木村正人
<毎朝20万人以上の子どもに無償の学校給食を提供する慈善団体と、フィナンシャル・タイムズ紙が設立した慈善団体>
[ロンドン発]英紙フィナンシャル・タイムズは12月2日付社説で「子どもたちの人生のチャンスを広げるために重要な2つのこと」と題し、無償の学校給食と金融リテラシーの向上に取り組む慈善団体への支援を呼びかけている。
子どもたちがお腹をすかして学校で学べないようなことがないよう、慈善団体「マジック・ブレックファスト」は各自治体と協力してイングランドやスコットランドの小・中等学校の子どもたち20万人以上に毎朝、無償の朝食を提供している。
最大20品目からなる「マジック・メニュー」は子どもたちに多様な食品と栄養素の選択肢を与えている。学校での朝食は子どもたちの学習、メンタルヘルス、社会的スキルをサポートする上で大きな役割を果たすことがさまざまな調査で実証されている。
英国で無償の学校給食を提供されるのは親が特定の福祉手当てを受ける子どもたちに限られている。今年1月時点で210万人の子どもたちが無償の学校給食を提供されている。コロナ危機の後遺症や福祉制度の変更で無償の学校給食を提供される子どもたちの割合は激増している。
イングランド全土の小学校最大750校で無償の朝食を提供
マジック・ブレックファストは「朝食は子どもたちに不可欠と位置づけ、すべての子どもが朝食を食べられるよう政府は行動せよ」と訴える。英国初の女性財務相レイチェル・リーブス氏は教育相エレン・ウィルキンソン(1891~1947年)のレガシー(偉業)を称える。
エレンは大戦時連立政権の44年、教育法施行の責任者として初めてすべての子どもたちが無償で中等教育を受けられるようにした。学校に通うすべての子どもたちに栄養価の高い給食を無償で提供することも約束した。45年のクレメント・アトリー労働党政権では教育相を務めた。
4歳未満の子どもがいる世帯の24%が「食料の貧困」に陥る
エレンは47年に急逝し、無償の学校給食は長続きしなかった。エレンの遺志を受け、スターマー労働党政権はイングランドの小学校750校で無償の朝食を提供することを約束し、来年度予算に3300万ポンド以上を計上した。しかし学校側の準備が整わず26年4月まで延期された。
英シンクタンク「教育政策研究所」の報告書によると、今年1月時点で4歳未満の子どもがいる世帯の24%が「食料の貧困」に陥っていた。年長の子どもがいる世帯では19%だった。「食料の貧困」は子どもの教育にも悪影響を及ぼし、認知発達や数学、語彙力の低下と関係していた。
一方、金融リテラシーの向上に取り組む慈善団体「金融リテラシーとインクルージョン・キャンペーン」(FLIC)は21年、フィナンシャル・タイムズ紙によって設立された。その金融カリキュラムは約500の中学校で教えられている。
若年成人の61%は学校で金融教育を受けた記憶がない
スマートフォンによる金融商品へのアクセスは飛躍的に容易になった。例えば英フィンテック「Revolut(レボリュート)」の金融アプリ。利子がつく上、海外送金も便利で、米国株式、金やビットコインなどの暗号通貨も簡単に取引できる。
金融商品の仕組みはますます複雑になるのに、若年成人の61%は学校で金融教育を受けた記憶がない。金融リテラシーがあるとみなされたのは41%。金融リテラシーを身につけるには11~18歳の若者に最低でも30時間の金融教育が必要という。
FLICは金融教育のソーシャルメディア用動画を使って200万人以上の若者を支援している。イタリアのテレビアニメとのコラボレーション、インドの慈善団体と計画している大規模な金融教育プログラムなど国際的な金融リテラシー向上の取り組みが始まっている。
金融知識は人生に不可欠なライフスキルだ。
金融リテラシーのない若者はクレジットカードの使いすぎや無理な借金で大損をするかもしれない。「金融リテラシーの備わった若者は建設的な投資や起業で成功し、社会に利益をもたらす可能性が高い」とフィナンシャル・タイムズ紙は強調する。
<毎朝20万人以上の子どもに無償の学校給食を提供する慈善団体と、フィナンシャル・タイムズ紙が設立した慈善団体>
[ロンドン発]英紙フィナンシャル・タイムズは12月2日付社説で「子どもたちの人生のチャンスを広げるために重要な2つのこと」と題し、無償の学校給食と金融リテラシーの向上に取り組む慈善団体への支援を呼びかけている。
子どもたちがお腹をすかして学校で学べないようなことがないよう、慈善団体「マジック・ブレックファスト」は各自治体と協力してイングランドやスコットランドの小・中等学校の子どもたち20万人以上に毎朝、無償の朝食を提供している。
最大20品目からなる「マジック・メニュー」は子どもたちに多様な食品と栄養素の選択肢を与えている。学校での朝食は子どもたちの学習、メンタルヘルス、社会的スキルをサポートする上で大きな役割を果たすことがさまざまな調査で実証されている。
英国で無償の学校給食を提供されるのは親が特定の福祉手当てを受ける子どもたちに限られている。今年1月時点で210万人の子どもたちが無償の学校給食を提供されている。コロナ危機の後遺症や福祉制度の変更で無償の学校給食を提供される子どもたちの割合は激増している。
イングランド全土の小学校最大750校で無償の朝食を提供
マジック・ブレックファストは「朝食は子どもたちに不可欠と位置づけ、すべての子どもが朝食を食べられるよう政府は行動せよ」と訴える。英国初の女性財務相レイチェル・リーブス氏は教育相エレン・ウィルキンソン(1891~1947年)のレガシー(偉業)を称える。
エレンは大戦時連立政権の44年、教育法施行の責任者として初めてすべての子どもたちが無償で中等教育を受けられるようにした。学校に通うすべての子どもたちに栄養価の高い給食を無償で提供することも約束した。45年のクレメント・アトリー労働党政権では教育相を務めた。
4歳未満の子どもがいる世帯の24%が「食料の貧困」に陥る
エレンは47年に急逝し、無償の学校給食は長続きしなかった。エレンの遺志を受け、スターマー労働党政権はイングランドの小学校750校で無償の朝食を提供することを約束し、来年度予算に3300万ポンド以上を計上した。しかし学校側の準備が整わず26年4月まで延期された。
英シンクタンク「教育政策研究所」の報告書によると、今年1月時点で4歳未満の子どもがいる世帯の24%が「食料の貧困」に陥っていた。年長の子どもがいる世帯では19%だった。「食料の貧困」は子どもの教育にも悪影響を及ぼし、認知発達や数学、語彙力の低下と関係していた。
一方、金融リテラシーの向上に取り組む慈善団体「金融リテラシーとインクルージョン・キャンペーン」(FLIC)は21年、フィナンシャル・タイムズ紙によって設立された。その金融カリキュラムは約500の中学校で教えられている。
若年成人の61%は学校で金融教育を受けた記憶がない
スマートフォンによる金融商品へのアクセスは飛躍的に容易になった。例えば英フィンテック「Revolut(レボリュート)」の金融アプリ。利子がつく上、海外送金も便利で、米国株式、金やビットコインなどの暗号通貨も簡単に取引できる。
金融商品の仕組みはますます複雑になるのに、若年成人の61%は学校で金融教育を受けた記憶がない。金融リテラシーがあるとみなされたのは41%。金融リテラシーを身につけるには11~18歳の若者に最低でも30時間の金融教育が必要という。
FLICは金融教育のソーシャルメディア用動画を使って200万人以上の若者を支援している。イタリアのテレビアニメとのコラボレーション、インドの慈善団体と計画している大規模な金融教育プログラムなど国際的な金融リテラシー向上の取り組みが始まっている。
金融知識は人生に不可欠なライフスキルだ。
金融リテラシーのない若者はクレジットカードの使いすぎや無理な借金で大損をするかもしれない。「金融リテラシーの備わった若者は建設的な投資や起業で成功し、社会に利益をもたらす可能性が高い」とフィナンシャル・タイムズ紙は強調する。