ハティ・ウィルモス
<大腸がんはアメリカで4番目に多いがんで、特に若年層で増加している。「レゾリューション・メディシン(resolution medicine)」について>
超加工食品は体内に炎症を引き起こし、大腸がんのリスクを高める可能性があることを研究者らが最新研究で指摘。この研究は「がん治療に革命をもたらす可能性がある」と考えられている。
がん患者の腫瘍を分析した研究者らは、炎症を引き起こす食品と大腸の腫瘍の成長に潜在的な関連性を発見した。サウスフロリダ大学(USF)の外科学の教授で、タンパ総合病院(TGH)がん研究所トランスレーショナル・リサーチ・イノベーション部門の副センター長でもあるティモシー・イエートマン博士は次のように述べる。
「不健康な食事を摂取している患者の体内で炎症が増加していることは広く知られていますが、大腸がんでもこの炎症が見られています。がんは治癒しない慢性の傷のようなものです。毎日、超加工食品を摂取していると、炎症と免疫システムの抑制によって、その傷の治癒力が低下し、最終的にがんの成長を許してしまうのです」
「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)」によると、結腸癌と直腸がんの双方を含む大腸がんはアメリカで4番目に多いがんであり、それに関連する死因としても4番目に多い。特に若年層で増加しており、1990年代初頭からほぼ倍増となっている。
今回のサウスフロリダ大学とタンパ総合病院の研究では、食事由来の炎症がその主な原因の1つである可能性が示唆された。
タンパ総合病院で大腸がん患者から採取された162個の腫瘍サンプルを除去、冷凍、分析し、炎症の兆候を調査した。炎症は免疫システムにとって重要な機能ではあるが、炎症を引き起こしやすい食事を摂る人々の中には、炎症が完全におさまらず、弱い炎症が体内で慢性的に継続するケースもあった。
また、腫瘍の内部に炎症を促進する分子が過剰に存在し、治癒を促進する分子が不足していることも観察された。したがって、体内での炎症が腫瘍の発生を引き起こし、さらに炎症を引き起こしやすい食品を摂取することで悪化する可能性があると結論づけている。
「超加工食品は、一般的に大豆油、ひまわり油、菜種油(キャノーラ油)などの低コストの種子油や糖質や塩分の多い成分を多用しており、これらが炎症反応を引き起こします」とイエートマン博士は本誌に語る。
超加工食品は工業生産されたもので、家庭料理では利用できない化学合成添加物を含む食品と定義されるが、イエートマン博士は次のように述べる。
「スーパーで販売されているパンで、大豆油が主な原料ではないものを見つけるのは非常に困難です。パン、シリアル、ドーナツ、ケーキ、クッキー、チップス、サラダドレッシング、マヨネーズにも当てはまります。また、卵、小麦粉、砂糖、塩以外にパンに含まれている、認識できない成分の数も多く、それには保存料、防カビ剤、着色料などが挙げられます」
さらに本研究が、将来的ながん治療の道を開く可能性があると研究者らは結論づけている。それは「レゾリューション・メディシン(resolution medicine)」と呼ばれる新しい治療法で、炎症を引き起こしやすい食べ物から炎症を抑える食べ物に変えることで、体の治癒メカニズムを回復させるというものだ。
「これはがん治療に革命をもたらす可能性があり、薬物療法だけでなく自然治癒プロセスを活用することを目指しています。慢性炎症に対処し、病気を発症する前に予防するための重要なステップです」
イエートマン博士は食事の選択肢を見直し、食品ラベルを読み、炎症を引き起こす食品を避けることを勧める。
「食事のピラミッド」を再考し、より多くの野菜、より少ない穀物、より多くの魚、そしてグラスフェッド(牧草を食べながら自然環境の中で放牧された)で飼育された肉を摂取すべきであるとし、抗炎症作用があることで知られるオメガ3脂肪酸を優先的に食事に取り入れるよう推奨する。
本研究はアメリカ国立衛生研究所(NIH)の助成を受けている。
【参考文献】
Soundararajan, R., Maurin, M. M., Rodriguez-Silva, J., Upadhyay, G., Alden, A. J., Gowda, S. G. B., Schell, M. J., Yang, M., Levine, N. J., Gowda, D., Sundaraswamy, P. M., Hui, S. P., Pflieger, L., Wang, H., Marcet, J., Martinez, C., Bennett, R. D., Chudzinski, A., Karachristos, A., Nywening, T. M., Cavallaro, P. M., Anderson, M. L., Coffey, R. J., Nebozhyn, M. V., Loboda, A., Coppola, D., Pledger, W. J., Halade, G., Yeatman, T. J. (2024). Integration of lipidomics with targeted, single cell, and spatial transcriptomics defines an unresolved pro-inflammatory state in colon cancer, Gut.
<大腸がんはアメリカで4番目に多いがんで、特に若年層で増加している。「レゾリューション・メディシン(resolution medicine)」について>
超加工食品は体内に炎症を引き起こし、大腸がんのリスクを高める可能性があることを研究者らが最新研究で指摘。この研究は「がん治療に革命をもたらす可能性がある」と考えられている。
がん患者の腫瘍を分析した研究者らは、炎症を引き起こす食品と大腸の腫瘍の成長に潜在的な関連性を発見した。サウスフロリダ大学(USF)の外科学の教授で、タンパ総合病院(TGH)がん研究所トランスレーショナル・リサーチ・イノベーション部門の副センター長でもあるティモシー・イエートマン博士は次のように述べる。
「不健康な食事を摂取している患者の体内で炎症が増加していることは広く知られていますが、大腸がんでもこの炎症が見られています。がんは治癒しない慢性の傷のようなものです。毎日、超加工食品を摂取していると、炎症と免疫システムの抑制によって、その傷の治癒力が低下し、最終的にがんの成長を許してしまうのです」
「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)」によると、結腸癌と直腸がんの双方を含む大腸がんはアメリカで4番目に多いがんであり、それに関連する死因としても4番目に多い。特に若年層で増加しており、1990年代初頭からほぼ倍増となっている。
今回のサウスフロリダ大学とタンパ総合病院の研究では、食事由来の炎症がその主な原因の1つである可能性が示唆された。
タンパ総合病院で大腸がん患者から採取された162個の腫瘍サンプルを除去、冷凍、分析し、炎症の兆候を調査した。炎症は免疫システムにとって重要な機能ではあるが、炎症を引き起こしやすい食事を摂る人々の中には、炎症が完全におさまらず、弱い炎症が体内で慢性的に継続するケースもあった。
また、腫瘍の内部に炎症を促進する分子が過剰に存在し、治癒を促進する分子が不足していることも観察された。したがって、体内での炎症が腫瘍の発生を引き起こし、さらに炎症を引き起こしやすい食品を摂取することで悪化する可能性があると結論づけている。
「超加工食品は、一般的に大豆油、ひまわり油、菜種油(キャノーラ油)などの低コストの種子油や糖質や塩分の多い成分を多用しており、これらが炎症反応を引き起こします」とイエートマン博士は本誌に語る。
超加工食品は工業生産されたもので、家庭料理では利用できない化学合成添加物を含む食品と定義されるが、イエートマン博士は次のように述べる。
「スーパーで販売されているパンで、大豆油が主な原料ではないものを見つけるのは非常に困難です。パン、シリアル、ドーナツ、ケーキ、クッキー、チップス、サラダドレッシング、マヨネーズにも当てはまります。また、卵、小麦粉、砂糖、塩以外にパンに含まれている、認識できない成分の数も多く、それには保存料、防カビ剤、着色料などが挙げられます」
さらに本研究が、将来的ながん治療の道を開く可能性があると研究者らは結論づけている。それは「レゾリューション・メディシン(resolution medicine)」と呼ばれる新しい治療法で、炎症を引き起こしやすい食べ物から炎症を抑える食べ物に変えることで、体の治癒メカニズムを回復させるというものだ。
「これはがん治療に革命をもたらす可能性があり、薬物療法だけでなく自然治癒プロセスを活用することを目指しています。慢性炎症に対処し、病気を発症する前に予防するための重要なステップです」
イエートマン博士は食事の選択肢を見直し、食品ラベルを読み、炎症を引き起こす食品を避けることを勧める。
「食事のピラミッド」を再考し、より多くの野菜、より少ない穀物、より多くの魚、そしてグラスフェッド(牧草を食べながら自然環境の中で放牧された)で飼育された肉を摂取すべきであるとし、抗炎症作用があることで知られるオメガ3脂肪酸を優先的に食事に取り入れるよう推奨する。
本研究はアメリカ国立衛生研究所(NIH)の助成を受けている。
【参考文献】
Soundararajan, R., Maurin, M. M., Rodriguez-Silva, J., Upadhyay, G., Alden, A. J., Gowda, S. G. B., Schell, M. J., Yang, M., Levine, N. J., Gowda, D., Sundaraswamy, P. M., Hui, S. P., Pflieger, L., Wang, H., Marcet, J., Martinez, C., Bennett, R. D., Chudzinski, A., Karachristos, A., Nywening, T. M., Cavallaro, P. M., Anderson, M. L., Coffey, R. J., Nebozhyn, M. V., Loboda, A., Coppola, D., Pledger, W. J., Halade, G., Yeatman, T. J. (2024). Integration of lipidomics with targeted, single cell, and spatial transcriptomics defines an unresolved pro-inflammatory state in colon cancer, Gut.