣営は多様だが、分裂していて妥協を許さない。ハリスはリベラル派の反発を懸念して、トランプが取り込みに成功した投票率の低い有権者にアプローチする絶好の機会を逃した。この事実は民主党を支える土台が崩れていることを示すものだ。

アメリカンドリームはもうない。私の両親の世代は90%の確率で前の世代より多くの収入を得た。私の子供たちは何かが劇的に変わらない限り、この確率が50%を下回る公算が大きい。私が生まれた年の住宅購入者の年齢の中央値は38歳。今は54歳だ。

作家でニューヨーク大学経営大学院教授のスコット・ギャロウェイは、それを最も痛感する者がこの国を最も徹底的に破壊する人物に票を入れる可能性が高いと指摘する。民主党が敗北した大きな理由の1つは、人々が不満を持っているときは常に政権政党に非難が集中するからだ。

26年の中間選挙では「勝算」あり

しかし、もっと大きいのはコカ・コーラに対するペプシのような民主党の「ブランド問題」だ。ペプシは、目隠しをした人々が両方のブランドを試飲したところ、ペプシのほうがおいしいと感じたとアピールする広告で有名だ。有権者の大半は民主党の経済政策のほうがいいと思っていても、経済に関しては共和党の方が信頼度が高い。

今の民主党は労働者を見下すエリートの党だ。アイデンティティー政治(不公正にさらされるジェンダーや人権など特定集団の利益を代弁する政治)をやっていないときは学者や専門職、NPO(非営利組織)関係者以外を嘲笑していると思われている。この事実は民主党ブランドの完全な凋落と、「忘れられた人々」のために戦う党として信頼できない理由を端的に示している。

ハリスは白人有権者の支持で16年のクリントンと20年のバイデン両候補を上回っていた。実際、民主党は10年以降、白人有権者の間で着実に支持を広げている。

一方で、白人を除く全ての層では支持が低下した。つまり民主党敗北の根本原因は、現実に目を向けない高慢なエリートの党というブランドだ。私が生まれてからずっと、民主党の大統領候補は民間企業の経験がない学者や弁護士、キャリア政治家だった。

とはいえ、全てが失われたわけではない。民主党は26年の中間選挙では勝つ可能性が高い。トランプは投票率の低い有権者を投票に向かわせる、という特異な形で選挙の様相を一変させた。彼らはトランプが出なければ投票に行かない。22年の中間選挙で民主党が善戦したのはそのためだ。

民主党は党の基本姿勢を定義し直すのか、傲慢なまま次の大統領選でJ・D・バンス次期副大統領や次期国連大使に指名されたエリス・ステファニクに負けるのか。今はトランプよりも傲慢さが最大の敵だ。

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