マイカ・マッカートニー
<南シナ海で強引な領有権主張を続ける中国の拡張主義に、フィリピンやベトナムがミサイル調達で対抗>
中国が南シナ海で威圧的な行動を強めるなか、中国と領有権問題を抱えるベトナムが近く、インドとブラモス巡航ミサイルに関する7億ドル規模の契約を結ぶ見通しだと、インドのニュースサービス「WION」が12月22日に報じた。
【マップ】中国本土に届くトマホークの射程
正式にまとまれば、ベトナムは同地域でフィリピンに次いで2番目に多くの「ブラモス」を保有することになる。ブラモスはインドとロシアが共同で開発した巡航ミサイルで、陸上、空中および海上からの発射が可能で迎撃が難しい超音速ミサイルだ。
フィリピンは2024年に入ってからブラモスの第一弾の納入を受けている。フィリピンは同ミサイルの調達について「形勢を一変させる出来事」だとしており、中国はこれを非難していた。
中国は南シナ海のほとんどの海域について領有権を主張しており、フィリピン、ベトナムをはじめとする東南アジアの近隣諸国と領有権争いを繰り広げている。
領有権をめぐるベトナムと中国の対立は、フィリピンのフェルディナンド・マルコスJr.政権と中国の対立に比べれば控えめだが、それでもベトナムはトンキン湾で中国が一方的に領海基線を発表したことや、西沙(パラセル)諸島の海域で操業中だったベトナム漁船の乗組員にけがをさせたことなどについては中国に抗議を行ってきた。
12月19日に開幕した第2回ベトナム国際防衛展示会には、駐ベトナムインド大使のサンディープ・アリヤとインド軍の高官らが出席。インド政府の同地域への戦略的な関与を強調した。
一方フィリピンは、海上防衛を強化するため米陸軍の中距離能力(MRC)ミサイルシステム「タイフォン」を購入したい考えだ。フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙は、フィリピン陸軍のロイ・ガリド中将が記者会見で「わが国の群島防衛に適しており効果的であると考え、(タイフォンの)調達を計画している」と述べたと報じた。
「タイフォン」ミサイルシステムは既に2024年4月から、フィリピンで最も人口の多いルソン島に米軍が配備している。
米国とフィリピンは「タイフォン」配備は訓練のためだと強調するが、中国は強く抗議している。フィリピンのギルベルト・テオドロ国防相は、同システムは特定の国ではなく全般的な「安全保障上のリスクや脅威、挑戦」に対応するためだと述べた。
「タイフォン」システムの機動性や地上・空中の標的への対応能力で、フィリピンの軍事力は大幅に強化できる。「タイフォン」にはトマホーク巡航ミサイルを搭載でき、同ミサイルの射程約2400キロは南シナ海にある中国の人工島や中国東部の沿岸地帯の大部分をカバーすることになる。
米国とフィリピンは70年以上前から相互防衛協定を結んでおり、ジョー・バイデン米大統領とロイド・オースティン米国防長官はこれが南シナ海全体に適用されることを繰り返し確認している。
シンガポール防衛戦略研究所のコリン・コー上級研究員はX(旧ツイッター)に、「東南アジアにミサイル多数。フィリピンが米国から「タイフォン」を取得すべく交渉を行っているという報道に続き、ベトナムがインドとブラモス調達の契約をまとめつつあるとのこと」と書き込んだ。
中国外務省の毛寧報道官は「この戦略的攻撃兵器を導入することで、フィリピンは域外の国が緊張を煽ったり地政学的な対立を引き起こす事態を招こうとしている。フィリピンには自らの誤りを正し、タイフォンミサイルシステムを約束どおり撤去し、これ以上誤った道を進むのをやめるよう促す」と述べた。
WIONの報道によれば、インドとベトナムの契約について、早ければ2025年2月にもまとまる可能性がある。
【マップ】中国本土に届くトマホークの射程
射程1000マイルの対地攻撃型トマホークの場合(太線)
<南シナ海で強引な領有権主張を続ける中国の拡張主義に、フィリピンやベトナムがミサイル調達で対抗>
中国が南シナ海で威圧的な行動を強めるなか、中国と領有権問題を抱えるベトナムが近く、インドとブラモス巡航ミサイルに関する7億ドル規模の契約を結ぶ見通しだと、インドのニュースサービス「WION」が12月22日に報じた。
【マップ】中国本土に届くトマホークの射程
正式にまとまれば、ベトナムは同地域でフィリピンに次いで2番目に多くの「ブラモス」を保有することになる。ブラモスはインドとロシアが共同で開発した巡航ミサイルで、陸上、空中および海上からの発射が可能で迎撃が難しい超音速ミサイルだ。
フィリピンは2024年に入ってからブラモスの第一弾の納入を受けている。フィリピンは同ミサイルの調達について「形勢を一変させる出来事」だとしており、中国はこれを非難していた。
中国は南シナ海のほとんどの海域について領有権を主張しており、フィリピン、ベトナムをはじめとする東南アジアの近隣諸国と領有権争いを繰り広げている。
領有権をめぐるベトナムと中国の対立は、フィリピンのフェルディナンド・マルコスJr.政権と中国の対立に比べれば控えめだが、それでもベトナムはトンキン湾で中国が一方的に領海基線を発表したことや、西沙(パラセル)諸島の海域で操業中だったベトナム漁船の乗組員にけがをさせたことなどについては中国に抗議を行ってきた。
12月19日に開幕した第2回ベトナム国際防衛展示会には、駐ベトナムインド大使のサンディープ・アリヤとインド軍の高官らが出席。インド政府の同地域への戦略的な関与を強調した。
一方フィリピンは、海上防衛を強化するため米陸軍の中距離能力(MRC)ミサイルシステム「タイフォン」を購入したい考えだ。フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙は、フィリピン陸軍のロイ・ガリド中将が記者会見で「わが国の群島防衛に適しており効果的であると考え、(タイフォンの)調達を計画している」と述べたと報じた。
「タイフォン」ミサイルシステムは既に2024年4月から、フィリピンで最も人口の多いルソン島に米軍が配備している。
米国とフィリピンは「タイフォン」配備は訓練のためだと強調するが、中国は強く抗議している。フィリピンのギルベルト・テオドロ国防相は、同システムは特定の国ではなく全般的な「安全保障上のリスクや脅威、挑戦」に対応するためだと述べた。
「タイフォン」システムの機動性や地上・空中の標的への対応能力で、フィリピンの軍事力は大幅に強化できる。「タイフォン」にはトマホーク巡航ミサイルを搭載でき、同ミサイルの射程約2400キロは南シナ海にある中国の人工島や中国東部の沿岸地帯の大部分をカバーすることになる。
米国とフィリピンは70年以上前から相互防衛協定を結んでおり、ジョー・バイデン米大統領とロイド・オースティン米国防長官はこれが南シナ海全体に適用されることを繰り返し確認している。
シンガポール防衛戦略研究所のコリン・コー上級研究員はX(旧ツイッター)に、「東南アジアにミサイル多数。フィリピンが米国から「タイフォン」を取得すべく交渉を行っているという報道に続き、ベトナムがインドとブラモス調達の契約をまとめつつあるとのこと」と書き込んだ。
中国外務省の毛寧報道官は「この戦略的攻撃兵器を導入することで、フィリピンは域外の国が緊張を煽ったり地政学的な対立を引き起こす事態を招こうとしている。フィリピンには自らの誤りを正し、タイフォンミサイルシステムを約束どおり撤去し、これ以上誤った道を進むのをやめるよう促す」と述べた。
WIONの報道によれば、インドとベトナムの契約について、早ければ2025年2月にもまとまる可能性がある。
【マップ】中国本土に届くトマホークの射程
射程1000マイルの対地攻撃型トマホークの場合(太線)