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若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感

ニューズウィーク日本版 2024年11月20日 11時15分

舞田敏彦(教育社会学者)
<この30年の各国の15~24歳の自殺率を見ると、急速に少子化が進み若者の将来不安が強い東アジアで急伸している>

現代社会では「青年期」というライフステージがある。子どもでもなければ大人でもない、中間的な存在だ。立ち位置が不明瞭なので、心理的な不安や葛藤に苛まれやすい。こうした不安定な状態が何らかのきっかけ要因に遭遇すると、良からぬ行動へと発展する。

若いだけに、エネルギーは膨大だ。これを適当な方向に上手く仕向けないと、それこそ大変なことになる。近年、闇バイトに加担する若者が増えているが、若者の凶悪犯罪は昔と比べて減っている。1960年代の頃のように、過激な学生運動が起きることもない。

その代わり自殺が増えていて、あたかもベクトルが反対になっているかのようだ。1990年の15~24歳の年間自殺者は1309人で、同年の当該年齢人口は1869万人。ベース人口10万人あたりの自殺者は7.0人だった。それが2020年では16.3人となっている。倍増以上だ。

他国と比較すると、日本の特異性がいっそう際立つ。日本を含む主要7カ国について、15~24歳の自殺率を棒グラフにすると<図1>のようになる。

1990年では日本は最も低かったが、2020年では最も高くなっている。30年間で他国をゴボウ抜きだ。欧米諸国が横ばいないしは減少なのに対し,東アジアの2国は大幅に増えている。自殺の定義が国によって違うことも考えられるが、この事実には驚かされる。

日本の10代の自殺増については、逆ピラミッドの年齢構成の社会において「期待圧力」が強まっていることが大きいのではないか、と前回の記事で指摘した。10代の自殺動機で多いのは、「学業不振」「親の叱責」「親子関係の不和」といったものだ。お隣の韓国も、似たような状況だろう。日本以上の超少子化・超受験社会で、子どもたちが受けている圧力は凄まじいと考えられる。

一段上の20代前半は、受験の重圧からは解放されている。大学等に在籍し、自己アイデンティティー確立のため、勉学や各種の体験に勤しんでいる者、新社会人になって将来への希望に胸を膨らませている者が多い。

要するに後先のことを展望して生きているのだが、今では先行きが著しく不透明になってしまっている。高い給与は期待できない、上の世代を支えるための税金をガッポリ取られる、奨学金を長期にわたって返していかないといけない、結婚など夢のまた夢......。

20代前半男性のうち「これから生活が悪くなっていく」と答えたのは、1990年では5.0%だったが2023年では24.3%にもなっている(内閣府『国民生活に関する世論調査』)。将来展望の閉塞は、青年層の「生」にも影を落とす。<図2>は、20代前半男性の将来展望閉塞と自殺率の推移を重ねてみたものだ。

約半世紀のトレンドだが、2つの曲線の推移はおおむね似ている。相関係数は+0.7158で、共変関係があると言っていい。中高年の自殺率は失業率と強く相関するのだが、前途ある若者にあっては展望不良の影響が大きい。

「物事を悪いほうにしか考えられない、ひ弱なメンタルだ」などと責めるのは筋違いだ。客観的に見ても、今の若者にはかつてないほどの不利な条件がのしかかっている。<図2>のグラフを見ると、ここ数年で展望不良の率がグンと上がっているのは脅威だ。

国としてまずなすべきは、若年世帯が稼ぎの3割を税金等で持っていかれる事態を変えることだ(「この四半世紀でほぼ倍増した若年世代の税負担率」(2023年8月16日、本サイト)。

<資料:WHO「Mortality Database」、
    内閣府『国民生活に関する世論調査』、
    厚労省『人口動態統計』>

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