H・アラン・スコット(ライター、コメディアン) for WOMAN
<タリバンに抵抗する女性の姿を追った『ブレッド&ローズ』でプロデューサーを務めたノーベル賞受賞者マララ・ユサフザイに聞く>
アフガニスタンの女性は社会から締め出されている──この厳しい現実ゆえ、マララ・ユサフザイはドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』(アップルTVプラスで配信中)のプロデューサーに名を連ねた。
アフガン女性のサフラ・マニが監督、女優ジェニファー・ローレンスが共同プロデューサーを務める本作は、イスラム主義勢力タリバンの暫定政権の抑圧に抵抗する3人のアフガン女性を秘密裏に追ったものだ。
■【動画】『ブレッド&ローズ』公式トレイラー を見る
14歳の時、タリバンによる暗殺未遂を生き延びて世界の注目を集め、2014年にノーベル平和賞を受賞したユサフザイにとって、これは尊厳と個人の自由という不可侵の権利に根差す問題だ。ユサフザイと、マニに本誌H・アラン・スコットが話を聞いた。
◇ ◇ ◇
──マララ、この映画がなぜ重要なのか?
(21年に)タリバンが政権を握って以来、アフガンの女性と少女の状況は悪化する一方だ。過去3年半、タリバンが全く変わらないのを私たちは見てきた。
彼らは一層抑圧的になり、あらゆる手段を使って女性が仕事、教育、政治、市民生活に参加するのを制限している。アフガンは少女が教育を受けることを禁じられ、女性が働くことを制限されている世界で唯一の国だ。
最近もタリバンは、女性が公の場で全身と顔を覆うことを義務化し、大声を出すのを禁じ、家から出ることを制限する法律を発表した。タリバンの唯一の目的は女性を抑圧し、家の中に閉じ込めることだ。
このドキュメンタリーはアフガン女性たちの現実だけでなく、彼女たちのタリバンに対する行動にも人々の目を向けさせる非常に重要なものだ。
ドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』のシーンより APPLE TV+
──サフラ、こうした映画の制作はどれほど難しい?
映画制作は大好きだから、大変だと考えたことは一度もない。大変だったのはみんなの感情の部分だ。喪失、回復、希望というとても人間的な物語を扱ったから。
常に彼女たちと撮影チームの安全を最優先に考えなければならず、アフガンでの移動や撮影は何かと制限があった。世界有数の危険なテロ組織に対峙することも含め、全てが挑戦だった。
彼女たちの携帯電話で撮影した場面もあり、私が求めた品質に達していない点もあるかもしれない。でも気にしない。「低品質のビデオでもいいからこの物語を伝えたい」と思った。
──サフラ、なぜ今この映画が必要とされていると思う?
ジェニファーが私に依頼してくれなければ、この映画は作られなかった。そしてもし今、この映画を作りたいと思っても不可能だ。マララが先ほど言ったように状況は厳しくなる一方なので。彼らはただただ女性を耐え難い状況に追い込んでいる。
ドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』より APPLE TV+
──マララ、映画とアートはメッセージを広める上でどう役に立つだろうか。
多くの女性が教育や仕事の権利のために大変な努力をしてきた今、家に閉じ籠もる生活など想像できない。
彼女たちは1990年代後半のタリバン政権について、母親や年上の女性からしか聞いたことがない。自分が再び同じ抑圧的な政権の下で暮らすことになるとは、思いもしなかった。
だからデモをし、スローガンを掲げ、女性に基本的人権を与えるようタリバンに訴えている。タリバンは彼女たちを恐れ、デモをしてる姿さえ見たくないのだろう。スプレーを噴射し、殴りつけ、刑務所に入れようとしている。
このドキュメンタリーを通じて彼女たちの声を大きくし、彼女たちを見える存在にするのは一種の抵抗だ。
──サフラ、アートは政治的主張になり得ると思う?
物語を伝えるツールや映画には社会と世界、未来の世界に変化をもたらす力があると私は信じている。
3年半前にアフガンがタリバンの手に再び渡って以降、タリバンは学業再開を禁止するなど女性の権利や自由を徐々に奪っていった。
その後、アフガン女性に起きていることに対して大きな沈黙があった。彼女たちの境遇は他の国々には影響しないと考えている人もいると思う。
でも私たちはテロリストを信用すべきではない。アフガン女性は今日高い代償を払っていて、世界は明日代償を払うかもしれない。子供たちと世界の未来を考えなければならない。そのとき、このドキュメンタリーは権利擁護のツールになり得るだろう。
ドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』より APPLE TV+
──マララ、人々には本作から何を感じ取ってほしい?
このドキュメンタリーについて共有し、アフガン女性について語ることはとても、とても重要だ。国内外でさまざまな活動をしているアフガン女性への支援も大切だ。
自分たちの指導者には、タリバンとの関係を正常化しないよう求めてほしい。そして、ジェンダー・アパルトヘイト(性別を理由とした隔離・差別)を人道に対する罪と位置付けるよう指導者たちに働きかけてほしい。
タリバンは私たちが目をそらすことを望んでいるが、それを許すべきではない。全てのアフガン少女が再び学校に通い、全てのアフガン女性が男性と平等の権利を得て、尊厳を持って生きるのを見る日まで、私たちは戦い続ける。
──サフラはどう?
世界の連帯がいま必要だ。明日では遅すぎる。アフガンでは少女の自殺が相次いでいるが、メディアでは報じられない。彼女たちには権利があって当然だし、権利を手にするため最善を尽くしている。でも国際社会の支援がなければそれも不可能に思える。
『ブレッド&ローズ』公式トレイラー
Bread & Roses -- Official Trailer | Apple TV+
<タリバンに抵抗する女性の姿を追った『ブレッド&ローズ』でプロデューサーを務めたノーベル賞受賞者マララ・ユサフザイに聞く>
アフガニスタンの女性は社会から締め出されている──この厳しい現実ゆえ、マララ・ユサフザイはドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』(アップルTVプラスで配信中)のプロデューサーに名を連ねた。
アフガン女性のサフラ・マニが監督、女優ジェニファー・ローレンスが共同プロデューサーを務める本作は、イスラム主義勢力タリバンの暫定政権の抑圧に抵抗する3人のアフガン女性を秘密裏に追ったものだ。
■【動画】『ブレッド&ローズ』公式トレイラー を見る
14歳の時、タリバンによる暗殺未遂を生き延びて世界の注目を集め、2014年にノーベル平和賞を受賞したユサフザイにとって、これは尊厳と個人の自由という不可侵の権利に根差す問題だ。ユサフザイと、マニに本誌H・アラン・スコットが話を聞いた。
◇ ◇ ◇
──マララ、この映画がなぜ重要なのか?
(21年に)タリバンが政権を握って以来、アフガンの女性と少女の状況は悪化する一方だ。過去3年半、タリバンが全く変わらないのを私たちは見てきた。
彼らは一層抑圧的になり、あらゆる手段を使って女性が仕事、教育、政治、市民生活に参加するのを制限している。アフガンは少女が教育を受けることを禁じられ、女性が働くことを制限されている世界で唯一の国だ。
最近もタリバンは、女性が公の場で全身と顔を覆うことを義務化し、大声を出すのを禁じ、家から出ることを制限する法律を発表した。タリバンの唯一の目的は女性を抑圧し、家の中に閉じ込めることだ。
このドキュメンタリーはアフガン女性たちの現実だけでなく、彼女たちのタリバンに対する行動にも人々の目を向けさせる非常に重要なものだ。
ドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』のシーンより APPLE TV+
──サフラ、こうした映画の制作はどれほど難しい?
映画制作は大好きだから、大変だと考えたことは一度もない。大変だったのはみんなの感情の部分だ。喪失、回復、希望というとても人間的な物語を扱ったから。
常に彼女たちと撮影チームの安全を最優先に考えなければならず、アフガンでの移動や撮影は何かと制限があった。世界有数の危険なテロ組織に対峙することも含め、全てが挑戦だった。
彼女たちの携帯電話で撮影した場面もあり、私が求めた品質に達していない点もあるかもしれない。でも気にしない。「低品質のビデオでもいいからこの物語を伝えたい」と思った。
──サフラ、なぜ今この映画が必要とされていると思う?
ジェニファーが私に依頼してくれなければ、この映画は作られなかった。そしてもし今、この映画を作りたいと思っても不可能だ。マララが先ほど言ったように状況は厳しくなる一方なので。彼らはただただ女性を耐え難い状況に追い込んでいる。
ドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』より APPLE TV+
──マララ、映画とアートはメッセージを広める上でどう役に立つだろうか。
多くの女性が教育や仕事の権利のために大変な努力をしてきた今、家に閉じ籠もる生活など想像できない。
彼女たちは1990年代後半のタリバン政権について、母親や年上の女性からしか聞いたことがない。自分が再び同じ抑圧的な政権の下で暮らすことになるとは、思いもしなかった。
だからデモをし、スローガンを掲げ、女性に基本的人権を与えるようタリバンに訴えている。タリバンは彼女たちを恐れ、デモをしてる姿さえ見たくないのだろう。スプレーを噴射し、殴りつけ、刑務所に入れようとしている。
このドキュメンタリーを通じて彼女たちの声を大きくし、彼女たちを見える存在にするのは一種の抵抗だ。
──サフラ、アートは政治的主張になり得ると思う?
物語を伝えるツールや映画には社会と世界、未来の世界に変化をもたらす力があると私は信じている。
3年半前にアフガンがタリバンの手に再び渡って以降、タリバンは学業再開を禁止するなど女性の権利や自由を徐々に奪っていった。
その後、アフガン女性に起きていることに対して大きな沈黙があった。彼女たちの境遇は他の国々には影響しないと考えている人もいると思う。
でも私たちはテロリストを信用すべきではない。アフガン女性は今日高い代償を払っていて、世界は明日代償を払うかもしれない。子供たちと世界の未来を考えなければならない。そのとき、このドキュメンタリーは権利擁護のツールになり得るだろう。
ドキュメンタリー映画『ブレッド&ローズ』より APPLE TV+
──マララ、人々には本作から何を感じ取ってほしい?
このドキュメンタリーについて共有し、アフガン女性について語ることはとても、とても重要だ。国内外でさまざまな活動をしているアフガン女性への支援も大切だ。
自分たちの指導者には、タリバンとの関係を正常化しないよう求めてほしい。そして、ジェンダー・アパルトヘイト(性別を理由とした隔離・差別)を人道に対する罪と位置付けるよう指導者たちに働きかけてほしい。
タリバンは私たちが目をそらすことを望んでいるが、それを許すべきではない。全てのアフガン少女が再び学校に通い、全てのアフガン女性が男性と平等の権利を得て、尊厳を持って生きるのを見る日まで、私たちは戦い続ける。
──サフラはどう?
世界の連帯がいま必要だ。明日では遅すぎる。アフガンでは少女の自殺が相次いでいるが、メディアでは報じられない。彼女たちには権利があって当然だし、権利を手にするため最善を尽くしている。でも国際社会の支援がなければそれも不可能に思える。
『ブレッド&ローズ』公式トレイラー
Bread & Roses -- Official Trailer | Apple TV+