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イーロン・マスクが副大統領に次ぐアメリカで3番目の権力者に?──共和党内に待望論

ニューズウィーク日本版 2024年12月24日 16時30分

ピーター・エイケン
<X投稿による横槍ひとつで可決寸前の予算案を葬るという権勢を奮ってみせたマスク。マスクのせいで面目を失った下院議長をクビにしてマスクを代わりに、の声が>

イーロン・マスクを新たな下院議長に、という驚きの声が共和党内に挙がっている。大統領に何かあれば、副大統領に次ぐ継承権を持つ地位だ。

天才実業家で大富豪とはいえ、政治的には素人。選挙で選ばれたわけでもない。ドナルド・トランプ次期大統領を応援して気に入られ、目下、最側近の地位を謳歌しているだけだ。

いまの下院議長のマイク・ジョンソンは、民主党と合意したつなぎ予算の延長法案に、マスクがX(旧ツイッター)で「これ以上の無駄遣いを見たことがあるか?」と横槍を入れたことで面目を失った。

トランプから政府のムダ削減を担う「政府効率化省(DOGE)」のトップに指名されているマスクは、こんな「犯罪的な」法案は「可決されるべきではない」と主張。法案は廃案となり、一時は政府機関閉鎖の危機にまで追い込まれた。

この「活躍」のおかげで、「トランプ大統領ではなくマスク大統領だ」とか、「マスクはまるでアメリカの『首相』のように振る舞っている」などとその権勢が大きな話題になっている。

マスクは米国生まれの米国人ではないため、米大統領の継承権を持つ役職に就くことはできないと指摘する声もある。とはいえアメリカでは過去にも、外国生まれの人物が大統領の継承権を持つ役職に就いたことがある。

ヘンリー・キッシンジャーとマデレン・オルブライトは大統領の継承順位4位の米国務長官を務めたが、2人ともヨーロッパ出身だった。マスクについても、単に大統領の継承権者から外れれば、下院議長になること自体は問題ないとも考えられている。

下院議長を選ぶ権限を持っているのは米下院で、合衆国憲法には下院議長になる人物としての条件は一切定められていない。つまり下院で必要な票数を集めることができれば、選挙で選ばれた人物以外でも下院議長に選出することができるのだ。

マスクが優れた下院議長になるだろうという考えを最初に提唱したのは、共和党のランド・ポール上院議員(ケンタッキー州選出)だ。彼はXに次のように投稿した。

「下院議長は議会のメンバーである必要はない。イーロン・マスクを選べば、ワシントンの沼(政治的腐敗)はこれ以上ないほど混乱するだろう。考えてみて欲しい。不可能はない(それに集団的な既得権益、癒着した二大政党(いわゆる『ユニパーティー』)が混乱に陥るのを見る楽しみもできる)」

2016年の米大統領選で予備選中にバーニー・サンダース陣営の指揮を執っていた元オハイオ州上院議員(民主党)のニナ・ターナーは、Xでこう述べた。「世界で最も裕福な人物を下院議長に据えることこそ腐敗の極みだ。彼は本当のところ『沼』を一掃しようなんて考えていない。自分の『沼』を作りたいだけだ」

マスクの影響力が議会とトランプ政権でどのように発揮されるかは、まだわからない。

トランプとマスクはいずれも注目と権力を欲しがる強烈な個性の大富豪同士であるため、両者の間に緊張が生じる可能性は少なくないと専門家は指摘する。

同時に、マスク氏の莫大な富と、それを政治的な力として使う意思は、トランプと共和党に恩恵を与え、二人は良いコンビになる可能性もあるかもしれないが。



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