西田嘉孝
<パナソニック エレクトリックワークス社が発表した新コンセプトの製品群「Archi Design(アーキデザイン)」。2つのコンセプトと、その背景にあるパナソニックの思想を紐解く>
スイッチやコンセント、照明器具や分電盤といった電気設備資材(電設資材)は、言うまでもなく建築物に必要なものだ。とはいえ、それぞれが主張してしまうと、統一感のある空間デザインや設計は難しくなる。
実際に多くの建築設計やデザインのプロから聞かれるのが、「電気設備に機能は欲しいが、存在感や主張は要らない」という声。ブランド力を付け、売り上げを増やしたい電設資材メーカーにとっては、悩ましい注文かもしれない。
住宅からオフィスや店舗などの非住宅施設まで、幅広い市場や顧客に対し、さまざまな電設資材を提供するパナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)は、常にそうしたプロたちの声と向き合ってきた。
そして2024年11月に、「空間の価値を高める美しさ」と「環境への貢献」を追求した電気設備の製品群「Archi Design(アーキデザイン)」を本格始動。配線器具や照明器具など、建築に溶け込むデザインで統一されたすべての製品に通底するのが、電気設備を建築的な視点で考えてきたパナソニックの思想だ。
統一された世界観を生む、空間に溶け込むデザイン
「Archi Design」が目指すコンセプトの1つが「建築そのものになること」だ。
設備が主張するのではなく、建築の背景として溶け込むこと。そして、複数の電設資材のデザインをそろえ、統一感のある空間づくりを支援すること。このたび発表された「Archi Design」は、すでにいくつかの製品で採用されている同社のそうした思想をさらに押し広げる取り組みである。
製品カテゴリーを横断して目指すのは、建築に溶け込むよう視覚的なノイズを徹底的に排除したデザイン。ダウンライトなどの照明器具からコンセント・スイッチ類、配線ダクトから分電盤、インターホンから蓄電システムまで、形状や色合い、サイズや質感などに統一感を持たせることで、美しく心地いい空間創出の実現に貢献する。
オフィスの施工例。天井のライン照明や壁面にすっきりと収まったスイッチなどの配線器具が、美しいオフィス環境を実現する
住宅での施工例。奥壁の天井側には、壁面収納と並べて住宅分電盤を設置。他にも防水コンセントやスイッチなどが、必要な場所に配置されながら空間と馴染み調和する
また、「Archi Design」では施工のしやすさや自由度も重視される。例えば、2025年3月に発売となる「フレキシード」は、縦向けにも横向けにも設置できる業界最薄の住宅分電盤。開閉部分に工夫をこらすことで、天井や収納キャビネットなどにぴったりと隙間なく配置できる自由度の高さが魅力だ。
さらに今後は、製品カテゴリーによる取付穴径やサイズの統一が図られ、現在は商品ジャンルごとに異なっている取り付け方法の統一も検討される予定という。
照明器具やセンサー類など、天井に取り付けられる電設資材だけを見ても、現状では取り付けに必要となる穴の径はバラバラだ。施工する側からすると、さまざまな電気設備で径などの統一が図られれば、迷いのない商品選定や施工の効率化、ミスの防止といったメリットが享受できる。
住宅分電盤「フレキシード」。天井にぴったりと設置できる独自の設計に加え、モジュール設計によって部品の共通化を進め、部品点数を削減した
資源の削減や更新性の向上で、環境負荷を大きく低減
「Archi Design」が目指すもう1つのコンセプトが「環境配慮を重ねること」。根底にあるのは、調達から開発・製造、物流といったあらゆる段階で資源の効率化や循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を目指すサーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方だ。
そもそもパナソニックグループでは、2030年までに自社拠点(工場やビル)でのCO2排出量を実質ゼロとする目標を掲げ、創エネ・蓄エネ・省エネの最適制御を取り入れて、カーボンニュートラルを推進してきた。
そんな同社の思想が色濃く反映された「Arch Design」では、製品の小型化や部品点数の削減などによる使用材料の低減や輸送時のエネルギー削減、梱包や取扱説明書の資源削減といった多角的な視点から、環境に配慮した取り組みを重ねていく。
すでにコンパクトランプでは、従来製品に比べて器具の体積を75%削減。梱包では印字と印刷面積、印刷色を最適化することでインク量を大幅に削減できる見込みだという。同時に、取扱説明書や施工証明書の省資源化を推進し、紙の使用を最小限に。QRコードを用いることで、ただ紙の使用量を削減するだけでなく、利便性を高めていく。
スポットライトでは従来製品(左)に比べて62%の重量削減を実現。原材料や輸送エネルギーの削減につなげた
梱包の表示を見直し最適化を図ると同時に、取扱説明書などを電子化することで、インクや紙の使用量を大幅に削減
LED交換型コンパクトランプ対応照明器具では、スポットライト・ダウンライトの規格を共通化していく。互換性のある部品で容易にランプ交換や機能更新が行えるようになる
また、前述したような施工に必要な径などの統一化や、拡張性を持たせた各製品のモジュール化によって、将来的な技術革新などにも対応できるようになるという。技術の進歩や規格の変更によって製品や部品が大量に廃棄されることのない、環境に優しい社会の実現を目指していく。
地球と共生しながら、人々が心地よく暮らせる空間を実現するために。これからの建築に必要な電気設備とは何かを考え抜いた「Archi Design」。
パナソニックEW社では今後も、新コンセプトのもと新たな製品を市場へと投入予定。将来的にはグループ内の家電製品やさまざまなソリューションとの連携も期待できる、壮大な広がりを持つ取り組みだ。
「Archi Design」のコンセプトのもと、今後も定番製品が次々と発売される予定だ
<パナソニック エレクトリックワークス社が発表した新コンセプトの製品群「Archi Design(アーキデザイン)」。2つのコンセプトと、その背景にあるパナソニックの思想を紐解く>
スイッチやコンセント、照明器具や分電盤といった電気設備資材(電設資材)は、言うまでもなく建築物に必要なものだ。とはいえ、それぞれが主張してしまうと、統一感のある空間デザインや設計は難しくなる。
実際に多くの建築設計やデザインのプロから聞かれるのが、「電気設備に機能は欲しいが、存在感や主張は要らない」という声。ブランド力を付け、売り上げを増やしたい電設資材メーカーにとっては、悩ましい注文かもしれない。
住宅からオフィスや店舗などの非住宅施設まで、幅広い市場や顧客に対し、さまざまな電設資材を提供するパナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)は、常にそうしたプロたちの声と向き合ってきた。
そして2024年11月に、「空間の価値を高める美しさ」と「環境への貢献」を追求した電気設備の製品群「Archi Design(アーキデザイン)」を本格始動。配線器具や照明器具など、建築に溶け込むデザインで統一されたすべての製品に通底するのが、電気設備を建築的な視点で考えてきたパナソニックの思想だ。
統一された世界観を生む、空間に溶け込むデザイン
「Archi Design」が目指すコンセプトの1つが「建築そのものになること」だ。
設備が主張するのではなく、建築の背景として溶け込むこと。そして、複数の電設資材のデザインをそろえ、統一感のある空間づくりを支援すること。このたび発表された「Archi Design」は、すでにいくつかの製品で採用されている同社のそうした思想をさらに押し広げる取り組みである。
製品カテゴリーを横断して目指すのは、建築に溶け込むよう視覚的なノイズを徹底的に排除したデザイン。ダウンライトなどの照明器具からコンセント・スイッチ類、配線ダクトから分電盤、インターホンから蓄電システムまで、形状や色合い、サイズや質感などに統一感を持たせることで、美しく心地いい空間創出の実現に貢献する。
オフィスの施工例。天井のライン照明や壁面にすっきりと収まったスイッチなどの配線器具が、美しいオフィス環境を実現する
住宅での施工例。奥壁の天井側には、壁面収納と並べて住宅分電盤を設置。他にも防水コンセントやスイッチなどが、必要な場所に配置されながら空間と馴染み調和する
また、「Archi Design」では施工のしやすさや自由度も重視される。例えば、2025年3月に発売となる「フレキシード」は、縦向けにも横向けにも設置できる業界最薄の住宅分電盤。開閉部分に工夫をこらすことで、天井や収納キャビネットなどにぴったりと隙間なく配置できる自由度の高さが魅力だ。
さらに今後は、製品カテゴリーによる取付穴径やサイズの統一が図られ、現在は商品ジャンルごとに異なっている取り付け方法の統一も検討される予定という。
照明器具やセンサー類など、天井に取り付けられる電設資材だけを見ても、現状では取り付けに必要となる穴の径はバラバラだ。施工する側からすると、さまざまな電気設備で径などの統一が図られれば、迷いのない商品選定や施工の効率化、ミスの防止といったメリットが享受できる。
住宅分電盤「フレキシード」。天井にぴったりと設置できる独自の設計に加え、モジュール設計によって部品の共通化を進め、部品点数を削減した
資源の削減や更新性の向上で、環境負荷を大きく低減
「Archi Design」が目指すもう1つのコンセプトが「環境配慮を重ねること」。根底にあるのは、調達から開発・製造、物流といったあらゆる段階で資源の効率化や循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を目指すサーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方だ。
そもそもパナソニックグループでは、2030年までに自社拠点(工場やビル)でのCO2排出量を実質ゼロとする目標を掲げ、創エネ・蓄エネ・省エネの最適制御を取り入れて、カーボンニュートラルを推進してきた。
そんな同社の思想が色濃く反映された「Arch Design」では、製品の小型化や部品点数の削減などによる使用材料の低減や輸送時のエネルギー削減、梱包や取扱説明書の資源削減といった多角的な視点から、環境に配慮した取り組みを重ねていく。
すでにコンパクトランプでは、従来製品に比べて器具の体積を75%削減。梱包では印字と印刷面積、印刷色を最適化することでインク量を大幅に削減できる見込みだという。同時に、取扱説明書や施工証明書の省資源化を推進し、紙の使用を最小限に。QRコードを用いることで、ただ紙の使用量を削減するだけでなく、利便性を高めていく。
スポットライトでは従来製品(左)に比べて62%の重量削減を実現。原材料や輸送エネルギーの削減につなげた
梱包の表示を見直し最適化を図ると同時に、取扱説明書などを電子化することで、インクや紙の使用量を大幅に削減
LED交換型コンパクトランプ対応照明器具では、スポットライト・ダウンライトの規格を共通化していく。互換性のある部品で容易にランプ交換や機能更新が行えるようになる
また、前述したような施工に必要な径などの統一化や、拡張性を持たせた各製品のモジュール化によって、将来的な技術革新などにも対応できるようになるという。技術の進歩や規格の変更によって製品や部品が大量に廃棄されることのない、環境に優しい社会の実現を目指していく。
地球と共生しながら、人々が心地よく暮らせる空間を実現するために。これからの建築に必要な電気設備とは何かを考え抜いた「Archi Design」。
パナソニックEW社では今後も、新コンセプトのもと新たな製品を市場へと投入予定。将来的にはグループ内の家電製品やさまざまなソリューションとの連携も期待できる、壮大な広がりを持つ取り組みだ。
「Archi Design」のコンセプトのもと、今後も定番製品が次々と発売される予定だ