ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<与党からも批判が出た戒厳令で、大統領弾劾圧力は強まるか>
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は3日午後10時過ぎに非常戒厳令を宣布したが、国会が解除要求を可決。ユン大統領は4日早朝に戒厳令の解除を発表した。韓国における戒厳令は1979年10月以降45年ぶりのことで、1987年の民主化以降、初の事態だった。大統領夫人のブランドバッグ収賄疑惑などで支持率が20%台に゙低迷するユン大統領に対して、断崖圧力がさらに加速することが予想される。韓国メディアYTN、連合ニュースなどが速報した。
ユン大統領は4日早朝、4時30分ごろ、龍山(ヨンサン)の大統領室で緊急の国民向け談話を行い、「少し前に国会の戒厳解除の要求があって、戒厳に投入された軍を撤退させた。すぐに閣議を通じて国会の要求を受け入れ、戒厳を解除するだろう」と話した。さらに、「ただ、閣議を召集したが、未明の関係でまだ議決定数が満たされなくて、でき次第、直ちに戒厳を解除する」と付け加えた。そして、「しかし、度重なる弾劾と立法壟断、予算壟断で国家機能を麻痺させる非道な行為は直ちに中止してくれることを国会に要請する」と、あくまで戒厳令の問題は野党が支配する国会にあることを強調した。
突然の戒厳令発表からひと晩での解除、その流れを追う
3日夜、戒厳令を宣布した国民向け談話の中でユン大統領は「共に民主党による立法の独裁は予算弾劾までも躊躇しなかった。これは自由大韓民国の憲政秩序を踏みにじり、憲法と法によって築かれた正当な国家機関を錯乱させるものとして内乱を画策した明白な反国家行為だ。今、我が国会は、犯罪者集団の巣窟になっており、立法独裁を通じて国家の司法ㆍ行政システムを麻痺させ、自由民主主義体制の転覆を企図している」と野党多数の国会を批判。「この非常戒厳令を通じて亡国の奈落の底に落ちている自由大韓民国を再建して守る。このため、私は亡国の元凶、反国家勢力を必ず一掃する。これは体制転覆を狙う反国家勢力のテロから国民の自由と安全、そして国家持続可能性を保障し、未来世代にきちんとした国を譲るため不可避な措置」と強調した。
談話発表後、ユン大統領はパク・アンス陸軍参謀総長を戒厳司令官に任名した。パク陸軍参謀総長は「戒厳司令部の布告令(第1号)」を発表し、「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁ずる。と発表。さらに、「布告令違反者に対しては、大韓民国、戒厳法第9条(戒厳司令官特別措置権)によって令状なしに逮捕、拘禁、家宅捜索をすることができ、戒厳法第14条(罰則)によって処断する」と付け加えた。
与党代表も戒厳令を批判
この日の大統領談話はまったく予定になかったもので、大統領室のスタッフの中には通常通りに退勤してから、緊急で何か発表が行われるということで大統領府に戻った者も少なからずいたという。
それだけに政界からも批判の声があがった。野党で国会では最大勢力の共に民主党代表の李在明(イ・ジェミョン)は、「ユン大統領が何の理由もなく非常戒厳を宣布した。もうすぐ、戦車と装甲車、銃や刀を持った軍人たちがこの国を支配するようになる」と戒厳令を批判。さらに「国民の皆様が守ってくれなければならない。我々の力だけでは不足する。国の主人、国民が出てくれなければならないのだ」と述べた。
また、戒厳令を批判する声は野党だけではなく、与党の国民の力からもあがった。国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は、ユン大統領が非常戒厳令を発令したことについて「要件にもそぐわない違法な違憲的な、非常戒厳宣言だ。必ず阻止したい。国民は安心してくれてほしい。必ず私たちが違法・違憲的な非常戒厳を妨げる」と表明した。
国会に戒厳軍が突入
こうしたなか、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は午後11時に「すべての国会議員は今すぐ国会本会議場に集まってほしい」と発表。戒厳令を解除できる事実上唯一の方法である国会での採決を行うためだ。戒厳の解除を要求するための要件である「在籍議員過半数の賛成」のためには、最低150人の国会議員が早急に本会議場に集まらなければならなかった。
国民の力のチュ・ギョンホ院内代表と共に民主党のパク・チャンデ院内代表も一斉に議員らに「国会に集合」と呼びかけた。
だが、こうした国会議員たちの動きに対して、軍は国会の上空にヘリコプター数機を送り、武装した空挺部隊の兵士たちが、国会本庁舎へ向けて進入していた。さらに警察も国会議事堂の通用口を閉鎖した状態で、多くの与野党議員は塀を越えて本庁舎内に進入したという。
こうして国会内に姿を見せた国会議員は4日0時頃は約60人だったが、非常戒厳令の解除要求決議案が本会議に上程されて表決に入った1時ごろには議決数を超える190人に増えた。戒厳軍が国会本庁のガラス窓まで破って建物に進入した状況で、議員たちはウ議長に「早く上程し採決するべきだ」と抗議したものの、ウ議長は「国会が定めた手続きに誤りがないように進行しなければならない」と、10分間、案件上程を待っていた。
結局、表決に参加した議員190人全員賛成で戒厳解除要求案が戒厳令の宣言から155分後に可決された。
戒厳軍は戒厳解除要求案が可決されると、国会から撤退したが、与野党の議員たちは「ユン大統領が戒厳令の解除を公式宣言するまで待とう」と、国会にとどまっていたという。
ユン大統領が戒厳を解除、野党は弾劾案を国会提出へ
ユン大統領は4日4時30分ごろ、龍山(ヨンサン)の大統領室から国民向け談話を行い、戒厳令の解除を発表した。直後に閣議が開かれて韓悳洙(ハン・ドクス)首相は非常戒厳令解除案を議決し、6時間あまりにわたった戒厳令は解除された。
一方、今回の事態を受けて野党は、非常戒厳解除だけではすまないと即時の弾劾手続き突入まで示唆した。共に民主党と祖国革新党、進歩党などの議員40人余りが集まって先月発足した「ユン・ソンニョル弾劾国会議員連帯」は4日、国会で記者会見をして「ユンソクヨルを弾劾しよう」と主張した。
さらにユン大統領を守るべき大統領室からも反旗があがった。4日午前、大統領室首席秘書官以上の参謀陣が一括辞意を表明したのだ。大統領室は同日午前、取材記者団に「大統領室室長・首席秘書官が一括して辞意を表明した」と明らかにした。
国会内に窓を破って突入する戒厳軍
YTN news / YouTube
国会前で戒厳令撤回を求める市民たち
YTN news / YouTube
戒厳令の解除を発表したユン大統領
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<与党からも批判が出た戒厳令で、大統領弾劾圧力は強まるか>
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は3日午後10時過ぎに非常戒厳令を宣布したが、国会が解除要求を可決。ユン大統領は4日早朝に戒厳令の解除を発表した。韓国における戒厳令は1979年10月以降45年ぶりのことで、1987年の民主化以降、初の事態だった。大統領夫人のブランドバッグ収賄疑惑などで支持率が20%台に゙低迷するユン大統領に対して、断崖圧力がさらに加速することが予想される。韓国メディアYTN、連合ニュースなどが速報した。
ユン大統領は4日早朝、4時30分ごろ、龍山(ヨンサン)の大統領室で緊急の国民向け談話を行い、「少し前に国会の戒厳解除の要求があって、戒厳に投入された軍を撤退させた。すぐに閣議を通じて国会の要求を受け入れ、戒厳を解除するだろう」と話した。さらに、「ただ、閣議を召集したが、未明の関係でまだ議決定数が満たされなくて、でき次第、直ちに戒厳を解除する」と付け加えた。そして、「しかし、度重なる弾劾と立法壟断、予算壟断で国家機能を麻痺させる非道な行為は直ちに中止してくれることを国会に要請する」と、あくまで戒厳令の問題は野党が支配する国会にあることを強調した。
突然の戒厳令発表からひと晩での解除、その流れを追う
3日夜、戒厳令を宣布した国民向け談話の中でユン大統領は「共に民主党による立法の独裁は予算弾劾までも躊躇しなかった。これは自由大韓民国の憲政秩序を踏みにじり、憲法と法によって築かれた正当な国家機関を錯乱させるものとして内乱を画策した明白な反国家行為だ。今、我が国会は、犯罪者集団の巣窟になっており、立法独裁を通じて国家の司法ㆍ行政システムを麻痺させ、自由民主主義体制の転覆を企図している」と野党多数の国会を批判。「この非常戒厳令を通じて亡国の奈落の底に落ちている自由大韓民国を再建して守る。このため、私は亡国の元凶、反国家勢力を必ず一掃する。これは体制転覆を狙う反国家勢力のテロから国民の自由と安全、そして国家持続可能性を保障し、未来世代にきちんとした国を譲るため不可避な措置」と強調した。
談話発表後、ユン大統領はパク・アンス陸軍参謀総長を戒厳司令官に任名した。パク陸軍参謀総長は「戒厳司令部の布告令(第1号)」を発表し、「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁ずる。と発表。さらに、「布告令違反者に対しては、大韓民国、戒厳法第9条(戒厳司令官特別措置権)によって令状なしに逮捕、拘禁、家宅捜索をすることができ、戒厳法第14条(罰則)によって処断する」と付け加えた。
与党代表も戒厳令を批判
この日の大統領談話はまったく予定になかったもので、大統領室のスタッフの中には通常通りに退勤してから、緊急で何か発表が行われるということで大統領府に戻った者も少なからずいたという。
それだけに政界からも批判の声があがった。野党で国会では最大勢力の共に民主党代表の李在明(イ・ジェミョン)は、「ユン大統領が何の理由もなく非常戒厳を宣布した。もうすぐ、戦車と装甲車、銃や刀を持った軍人たちがこの国を支配するようになる」と戒厳令を批判。さらに「国民の皆様が守ってくれなければならない。我々の力だけでは不足する。国の主人、国民が出てくれなければならないのだ」と述べた。
また、戒厳令を批判する声は野党だけではなく、与党の国民の力からもあがった。国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は、ユン大統領が非常戒厳令を発令したことについて「要件にもそぐわない違法な違憲的な、非常戒厳宣言だ。必ず阻止したい。国民は安心してくれてほしい。必ず私たちが違法・違憲的な非常戒厳を妨げる」と表明した。
国会に戒厳軍が突入
こうしたなか、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は午後11時に「すべての国会議員は今すぐ国会本会議場に集まってほしい」と発表。戒厳令を解除できる事実上唯一の方法である国会での採決を行うためだ。戒厳の解除を要求するための要件である「在籍議員過半数の賛成」のためには、最低150人の国会議員が早急に本会議場に集まらなければならなかった。
国民の力のチュ・ギョンホ院内代表と共に民主党のパク・チャンデ院内代表も一斉に議員らに「国会に集合」と呼びかけた。
だが、こうした国会議員たちの動きに対して、軍は国会の上空にヘリコプター数機を送り、武装した空挺部隊の兵士たちが、国会本庁舎へ向けて進入していた。さらに警察も国会議事堂の通用口を閉鎖した状態で、多くの与野党議員は塀を越えて本庁舎内に進入したという。
こうして国会内に姿を見せた国会議員は4日0時頃は約60人だったが、非常戒厳令の解除要求決議案が本会議に上程されて表決に入った1時ごろには議決数を超える190人に増えた。戒厳軍が国会本庁のガラス窓まで破って建物に進入した状況で、議員たちはウ議長に「早く上程し採決するべきだ」と抗議したものの、ウ議長は「国会が定めた手続きに誤りがないように進行しなければならない」と、10分間、案件上程を待っていた。
結局、表決に参加した議員190人全員賛成で戒厳解除要求案が戒厳令の宣言から155分後に可決された。
戒厳軍は戒厳解除要求案が可決されると、国会から撤退したが、与野党の議員たちは「ユン大統領が戒厳令の解除を公式宣言するまで待とう」と、国会にとどまっていたという。
ユン大統領が戒厳を解除、野党は弾劾案を国会提出へ
ユン大統領は4日4時30分ごろ、龍山(ヨンサン)の大統領室から国民向け談話を行い、戒厳令の解除を発表した。直後に閣議が開かれて韓悳洙(ハン・ドクス)首相は非常戒厳令解除案を議決し、6時間あまりにわたった戒厳令は解除された。
一方、今回の事態を受けて野党は、非常戒厳解除だけではすまないと即時の弾劾手続き突入まで示唆した。共に民主党と祖国革新党、進歩党などの議員40人余りが集まって先月発足した「ユン・ソンニョル弾劾国会議員連帯」は4日、国会で記者会見をして「ユンソクヨルを弾劾しよう」と主張した。
さらにユン大統領を守るべき大統領室からも反旗があがった。4日午前、大統領室首席秘書官以上の参謀陣が一括辞意を表明したのだ。大統領室は同日午前、取材記者団に「大統領室室長・首席秘書官が一括して辞意を表明した」と明らかにした。
国会内に窓を破って突入する戒厳軍
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国会前で戒厳令撤回を求める市民たち
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戒厳令の解除を発表したユン大統領
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