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中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念

ニューズウィーク日本版 2025年1月6日 16時2分

ビラル・ラーマン
<インフルエンザによく似た症状を引き起こすこのウイルスは、比較的新しいため、治療法もワクチンもまだない>

ニュース報道やソーシャルメディアへの投稿では、中国でヒトメタニューモウイルス(HMPV)というあまり知られていないウイルスが流行していると警告されている。中国当局はまだこの事実を公式に認めていない。

その代わり、中国疾病予防管理センターは2024年最終週までのデータに基づく公式報告で、中国において複数のインフルエンザ様疾患の発生率が上昇傾向にあることを指摘した。



このデータからは、インフルエンザが疾病の流行の先頭に立っていることがうかがえる。検査を受けた患者の30.2%がインフルエンザ陽性で、前週より6.2%増加しており、重度の呼吸器疾患で入院した人の17.7%が陽性と判定された。

だが、このデータは同時に、HMPVの感染率が新型コロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルスといった他のインフルエンザ様疾患よりも高く、中国における呼吸器疾患検査の陽性率の6.2%、呼吸器疾患による入院の5.4%を占めていることも示している。

ヒトメタニューモウイルス(HMPV)は、あらゆる年齢の人にインフルエンザのような病気を引き起こす可能性のあるウイルスだが、幼児や高齢者、免疫力が低下している人の場合は、感染リスクがより高くなる。

このウイルスは2001年に発見されたばかりで、インフルエンザに似た呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と同じ仲間に属している。



インフルエンザのような症状のある人に特定のウイルスの検査が広く行われるようになった結果、呼吸器疾患の重要な原因としてのHMPVに対する認識が高まっている。

他の類似ウイルスと同様、HMPVは通常、咳やくしゃみによる飛沫、抱擁やキスなどの身体の接触、ウイルスに汚染された物やその表面に触れた後に口や鼻、目に触れることによって人から人へと感染が拡大する

アメリカでは、HMPVはインフルエンザや同様の病気と同じように季節的に流行し、冬の終わりから春にかけて最も活発になる。

疾病対策センター(CDC)は、ウイルスから身を守る方法として、石鹸と水で頻繁に手を洗うこと、洗っていない手で顔を触らないこと、病人との密接な接触を避けることを推奨している。

症状のある人は、咳やくしゃみをするときは口を覆い、石鹸と水で頻繁に手を洗うこと、またコップやカトラリーを他人と共有しないようにし、自宅で療養することが勧められる。

HMPVの症状は、咳、発熱、鼻づまりや鼻水など、他のインフルエンザ様疾患とよく似ている。場合によっては息切れが起こり、それが気管支炎(肺の気道の炎症)や肺炎(肺の炎症)へと進行する可能性もある。

罹病期間は患者の症状の重さによって異なるが、一般的にはインフルエンザと同程度だ。



HMPVは比較的最近になって認知されたウイルスであるため、特効性のある治療法はなく、ワクチンもない。

HMPVに感染した患者は、インフルエンザと同様の治療法で対処すること、体が感染と戦う間は自宅で過ごすことが勧められる。

現在のところ、中国で起こりうるHMPV流行の程度とその深刻度について、信頼できる情報源から十分な情報が得られておらず、パンデミックのリスクを正確に予測することはできない。

だが、このウイルスは中国やアメリカなどで、すでに集団感染が起きているウイルスであるため、世界的大流行を引き起こした新型コロナウイルス(COVID-19)のようなまったく新しいウイルスに比べれば、集団免疫力は高い。



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