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「不法移民の公開処刑」を動画で再現...波紋を呼ぶ過激発言

ニューズウィーク日本版 2024年12月26日 13時0分

ヘスス・メサ
<不法移民の公開処刑を提案し、動画で再現。テキサス州から連邦下院議員選挙に出馬を目指すヴァレンティーナ・ゴメス(共和党)の主張が、波紋を広げている>

凶悪犯罪を犯した不法移民は公開処刑にすべき。テキサス州から連邦下院議員選挙に出馬を目指すヴァレンティーナ・ゴメス(共和党)のそんな主張に対し、非難の声が殺到している。

【動画】「不法移民の公開処刑」を動画で再現...波紋を呼ぶ過激発言

ゴメスは移民を銃殺するシミュレーション動画をX(旧Twitter)に投稿し、これで犯罪が抑止できると主張した。ニューヨーク市の地下鉄で起きた殺人の容疑者として不法移民が逮捕された事件を受けた発言だった。ネット上ではゴメスに対する激しい反発が巻き起こっている。

本誌はゴメス陣営に電話でコメントを求めた。

「不法移民の公開処刑」を動画で再現...波紋を呼ぶ過激発言

地下鉄車内で女性が火を付けられて死亡した事件では、グアテマラ出身のセバスティアン・サペタ-カリル容疑者(33)が殺人容疑で逮捕された。

ゴメスはコロンビア出身のアメリカ人政治活動家で、ミズーリ州務長官選挙の候補者だった。地下鉄殺人事件が大々的に報じられると、アメリカ人に対する凶悪犯罪を犯した不法移民の公開処刑を呼びかける動画をXに投稿して物議をかもした。

動画の中のゴメスは移民の銃殺をシミュレーションしながら、その提案を口にしている。

不法移民に見立てた人形は後ろ手に縛られて椅子に縛り付けられ、顔はフードで覆われていた。

人形の後頭部を銃撃したゴメスは、カメラに歩み寄って「事は単純。アメリカ人をレイプしたり殺したりした不法者は公開処刑を」と言い放ち、この行為を正義の一形態と位置付けた。

「彼らは強制送還に値しない。始末に値する」とゴメスはカメラに語りかける。

NEW: Texas Congressional candidate Valentina Gomez releases video demonstrating the punishment she wants for illegal aliens who k*ll Americans."It's that simple: public executions for any illegal that r*pes or k*lls an American."@ValentinaForUSA pic.twitter.com/P0BzoVhaxN— Eric Daugherty (@EricLDaugh) December 23, 2024

不穏当・挑発的な発言はこれまでにも...

ゴメスの政治キャリアは不穏当な発言や挑発的発言を特徴とする。2024年は極右の立場でミズーリ州務長官選挙に出馬してネット上でかなり注目を浴びたが、有権者にはほとんど支持されなかった。

歴史的にLGBTQ+の街として知られるセントルイスのソーラード地区をジョギングしながら「軟弱なゲイでいるな。強くあれ」と放言する動画もある。

別の動画では、手製の火炎放射器を使ってLGBTQ+の書籍を燃やし、火炎放射器を禁止している国を「軟弱でゲイ」と罵倒していた。そうした言動はLGBTQ+活動家や主流政治家から非難される一方で、マット・ゲーツ前下院議員のような極右政治家からは賞賛を浴びた。

Xは暴力的な発言を禁止する規定を理由に、この動画の見える範囲を制限した。

「私の動画が制限されて、私のアカウントが停止されたことは、私が体制にとって最大の脅威であることを物語る。なぜなら私は見たままを訴えて人々に希望を与え、彼らの金を必要としないからだ」。Xに動画を制限されたゴメスはそう書き込んだ。「忘れるな。我々に助けは来ない。縛られたままだ」

この投稿には、ニューヨークの地下鉄殺人の動画が添えられていた。

本誌の取材にメッセージで返答したゴメスは自分に反対する相手を批判して、自分の動画をアメリカとメキシコの国境で使うよう、テキサス州のグレッグ・アボット知事に促した。

「アボット知事は誰も抑止できないあんな看板の代わりに、私の動画を国境で流すべきだ。私はテキサスのために戦うことを選ぶ。なぜならテキサスは真実を語り、犯罪者をあぶり、子供たちを救う戦士を必要としているからだ」とゴメスは続ける。

「我々の『指導者』が仕事を始める前に、幼い少女や女性たちがどれだけ大勢レイプされ、殺されなければならないのか。テキサス州選出の議員が得意なのはウクライナに資金を拠出し、株を売買し、強い文言の書簡で役に立たない公聴会や調査を行うことだけだ。だがアメリカ国民にとって真の成果は何もない」

「テキサスをもてあそぶな。そして間違っても私をもてあそぶな。農家のために、家族のために、テキサスの退役軍人のために、議会で働く日を楽しみにしている」。ゴメスはそう結んだ。

どこまで許される? 「政治的言動」の境界を考える

保守活動家ローラ・ルーマーはXにこう書き込んだ。「@ValentinaForUSAが拳銃とパールのイヤリングとヴェルサーチのサングラスをまとって不法外国人にFAFOを突きつけたやり方、大好き」

アルゼンチン人ジャーナリストで元CNNキャスターのカルロス・モンテロは「@ValentinaForUSAはクリスマス精神を忘れているらしい」とコメントしている。

コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は「彼女は単なるファシストのアメリカ人ではない。彼女はコロンビア人だ。彼女は移民として、他の移民に対する憎しみを広めることを目指している。アメリカ人の大半は、他のアメリカ人に殺されている」とポストした。

ゴメスの発言を巡る論議は今後も続きそうだ。その提案が議会で支持される公算は小さい。だがこうした発言は、移民と犯罪関連の政策を論議する中で、政治的言動の許容限度をめぐる疑問を生じさせている。

(翻訳:鈴木聖子)

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