ビリー・シュワブ・ダン(エンターテインメント担当)
<セレブとプロの本気のダンスに魅了されて──SNSを活用するリアリティー番組のPR戦略>
ダンスに自信があるセレブがプロのダンサーとペアを組んで競い合う『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ(DWTS)』。テレビ放映開始から約20年が経過してもなお、人気は衰えていない。
今秋に始まったシーズン33には俳優のエリック・ロバーツ(エマ・ロバーツの父でジュリア・ロバーツの兄)や、パリ五輪の7人制ラグビーのアメリカ女子代表で銅メダルを獲得したイロナ・マーハらが参戦し、ミラーボールトロフィーを目指している。
Premiere Opening Number | Dancing with the Stars
DWTSがこれほど長く愛される理由を、PRの専門家はどうみているのか。
PR会社オート・イン・テキサスのアキーラ・メンデス・バルデス創業者兼CEOは、出演者を選ぶプロセスに明確な方程式があると語る。
「DWTSは、長く続いている不動のブランドと、シーズンごとに新鮮な顔触れのセレブを融合させる点がユニークだ。毎回、特定の方程式に基づいて出演者を選んでいる。話題沸騰中の人、愛されるレジェンド、一部の視聴者から失敗することをひそかに期待され、物議を醸すセレブ。不動のフォーマットだから安心して見ていられる」
イギリスのマーケティング・シグナルズでシニアPRエグゼクティブを務めるローレン・リチャードソンも同じ点を指摘する。「そのときメディアの注目を集めているセレブをうまく選んで、番組の中でも外でも視聴者の関心を引いている。詐欺で実刑判決を受けたアンナ・デルヴェイことアンナ・ソローキン(ドラマ『令嬢アンナの真実』のモデル)のような悪名高いセレブは、さまざまな理由で視聴者を引き寄せる。そんな人がゴールデンタイムのリアリティー番組に出演しているというショック効果もあるし、彼らが敗退するかどうかを見届けたい人もいる」
JMGパブリック・リレーションズのジェナ・グアルネリ創業者兼CEOは、「さまざまな世代のセレブを出演させて、幅広い年齢層の視聴者を引き付けている」と語る。
「ディズニー・チャンネルやティーン向けドラマで人気の若手女優チャンドラー・キニーは、新たな視聴者層をターゲットにしている。一方で、(映画『ダイ・ハード』の)レジナルド・ベルジョンソンなどベテランのスターは年長の人々の懐かしさを誘う」
パリ五輪の体操のアメリカ男子代表で銅メダルを獲得したスティーブン・ネドロシクは「あん馬の男」と呼ばれ、演技前に黒縁の眼鏡を外す姿が「スーパーマン」のクラーク・ケントに似ているとして、ソーシャルメディアで話題になった。
Stephen Nedoroscik's Oscars Night Paso Doble - Dancing with the Stars
そうした人を起用すれば、彼らの人気に便乗して番組に注目を集められると、グアルネリは語る。「出演者の選定は明らかに戦略的だ」
DWTSは近年ソーシャルメディアでのプレゼンスを拡大しており、出演者による番組関連の投稿によってさらに注目が集まると、グアルネリは言う。「多くのファンを持つセレブが自分のアカウントでDWTSのブランドを宣伝し、番組を見てと呼びかける。彼らのコンテンツがバズれば、ブランドの拡大に貢献し、トラフィックを番組に誘導して視聴者が増える」
シーズン33を盛り上げているエリック・ロバーツは、審査員のポイントと観客の投票数で勝ち抜いていくためには、インスタグラムやTikTokの力を活用することが重要だと語る。彼がペアを組むプロダンサーと一緒に作成して話題になった動画も、ソーシャルメディアのトレンドに乗って広がった。
「投票に関してかなり戦略的にやっている。手始めの1つが、(ココナツから飛び出した水を浴びたように見える)あの動画だ。動画をもっと見たいなら、私たちに投票して勝ち残らせてほしいと訴えている」
グアルネリによれば、戦略的なPRは出演者と番組の双方にとって効果的だ。「ネドロシクの五輪でのパフォーマンスが話題になった後、彼がDWTSに出演するらしいという噂が広がった。実際に出演すると、番組も彼もメディアで大々的に取り上げられた。また(番組が)シーズン32の演技をTikTokで公開して成功したため、今回もソーシャルメディアを活用して投票と視聴率を促進している」
「今シーズンはほぼ全てのペアが一緒にコンテンツを作成し、舞台裏を公開し、自分たちの人柄やありのままの姿を披露している。これは番組にとって全く新しい要素だ」
こうした交流により、ファンは出演者と一緒に挑戦しているように感じると、リチャードソンは語る。「ファンはトレーニングやダンスの練習だけでなく、舞台裏の姿や、セレブとプロダンサーの間に友情が芽生える様子、NG集なども見たい」
視聴者数はシーズン29から30にかけて約300万人減少したが、シーズン33の初回は840万人に達し、ここ数年で最高の数字となった。
「この成功と最近の人気急上昇の要因を1つに絞るのは難しいが、視聴率に影響を与えたと思われる今シーズンの要素の1つは、プロダンサーのライリー・アーノルドの復帰だ」と、グアルネリは言う。
若手のアーノルドはダンスフロアに新鮮なエネルギーと才能をもたらし、自分の歩みを100万人以上のTikTokフォロワーと共有して、新しい視聴者層を掘り起こしている。彼女が番組で振り付けたダンスの1つは、昨シーズンのTikTokのダンスとして流行した。
「さまざまな要因があるが、なかでも新しいプロダンサーの加入と、セレブの戦略的なキャスティングとペアリング、視聴者を引き込むソーシャルメディアの活用が今シーズンの成功を支えている」
<セレブとプロの本気のダンスに魅了されて──SNSを活用するリアリティー番組のPR戦略>
ダンスに自信があるセレブがプロのダンサーとペアを組んで競い合う『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ(DWTS)』。テレビ放映開始から約20年が経過してもなお、人気は衰えていない。
今秋に始まったシーズン33には俳優のエリック・ロバーツ(エマ・ロバーツの父でジュリア・ロバーツの兄)や、パリ五輪の7人制ラグビーのアメリカ女子代表で銅メダルを獲得したイロナ・マーハらが参戦し、ミラーボールトロフィーを目指している。
Premiere Opening Number | Dancing with the Stars
DWTSがこれほど長く愛される理由を、PRの専門家はどうみているのか。
PR会社オート・イン・テキサスのアキーラ・メンデス・バルデス創業者兼CEOは、出演者を選ぶプロセスに明確な方程式があると語る。
「DWTSは、長く続いている不動のブランドと、シーズンごとに新鮮な顔触れのセレブを融合させる点がユニークだ。毎回、特定の方程式に基づいて出演者を選んでいる。話題沸騰中の人、愛されるレジェンド、一部の視聴者から失敗することをひそかに期待され、物議を醸すセレブ。不動のフォーマットだから安心して見ていられる」
イギリスのマーケティング・シグナルズでシニアPRエグゼクティブを務めるローレン・リチャードソンも同じ点を指摘する。「そのときメディアの注目を集めているセレブをうまく選んで、番組の中でも外でも視聴者の関心を引いている。詐欺で実刑判決を受けたアンナ・デルヴェイことアンナ・ソローキン(ドラマ『令嬢アンナの真実』のモデル)のような悪名高いセレブは、さまざまな理由で視聴者を引き寄せる。そんな人がゴールデンタイムのリアリティー番組に出演しているというショック効果もあるし、彼らが敗退するかどうかを見届けたい人もいる」
JMGパブリック・リレーションズのジェナ・グアルネリ創業者兼CEOは、「さまざまな世代のセレブを出演させて、幅広い年齢層の視聴者を引き付けている」と語る。
「ディズニー・チャンネルやティーン向けドラマで人気の若手女優チャンドラー・キニーは、新たな視聴者層をターゲットにしている。一方で、(映画『ダイ・ハード』の)レジナルド・ベルジョンソンなどベテランのスターは年長の人々の懐かしさを誘う」
パリ五輪の体操のアメリカ男子代表で銅メダルを獲得したスティーブン・ネドロシクは「あん馬の男」と呼ばれ、演技前に黒縁の眼鏡を外す姿が「スーパーマン」のクラーク・ケントに似ているとして、ソーシャルメディアで話題になった。
Stephen Nedoroscik's Oscars Night Paso Doble - Dancing with the Stars
そうした人を起用すれば、彼らの人気に便乗して番組に注目を集められると、グアルネリは語る。「出演者の選定は明らかに戦略的だ」
DWTSは近年ソーシャルメディアでのプレゼンスを拡大しており、出演者による番組関連の投稿によってさらに注目が集まると、グアルネリは言う。「多くのファンを持つセレブが自分のアカウントでDWTSのブランドを宣伝し、番組を見てと呼びかける。彼らのコンテンツがバズれば、ブランドの拡大に貢献し、トラフィックを番組に誘導して視聴者が増える」
シーズン33を盛り上げているエリック・ロバーツは、審査員のポイントと観客の投票数で勝ち抜いていくためには、インスタグラムやTikTokの力を活用することが重要だと語る。彼がペアを組むプロダンサーと一緒に作成して話題になった動画も、ソーシャルメディアのトレンドに乗って広がった。
「投票に関してかなり戦略的にやっている。手始めの1つが、(ココナツから飛び出した水を浴びたように見える)あの動画だ。動画をもっと見たいなら、私たちに投票して勝ち残らせてほしいと訴えている」
グアルネリによれば、戦略的なPRは出演者と番組の双方にとって効果的だ。「ネドロシクの五輪でのパフォーマンスが話題になった後、彼がDWTSに出演するらしいという噂が広がった。実際に出演すると、番組も彼もメディアで大々的に取り上げられた。また(番組が)シーズン32の演技をTikTokで公開して成功したため、今回もソーシャルメディアを活用して投票と視聴率を促進している」
「今シーズンはほぼ全てのペアが一緒にコンテンツを作成し、舞台裏を公開し、自分たちの人柄やありのままの姿を披露している。これは番組にとって全く新しい要素だ」
こうした交流により、ファンは出演者と一緒に挑戦しているように感じると、リチャードソンは語る。「ファンはトレーニングやダンスの練習だけでなく、舞台裏の姿や、セレブとプロダンサーの間に友情が芽生える様子、NG集なども見たい」
視聴者数はシーズン29から30にかけて約300万人減少したが、シーズン33の初回は840万人に達し、ここ数年で最高の数字となった。
「この成功と最近の人気急上昇の要因を1つに絞るのは難しいが、視聴率に影響を与えたと思われる今シーズンの要素の1つは、プロダンサーのライリー・アーノルドの復帰だ」と、グアルネリは言う。
若手のアーノルドはダンスフロアに新鮮なエネルギーと才能をもたらし、自分の歩みを100万人以上のTikTokフォロワーと共有して、新しい視聴者層を掘り起こしている。彼女が番組で振り付けたダンスの1つは、昨シーズンのTikTokのダンスとして流行した。
「さまざまな要因があるが、なかでも新しいプロダンサーの加入と、セレブの戦略的なキャスティングとペアリング、視聴者を引き込むソーシャルメディアの活用が今シーズンの成功を支えている」