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国民を本当に救えるのは「補助金」でも「減税」でもない...本当に議論すべき大切なテーマとは?

ニューズウィーク日本版 2024年12月19日 17時31分

加谷珪一
<ガソリン補助金の減額が決まったが、際限なく税金をつぎ込み続けることが不可能なのは当然。結局は物価上昇を超える賃上げを実現するしか生活を向上する術はない>

3年にわたって続けられてきた政府によるガソリン代補助の段階的縮小が決まった。もともとガソリン代補助は暫定的措置として位置付けられており、永久に続けることは難しかった。

一方でインフレが収まる気配はなく、賃金も上がらない状況では、国民の生活は良くならない。政府・与党は国民民主党の要求を受け入れ、ガソリン税の減税に合意しており、今後は減税という形での支援が続くことになる。

インフレによるガソリン価格の上昇に伴って国民生活が打撃を受けたことから、政府はガソリンの小売価格を175円程度に維持する補助金の投入を続けてきた。だが、政府は11月22日に閣議決定した総合経済対策おいて、「出口に向けて段階的に対応する」として、補助金の縮小を決めた。

「出口に向けて」「段階的に」という文言が入っていることを考えると、近い将来、この施策については廃止する方向性を含んだものと言えるだろう。

ガソリン代の補助に対しては、年間2兆円以上もの税金が投入されており、政府内部では開始当初から、いつ撤退するのかという議論が繰り返し行われてきた。だが、物価上昇に歯止めがかからないことから、ずるずると支援策を継続してきたというのが現実である。

インフレが収まらないなかで必要な根本的な議論

一方で政府の財政は火の車となっており、来年以降、防衛費の倍増や子育て支援の拡充、地方創生交付金の倍増など10兆円近くの支出増が見込まれる。これらの財源を国債に頼ってしまうと、経済学の常識としてインフレが加速し、国民生活がさらに厳しくなるのは目に見えている。

これに加えて、多額の予算を必要とするガソリン代補助を継続するのは難しいだろう。

一方、国民民主党は、ガソリン税の上乗せ分である25.1円部分を減税する「トリガー条項」の発動を要求、与党はこれを受け入れ、暫定税率の廃止を決めた。ただ、減税が行われても一定の財源が必要であることに変わりはなく、結局のところインフレ下においては、物価上昇を超える賃上げを実現できない限り国民生活は向上しない。

政治である以上、目先の支援策に議論が集中するのは致し方ない面もある。だが、インフレは簡単に収まりそうもないという現実を考えた場合、原理原則に戻って、どうすれば経済を成長させ、賃金を上げられるのかについて根本的な議論を行う必要がある。

経済学の理論上、中長期的な経済成長を担保するのは資本投入と労働投入、生産性の3要素しかない。資本については十分な余力がある一方、労働投入については、年収の壁問題の解決などによって、ある程度までなら就労者数を増やすことが可能だが、それにも限度がある。

少数与党も野党も責任政党としての役割が

最も経済成長に寄与するのは企業の生産性向上であることは明らかであり、大企業を中心とした内部留保の処理も含め、いかに経営改革を進めていくのかという議論を行わなければ、持続的な経済成長を実現するのは難しい。

今国会は自民党が少数与党に転落したことで、全ての政党が責任政党としての役割を試されている。経済政策についても自民党側が責任ある政策を提示すべきなのはもちろんだが、同時に野党側も要求するだけでは責任を果たしているとはいえない。まさに日本の政治が試されていると言えるだろう。



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