ブレンダン・コール
<グリーンランド獲得のために「軍事力行使も排除せず」というトランプ発言にNATO諸国が緊張>
ドナルド・トランプ米次期大統領が、NATO創設メンバーであるデンマークの自治領グリーンランドを獲得したい意向を改めて表明。このままいけば、米大統領就任後にNATOならびに欧州連合(EU)と対立することになるのは間違いない。
グリーンランドやパナマ運河を獲得するためには軍事力や経済力の行使も排除しないという。
スロバキアに拠点を置くシンクタンク「GLOBSEC」の防衛問題研究員ロジャー・ヒルトンは本誌に対して、NATOと敵対する勢力に対して、力ずくで国境を変更しても「許容される可能性もある」というメッセージを送ることになると指摘した。
また別の専門家は、トランプはNATOの結束を弱体化させかねないと危機感を示したが、次期米大統領報道官に指名されているキャロライン・レビットは、トランプが下す全ての決断は「アメリカおよびアメリカ国民にとっての最善策」だと述べた。
本誌はこの件についてNATOおよびデンマーク外務省にコメントを求めたが、返答はない。
トランプが本気でグリーンランドを獲得する計画を練っているかどうかは不明だが、彼がNATO加盟国であるデンマークに対して軍事力を行使する可能性を排除していないことは重大だ。
NATO憲章第5条は、いかなる加盟国に対する攻撃も加盟国全体への攻撃と見なして反撃する集団的自衛権の行使を定めているため、アメリカとデンマークの衝突はNATOにとって厄介な外交問題をもたらすことになる。
トランプの長男ドナルド・トランプ・ジュニアが1月7日にグリーンランドを訪問したことも、トランプの意図をめぐる憶測に拍車をかけた。
アメリカがピツフィク宇宙軍基地を置いているグリーンランドは天然資源が豊富で、ロシアや中国が北極圏での影響力拡大を目指すなか、貿易面でも戦略的に重要な位置にある。
だが、デンマークの自治領であるグリーンランドはNATOの一員でもある。
米シンクタンクの上級研究員であるビクトリア・ハーマンは米ワシントン・ポスト紙に対し、グリーンランドに対する米軍のいかなる攻撃も、NATO憲章第5条に基づき「NATO加盟国に対する攻撃」と見なされるだろうと述べた。
英ロンドンにあるウエストミンスター大学の政治専門家であるイタイ・ロテムは本誌に対して、グリーンランドへの侵攻はNATO加盟国同士の戦争を意味し、ロシアと戦争を続けるウクライナに対するNATOの支援体制を弱体化させることになると指摘した。
ロテムはまた、トランプの発言は「ヨーロッパとの関係悪化が新政権の戦略の一部らしい」ことを示しているとも述べた。
ジャーナリストのピーター・ベイカーとスーザン・グラッサーの共著「ぶち壊し屋/トランプがいたホワイトハウス2017-2021」によれば、トランプが最初にグリーンランド獲得のアイデアを持ち出したのは1期目の2019年だった。その際トランプは、グリーンランドと米自治領プエルトリコの交換を提案したという。
トランプは2024年12月には自身が立ち上げたソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、アメリカがグリーンランドを管理することは国家の安全保障と世界の自由のために「絶対に必要」なことだと主張した。
GLOBSECのヒルトンは、トランプの今回の発言は世界の安全保障状況が不安定なことを考えると非建設的であり、デンマークに対して「非常に無礼」だと指摘。トランプの発言は「NATOに敵対する外部勢力に対して、力ずくでの国境変更が許容されうることや、領土拡張主義の復活を示唆している」と述べた。
次期大統領報道官のレビットは本誌に対し、トランプは正当な国家安全保障上および経済的な懸念に取り組んでいる、と説明した。
一方デンマークは、トランプの外圧をテコに国防費を現在のGDP比1.65%から2%に引き上げるチャンスかもしれない、とヒルトンは言う。「国防費の増額が差し迫って必要なのは、NATOの定める2%の最低水準を達成していないほかの加盟国も同じだ」と、彼は言う。
ただしトランプの要求は、今やGDPの2%ではなく5%になっているが。
<グリーンランド獲得のために「軍事力行使も排除せず」というトランプ発言にNATO諸国が緊張>
ドナルド・トランプ米次期大統領が、NATO創設メンバーであるデンマークの自治領グリーンランドを獲得したい意向を改めて表明。このままいけば、米大統領就任後にNATOならびに欧州連合(EU)と対立することになるのは間違いない。
グリーンランドやパナマ運河を獲得するためには軍事力や経済力の行使も排除しないという。
スロバキアに拠点を置くシンクタンク「GLOBSEC」の防衛問題研究員ロジャー・ヒルトンは本誌に対して、NATOと敵対する勢力に対して、力ずくで国境を変更しても「許容される可能性もある」というメッセージを送ることになると指摘した。
また別の専門家は、トランプはNATOの結束を弱体化させかねないと危機感を示したが、次期米大統領報道官に指名されているキャロライン・レビットは、トランプが下す全ての決断は「アメリカおよびアメリカ国民にとっての最善策」だと述べた。
本誌はこの件についてNATOおよびデンマーク外務省にコメントを求めたが、返答はない。
トランプが本気でグリーンランドを獲得する計画を練っているかどうかは不明だが、彼がNATO加盟国であるデンマークに対して軍事力を行使する可能性を排除していないことは重大だ。
NATO憲章第5条は、いかなる加盟国に対する攻撃も加盟国全体への攻撃と見なして反撃する集団的自衛権の行使を定めているため、アメリカとデンマークの衝突はNATOにとって厄介な外交問題をもたらすことになる。
トランプの長男ドナルド・トランプ・ジュニアが1月7日にグリーンランドを訪問したことも、トランプの意図をめぐる憶測に拍車をかけた。
アメリカがピツフィク宇宙軍基地を置いているグリーンランドは天然資源が豊富で、ロシアや中国が北極圏での影響力拡大を目指すなか、貿易面でも戦略的に重要な位置にある。
だが、デンマークの自治領であるグリーンランドはNATOの一員でもある。
米シンクタンクの上級研究員であるビクトリア・ハーマンは米ワシントン・ポスト紙に対し、グリーンランドに対する米軍のいかなる攻撃も、NATO憲章第5条に基づき「NATO加盟国に対する攻撃」と見なされるだろうと述べた。
英ロンドンにあるウエストミンスター大学の政治専門家であるイタイ・ロテムは本誌に対して、グリーンランドへの侵攻はNATO加盟国同士の戦争を意味し、ロシアと戦争を続けるウクライナに対するNATOの支援体制を弱体化させることになると指摘した。
ロテムはまた、トランプの発言は「ヨーロッパとの関係悪化が新政権の戦略の一部らしい」ことを示しているとも述べた。
ジャーナリストのピーター・ベイカーとスーザン・グラッサーの共著「ぶち壊し屋/トランプがいたホワイトハウス2017-2021」によれば、トランプが最初にグリーンランド獲得のアイデアを持ち出したのは1期目の2019年だった。その際トランプは、グリーンランドと米自治領プエルトリコの交換を提案したという。
トランプは2024年12月には自身が立ち上げたソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、アメリカがグリーンランドを管理することは国家の安全保障と世界の自由のために「絶対に必要」なことだと主張した。
GLOBSECのヒルトンは、トランプの今回の発言は世界の安全保障状況が不安定なことを考えると非建設的であり、デンマークに対して「非常に無礼」だと指摘。トランプの発言は「NATOに敵対する外部勢力に対して、力ずくでの国境変更が許容されうることや、領土拡張主義の復活を示唆している」と述べた。
次期大統領報道官のレビットは本誌に対し、トランプは正当な国家安全保障上および経済的な懸念に取り組んでいる、と説明した。
一方デンマークは、トランプの外圧をテコに国防費を現在のGDP比1.65%から2%に引き上げるチャンスかもしれない、とヒルトンは言う。「国防費の増額が差し迫って必要なのは、NATOの定める2%の最低水準を達成していないほかの加盟国も同じだ」と、彼は言う。
ただしトランプの要求は、今やGDPの2%ではなく5%になっているが。