コリン・ジョイス
<既に失速気味のイギリス労働党政権が、農家の事業継承に致命的な法改正を発表。農場を継ぐためには高額納税か土地売却を迫られる>
イギリスのキア・スターマー首相は既に国中至る所でかなり不人気だが、地方では特に厄介なことになっている。労働党は農村部の有権者の悩みを「理解」してこなかった前歴があり、スターマーもそれを踏襲しているようだ。
労働党運動全体はもともと、組織化された産業労働者階級から生まれた (だからこそ労働党という名前が付いた)が、奇妙なことに、その支持基盤をより拡大するにあたっては、懸命に働く農家よりも都市に住む中流階級を取り込むほうが得意なようだ。選挙ではライバルの保守党が勝ちやすい理由の1つも、ここにある。
労働党のブレア政権はかつて、キツネ狩りを禁止してイングランド地方部を困惑させた。キツネはまだ殺しても問題がない(実際には個体数をある程度に抑えて管理する必要があるほどだ)が、ブレアの労働党は田舎の人々に対し、組織的なキツネ狩りを禁止した。
都会の人から見れば、キツネ狩りは残酷。田舎の人から見れば、それは長年の伝統であり、農村のことを何も知らない町の人々が干渉すべきではなかったのだ。
家業を継ぐために大金を工面
そしてここにきて、スターマー政権が打ち出した相続税の新政策は、スターマーが農業の仕組みをただもう理解していないことを物語っていると思われているため、農家の人々を怒らせている。労働党政権は、相続税なしに農場を相続できるこれまでの法の抜け穴を改正。家業の農業を継ごうと思ったら、土地に見合うだけのカネを工面して納税しなければいけなくなった。
農家はたくさんの土地を持っていて、そうした土地の価格は、特にイングランド南東部ではここ数十年で非常に高騰している。とはいえ、だからといって農業での利益が急増したわけではない。
農業で利益を上げて土地の価値を上昇させたわけではないし、土地価格上昇によって手持ちのカネが増えたわけでもないのに、いまや世代交代のたびに巨額の税金を支払わなければならなくなったのだ。
比較的小規模の農場は、理論的には数百万ポンドの「価値」があるかもしれず、相続税はかなり高額 (32万5000ポンド以上の遺産の場合は40%) になる。これまで農家の相続税が免除されていたのは、多くの家族経営の農場が代々受け継がれてきているから、という理由があった。
相続税は事実上、農家の破綻を意味するだろう。つまり、税金を支払うために土地の一部を売却することになる。
残る選択肢は、土地の価値に応じて融資を受けることだが、他のビジネスマンと同様に、農家はすでに生産性と収益性の向上や、設備新設などのために資金を借りている。
国に納税するために30年ごとに非常に大きな金額を借りることは、ただでさえ苦戦している農業部門の存続可能性をはるかに低下させることになるだろう。
地方労働者に優しくない労働党
農家は、自分たちが往年の土地持ち地主階級のように扱われていると感じているが、農家自身の感覚とは隔たりがある。一般的に、農業は重労働で、利益率が低く、天候だけでなくしょっちゅう変化する規則や規制にも影響される厄介なビジネスであると認識されている。
より多くの農地が売りに出されたからといって、能力の高い人々がこぞって参入したがるような仕事ではない。したがって、現在の農場所有者に土地の売却を強制することは、多くの新規参入農家の機会を創出することにはならない。
これはイギリスの農業を傷つけるだけであり、労働党政権の「典型的な」やり口だと、農家は声を上げている。
<既に失速気味のイギリス労働党政権が、農家の事業継承に致命的な法改正を発表。農場を継ぐためには高額納税か土地売却を迫られる>
イギリスのキア・スターマー首相は既に国中至る所でかなり不人気だが、地方では特に厄介なことになっている。労働党は農村部の有権者の悩みを「理解」してこなかった前歴があり、スターマーもそれを踏襲しているようだ。
労働党運動全体はもともと、組織化された産業労働者階級から生まれた (だからこそ労働党という名前が付いた)が、奇妙なことに、その支持基盤をより拡大するにあたっては、懸命に働く農家よりも都市に住む中流階級を取り込むほうが得意なようだ。選挙ではライバルの保守党が勝ちやすい理由の1つも、ここにある。
労働党のブレア政権はかつて、キツネ狩りを禁止してイングランド地方部を困惑させた。キツネはまだ殺しても問題がない(実際には個体数をある程度に抑えて管理する必要があるほどだ)が、ブレアの労働党は田舎の人々に対し、組織的なキツネ狩りを禁止した。
都会の人から見れば、キツネ狩りは残酷。田舎の人から見れば、それは長年の伝統であり、農村のことを何も知らない町の人々が干渉すべきではなかったのだ。
家業を継ぐために大金を工面
そしてここにきて、スターマー政権が打ち出した相続税の新政策は、スターマーが農業の仕組みをただもう理解していないことを物語っていると思われているため、農家の人々を怒らせている。労働党政権は、相続税なしに農場を相続できるこれまでの法の抜け穴を改正。家業の農業を継ごうと思ったら、土地に見合うだけのカネを工面して納税しなければいけなくなった。
農家はたくさんの土地を持っていて、そうした土地の価格は、特にイングランド南東部ではここ数十年で非常に高騰している。とはいえ、だからといって農業での利益が急増したわけではない。
農業で利益を上げて土地の価値を上昇させたわけではないし、土地価格上昇によって手持ちのカネが増えたわけでもないのに、いまや世代交代のたびに巨額の税金を支払わなければならなくなったのだ。
比較的小規模の農場は、理論的には数百万ポンドの「価値」があるかもしれず、相続税はかなり高額 (32万5000ポンド以上の遺産の場合は40%) になる。これまで農家の相続税が免除されていたのは、多くの家族経営の農場が代々受け継がれてきているから、という理由があった。
相続税は事実上、農家の破綻を意味するだろう。つまり、税金を支払うために土地の一部を売却することになる。
残る選択肢は、土地の価値に応じて融資を受けることだが、他のビジネスマンと同様に、農家はすでに生産性と収益性の向上や、設備新設などのために資金を借りている。
国に納税するために30年ごとに非常に大きな金額を借りることは、ただでさえ苦戦している農業部門の存続可能性をはるかに低下させることになるだろう。
地方労働者に優しくない労働党
農家は、自分たちが往年の土地持ち地主階級のように扱われていると感じているが、農家自身の感覚とは隔たりがある。一般的に、農業は重労働で、利益率が低く、天候だけでなくしょっちゅう変化する規則や規制にも影響される厄介なビジネスであると認識されている。
より多くの農地が売りに出されたからといって、能力の高い人々がこぞって参入したがるような仕事ではない。したがって、現在の農場所有者に土地の売却を強制することは、多くの新規参入農家の機会を創出することにはならない。
これはイギリスの農業を傷つけるだけであり、労働党政権の「典型的な」やり口だと、農家は声を上げている。