田中弥生 + 土居丈朗(構成:髙橋涼太朗) アステイオン
<予算だけでなく、決算への関心を持つためにも事後検証が重要に>
布製マスク配布事業、持続化給付金事業、病床確保事業、巨額の予備費など、新型コロナ対策には財政支出が多額に投じられたが、その財政運営に会計検査院がメスを入れたことが話題になった。
その一端について、田中弥生・会計検査院長に本誌編集委員の土居丈朗・慶應義塾大学教授が聞いた。『アステイオン』101号の特集「コロナ禍を経済学で検証する」より「コロナ対策の『事後検証』――田中会計検査院長が語る」を3回に分けて転載。本編は第3回目。
※第2回:新型コロナ・病床に対する補助金「1日当たり最大43万6000円」は妥当だったのか?...診療報酬制度とのミスマッチから続く
◇ ◇ ◇
会計検査院長就任に際して
土居 検査官としてコロナ禍の経験を経て、2024年1月に会計検査院長に就任され、会計検査院長としてめざす5つの目標を掲げられたとうかがいました。どのような意図や背景があったのでしょうか。
田中 会計検査院がその役割や機能をより効果的に発揮し、認知度を上げるためには改革がまず必要だと考え、その一環として目標を掲げました。理由は2つあります。
1つ目は国の財政監督機関としてのミッションを明確にし、社会に訴えるためです。会計検査院は1880年に設立され、来年145周年を迎えます。そのミッションはこれまで145年間変わっていませんが、直近で何をすべきかをリーダーとして示す必要があると考えました。
2つ目は、霞が関ではマネジメントの発想が希薄だと感じたことです。リーダーが目標を示し、職員には自分の仕事の意義を再認識してもらい、モチベーションを高めることが重要だと思いました。そのためにも、挙手制で全職員と対話しています。
土居 霞が関でマネジメントの発想が希薄というのは、その通りですね。行政機関の幹部として官僚がマネジメントを発揮し過ぎると、政治任用されている大臣のトップマネジメントとバッティングする。
かといって、大臣の言いなりになればよいかというと、それでうまくいく保証はない。難しいところですね。それで、会計検査院長の5つの目標とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
田中 1つ目は、我々の検査報告を決算だけでなく、予算の審議にも役立つようにすることです。要は予算・決算のPDCAサイクルを回すという意味です。
2つ目は、制度やその運営方法の改善に資するような検査報告を作ることです。3つ目は検査の質を向上させることです。
会計検査院は重箱の隅をつつくような細かい指摘をするとよく言われてきました。それを超えて、1点の検査から他地域や全国へと検査を広げ、制度改正に寄与するような提言を行ないたいと考えています。これを「点から線へ、線から面への検査」と我々は言っています。
そのためにはデータ分析や統計解析を活用し、AIなどを使ってリスクを察知する新しい手法も検討しています。こうした取り組みを支援するために、3年前に検査支援室(デジタル技術を活用して、新しい検査手法の開発、業務の合理化等を行なう部署)を設立しました。
土居 先ほどうかがった持続化給付金の申告状況の検査は、国税庁のデータを活用して成果を上げていることが一部で話題になりました。
田中 持続化給付金の収入は課税対象となります。中小企業庁と国税庁のデータからサンプリングして、課税対象となる収入として適切に申告されているかを会計検査院で確認しました。その結果、少なく見積もっても5%弱のケースで適切に申告されていないことが判明しました。
土居 今までにない画期的な所見だと思います。つまり、省庁をまたぐ組織横断的なデータのやり取りを霞が関はそもそもやりたがらないし、これまでやってきませんでした。
お互いが相互不可侵でデータの融通をしてこなかったのが、会計検査院の力でその垣根を取り払う1つの突破口になりました。
田中 制度上は省庁間で照会をかけることが可能ですが、より積極的に活用されるようになってくれればいいと思っています。
法人や個人事業者の受給額は100万円や200万円単位の話で、一個一個は小さく見えるかもしれない。しかし、トータルで見ると5兆5000億円(2020年度)にものぼります。ただし、件数が多い故に実地検査よりも、データ分析を活用するほうが適していると思っています。
土居 データを活用することは重要ですね。それでは、残りの4つ目と5つ目の目標とは何でしょうか?
田中 4つ目の目標は、国民目線で我々の社会的認知度を上げることです。会計検査院は憲法機関として国民のために活動していますが、業務の性質上、その対象が行政機関の改善にとどまり、仕事内容が国民の皆さんに伝わりづらくもあります。
検査報告が国会に提出されても国民の皆さんやメディアが注目しない限り、国会議員の方々の関心は必ずしも高まりません。ですから社会を変える力になるために世論を味方につけて国民目線で認知度を上げるということを目標に掲げました。
5つ目の目標は業務改革です。特に重要なのは検査結果の報告の時期を年1回から分散化・平準化することです。実はこれには我々の調査スケジュールや審議プロセスを根本的に見直す必要があり、また検査を受ける各役所の方々にも協力をしていただかなければいけないため一大改革です。
しかし、分厚い報告書を年に一度しか出さないことで、国会議員の方々やメディア、そして国民の皆さんの目に留まらないで漏れてしまう案件がたくさんあります。これは本当にもったいないことです。
土居 あの分厚い検査報告をメディアが報じようにも、その日のニュースは限られているから、ごく一部しか報道してくれない。しかし、これを仮に年4回に分ければ、4回機会があって、国民の目に触れるチャンスが4回に増えるということですね。それが国民の認知度を上げることにも貢献するという改革ですね。
田中 実は記者へのレクチャーをしたときにメディアが最も関心を示してくれたのは、この報告時期の分散化でした。その結果、与野党両方の議員の方からもポジティブな意見をいただいています。
土居 それはすばらしいですね。年1回の報告は会計年度の仕組み上やむを得ない部分もあります。しかし、会計検査はその予算のサイクルから多少独立してもいいと私も思います。
田中 実際に臨時国会が秋にあったとしても、常会は1月からで、決算の審議は4月頃になることが多いのでかなり間が空きます。ここはもう少し発表の仕方を工夫して、国会の記憶に残るような形で出していきたいと思っています。
土居 最後に新型コロナ対策予算の使われ方を今後に活かすための教訓として、会計検査院長として何かお考えになっていることがあれば、ぜひお聞かせください。
このインタビューは2024年7月に会計検査院で行われた。クレジットのない写真はすべて河内彩・撮影
田中 4点ほど、挙げたいと思います。第一に、新型コロナ対策の教訓として、スピードとコストの問題が大きかったと感じています1人10万円支給された特別定額給付金の支出額は、決算で見ると12兆7700億円となり、その給付に実に1000億円程度のコストがかかったと言われています。
日本は紙ベースの作業が多く、給付に数カ月を要しましたが、アメリカではソーシャルセキュリティナンバーを活用して、わずか1週間ほどで全額配布されました。この給付スピードの違いがコストに大きく反映されています。
第二に、行政の体制問題です。先ほど述べた、委託や再委託といった行政の体制の問題も浮き彫りになりましたが、透明性の問題とも密接に関連しています。また、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の例でも、国と地方の間などでの情報伝達の齟齬が発生したなど、情報伝達の難しさも大きな課題でした。
第三に、事後検証の問題です。いわゆるゼロゼロ融資(日本政策金融公庫等が実施した新型コロナ特別貸付等)では早急な要件緩和の結果、後の管理が難しく、事後検証も難しくなるという問題がありました。
第四に、国民の皆様に決算に対して関心を持っていただくことです。新型コロナ対策にこれだけの巨額のお金が投じられたことで、「何に使われたのか」という国民からの声が大きかったと思います。
これまでは予算の議論が多かったのですが、今後は決算に対しても関心を持っていただきたい。実際にその機運が高まっていると思います。そのためにも事後検証が大切で、それができるための検討が必要だと思っています。
土居 今回の『アステイオン』の特集は「コロナ対策の事後検証」がテーマです。事後検証の難しさはまさにご指摘の通りです。日本では財政だけでなく、いろいろな面で事後検証は難しい。
もしかすると、日本の組織構造には「事後検証されることを前提に行動しよう」という発想があまりなく、むしろ「できれば事後検証されず、後から何となくよかったねと言われればいい」という風潮が官民問わず多く見受けられます。
欧米のように政権交代が起きれば、政権を失うと次の与党に事後検証されるという緊張感があるのですが、特に日本の場合は、政権交代がないので、行政の中での事後検証を求めるような牽制力が働きにくいこともあります。これは今後の日本の課題でもありますね。
田中 そうですね。今、会計検査院のホームページに新型コロナ対策の検査結果をまとめた「コロナ特設サイト(注5)」を設けています。
すべてはカバーできていませんが、我々がこの3年間、コロナ関係で調べてきた検査結果を一覧できるようにしています。これが1つのきっかけになり、さまざまなところで事後検証を行なっていただければと思います。
土居 今日は貴重なお話をうかがえました。本当にどうもありがとうございました。
【注】
(5) 新型コロナウイルス感染症対策関係経費等に関する検査結果(特設サイト)
田中弥生(Yayoi Tanaka)
1960年生まれ。2002年大阪大学大学院国際公共政策研究科で博士号取得。笹川平和財団研究員、国際協力銀行プロジェクト開発部参事役、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構教授などを経て、2019年9月に会計検査院検査官、2024年1月に会計検査院長に就任。専門は非営利組織論、評価論。著書に『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』(集英社)、『NPOと社会をつなぐ──NPOを変える評価とインターメディアリ』(東京大学出版会)など。
土居丈朗(Takero Doi)
慶應義塾大学経済学部教授、アステイオン編集委員。1970 年生まれ。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、現職。専門は財政学、経済政策論など。著書に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学(第2版)』 (日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)、『平成の経済政策はどう決められたか』(中央公論新社)などがある。
『アステイオン』101号
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
CCCメディアハウス[刊]
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<予算だけでなく、決算への関心を持つためにも事後検証が重要に>
布製マスク配布事業、持続化給付金事業、病床確保事業、巨額の予備費など、新型コロナ対策には財政支出が多額に投じられたが、その財政運営に会計検査院がメスを入れたことが話題になった。
その一端について、田中弥生・会計検査院長に本誌編集委員の土居丈朗・慶應義塾大学教授が聞いた。『アステイオン』101号の特集「コロナ禍を経済学で検証する」より「コロナ対策の『事後検証』――田中会計検査院長が語る」を3回に分けて転載。本編は第3回目。
※第2回:新型コロナ・病床に対する補助金「1日当たり最大43万6000円」は妥当だったのか?...診療報酬制度とのミスマッチから続く
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会計検査院長就任に際して
土居 検査官としてコロナ禍の経験を経て、2024年1月に会計検査院長に就任され、会計検査院長としてめざす5つの目標を掲げられたとうかがいました。どのような意図や背景があったのでしょうか。
田中 会計検査院がその役割や機能をより効果的に発揮し、認知度を上げるためには改革がまず必要だと考え、その一環として目標を掲げました。理由は2つあります。
1つ目は国の財政監督機関としてのミッションを明確にし、社会に訴えるためです。会計検査院は1880年に設立され、来年145周年を迎えます。そのミッションはこれまで145年間変わっていませんが、直近で何をすべきかをリーダーとして示す必要があると考えました。
2つ目は、霞が関ではマネジメントの発想が希薄だと感じたことです。リーダーが目標を示し、職員には自分の仕事の意義を再認識してもらい、モチベーションを高めることが重要だと思いました。そのためにも、挙手制で全職員と対話しています。
土居 霞が関でマネジメントの発想が希薄というのは、その通りですね。行政機関の幹部として官僚がマネジメントを発揮し過ぎると、政治任用されている大臣のトップマネジメントとバッティングする。
かといって、大臣の言いなりになればよいかというと、それでうまくいく保証はない。難しいところですね。それで、会計検査院長の5つの目標とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
田中 1つ目は、我々の検査報告を決算だけでなく、予算の審議にも役立つようにすることです。要は予算・決算のPDCAサイクルを回すという意味です。
2つ目は、制度やその運営方法の改善に資するような検査報告を作ることです。3つ目は検査の質を向上させることです。
会計検査院は重箱の隅をつつくような細かい指摘をするとよく言われてきました。それを超えて、1点の検査から他地域や全国へと検査を広げ、制度改正に寄与するような提言を行ないたいと考えています。これを「点から線へ、線から面への検査」と我々は言っています。
そのためにはデータ分析や統計解析を活用し、AIなどを使ってリスクを察知する新しい手法も検討しています。こうした取り組みを支援するために、3年前に検査支援室(デジタル技術を活用して、新しい検査手法の開発、業務の合理化等を行なう部署)を設立しました。
土居 先ほどうかがった持続化給付金の申告状況の検査は、国税庁のデータを活用して成果を上げていることが一部で話題になりました。
田中 持続化給付金の収入は課税対象となります。中小企業庁と国税庁のデータからサンプリングして、課税対象となる収入として適切に申告されているかを会計検査院で確認しました。その結果、少なく見積もっても5%弱のケースで適切に申告されていないことが判明しました。
土居 今までにない画期的な所見だと思います。つまり、省庁をまたぐ組織横断的なデータのやり取りを霞が関はそもそもやりたがらないし、これまでやってきませんでした。
お互いが相互不可侵でデータの融通をしてこなかったのが、会計検査院の力でその垣根を取り払う1つの突破口になりました。
田中 制度上は省庁間で照会をかけることが可能ですが、より積極的に活用されるようになってくれればいいと思っています。
法人や個人事業者の受給額は100万円や200万円単位の話で、一個一個は小さく見えるかもしれない。しかし、トータルで見ると5兆5000億円(2020年度)にものぼります。ただし、件数が多い故に実地検査よりも、データ分析を活用するほうが適していると思っています。
土居 データを活用することは重要ですね。それでは、残りの4つ目と5つ目の目標とは何でしょうか?
田中 4つ目の目標は、国民目線で我々の社会的認知度を上げることです。会計検査院は憲法機関として国民のために活動していますが、業務の性質上、その対象が行政機関の改善にとどまり、仕事内容が国民の皆さんに伝わりづらくもあります。
検査報告が国会に提出されても国民の皆さんやメディアが注目しない限り、国会議員の方々の関心は必ずしも高まりません。ですから社会を変える力になるために世論を味方につけて国民目線で認知度を上げるということを目標に掲げました。
5つ目の目標は業務改革です。特に重要なのは検査結果の報告の時期を年1回から分散化・平準化することです。実はこれには我々の調査スケジュールや審議プロセスを根本的に見直す必要があり、また検査を受ける各役所の方々にも協力をしていただかなければいけないため一大改革です。
しかし、分厚い報告書を年に一度しか出さないことで、国会議員の方々やメディア、そして国民の皆さんの目に留まらないで漏れてしまう案件がたくさんあります。これは本当にもったいないことです。
土居 あの分厚い検査報告をメディアが報じようにも、その日のニュースは限られているから、ごく一部しか報道してくれない。しかし、これを仮に年4回に分ければ、4回機会があって、国民の目に触れるチャンスが4回に増えるということですね。それが国民の認知度を上げることにも貢献するという改革ですね。
田中 実は記者へのレクチャーをしたときにメディアが最も関心を示してくれたのは、この報告時期の分散化でした。その結果、与野党両方の議員の方からもポジティブな意見をいただいています。
土居 それはすばらしいですね。年1回の報告は会計年度の仕組み上やむを得ない部分もあります。しかし、会計検査はその予算のサイクルから多少独立してもいいと私も思います。
田中 実際に臨時国会が秋にあったとしても、常会は1月からで、決算の審議は4月頃になることが多いのでかなり間が空きます。ここはもう少し発表の仕方を工夫して、国会の記憶に残るような形で出していきたいと思っています。
土居 最後に新型コロナ対策予算の使われ方を今後に活かすための教訓として、会計検査院長として何かお考えになっていることがあれば、ぜひお聞かせください。
このインタビューは2024年7月に会計検査院で行われた。クレジットのない写真はすべて河内彩・撮影
田中 4点ほど、挙げたいと思います。第一に、新型コロナ対策の教訓として、スピードとコストの問題が大きかったと感じています1人10万円支給された特別定額給付金の支出額は、決算で見ると12兆7700億円となり、その給付に実に1000億円程度のコストがかかったと言われています。
日本は紙ベースの作業が多く、給付に数カ月を要しましたが、アメリカではソーシャルセキュリティナンバーを活用して、わずか1週間ほどで全額配布されました。この給付スピードの違いがコストに大きく反映されています。
第二に、行政の体制問題です。先ほど述べた、委託や再委託といった行政の体制の問題も浮き彫りになりましたが、透明性の問題とも密接に関連しています。また、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の例でも、国と地方の間などでの情報伝達の齟齬が発生したなど、情報伝達の難しさも大きな課題でした。
第三に、事後検証の問題です。いわゆるゼロゼロ融資(日本政策金融公庫等が実施した新型コロナ特別貸付等)では早急な要件緩和の結果、後の管理が難しく、事後検証も難しくなるという問題がありました。
第四に、国民の皆様に決算に対して関心を持っていただくことです。新型コロナ対策にこれだけの巨額のお金が投じられたことで、「何に使われたのか」という国民からの声が大きかったと思います。
これまでは予算の議論が多かったのですが、今後は決算に対しても関心を持っていただきたい。実際にその機運が高まっていると思います。そのためにも事後検証が大切で、それができるための検討が必要だと思っています。
土居 今回の『アステイオン』の特集は「コロナ対策の事後検証」がテーマです。事後検証の難しさはまさにご指摘の通りです。日本では財政だけでなく、いろいろな面で事後検証は難しい。
もしかすると、日本の組織構造には「事後検証されることを前提に行動しよう」という発想があまりなく、むしろ「できれば事後検証されず、後から何となくよかったねと言われればいい」という風潮が官民問わず多く見受けられます。
欧米のように政権交代が起きれば、政権を失うと次の与党に事後検証されるという緊張感があるのですが、特に日本の場合は、政権交代がないので、行政の中での事後検証を求めるような牽制力が働きにくいこともあります。これは今後の日本の課題でもありますね。
田中 そうですね。今、会計検査院のホームページに新型コロナ対策の検査結果をまとめた「コロナ特設サイト(注5)」を設けています。
すべてはカバーできていませんが、我々がこの3年間、コロナ関係で調べてきた検査結果を一覧できるようにしています。これが1つのきっかけになり、さまざまなところで事後検証を行なっていただければと思います。
土居 今日は貴重なお話をうかがえました。本当にどうもありがとうございました。
【注】
(5) 新型コロナウイルス感染症対策関係経費等に関する検査結果(特設サイト)
田中弥生(Yayoi Tanaka)
1960年生まれ。2002年大阪大学大学院国際公共政策研究科で博士号取得。笹川平和財団研究員、国際協力銀行プロジェクト開発部参事役、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構教授などを経て、2019年9月に会計検査院検査官、2024年1月に会計検査院長に就任。専門は非営利組織論、評価論。著書に『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』(集英社)、『NPOと社会をつなぐ──NPOを変える評価とインターメディアリ』(東京大学出版会)など。
土居丈朗(Takero Doi)
慶應義塾大学経済学部教授、アステイオン編集委員。1970 年生まれ。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、現職。専門は財政学、経済政策論など。著書に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学(第2版)』 (日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)、『平成の経済政策はどう決められたか』(中央公論新社)などがある。
『アステイオン』101号
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
CCCメディアハウス[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)