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視界はゼロ...「絶望的な濃霧」の中で着陸に挑むパイロットの視界をサングラス型カメラで撮影した映像が「怖すぎる」

ニューズウィーク日本版 2025年1月10日 16時33分

スー・キム
<飛行機には自動着陸システムも搭載されているが、まだまだ人間の方が「洗練度」は高く、天候不良時にはむしろ「自力着陸」が主流だ>

視界不良で「自力着陸」を強いられた航空機のコックピットの映像が、TikTokに投稿されて注目を集めている。

【動画】視界はゼロ...「絶望的な濃霧」の中で着陸に挑むパイロットの視界をサングラス型カメラで撮影した映像が「怖すぎる」

撮影したのはパイロットの@subject_0_。本名や勤務先の社名は明かしていない。動画は昨年12月30日に投稿されて以来、19万8000回再生されている。撮影にはカメラ内蔵のサングラスを使ったので、「完全ハンズフリーで安全」だったと同パイロットは本誌に語った。

動画はエアバスA320型機を使用した民間便の機内で、数日前に撮影された。同機は霧が立ち込める視界不良の中で、スイスのチューリッヒ空港に接近。

動画に添えられた「CAT3に突入」というコメントについて、「CAT3は着陸の種類のことで、視界不良による自動着陸を意味する」とパイロットは解説する。

雲の上を飛行していた同機は、やがて霧に覆われて完全に視界が遮られた。「(自動着陸の)リスクは、低視界アプローチでは航空機が自力で着陸しなければならないので、システムを注意深く監視しなければならないことにある」とパイロットは言う。

国際継続教育訓練協会(International Accreditors for Continuing Education and Training, IACET)認定の航空訓練機関、パイロット・インスティテュート(Pilot Institute)によると、霧や霞、低い雲、暴風雪、もや、砂嵐などによる視界不良の場合、乗員は「操縦士が自動操縦モードに操縦を委ねる」自動着陸を選択する。

同インスティテュートはアメリカ連邦航空局(FAA)の安全チーム業界会員でもある。

「計器着陸装置(ILS)を備えた滑走路であれば、自動操縦で『型通りの』着陸ができる」という。

動画を投稿したパイロットは、「手動着陸に比べて(自動着陸は)横風の制限など天候上の制限が厳しく、許容される機体の不備も制限される」と説明。

「着陸の過程で何らかの不具合が発生すれば、すぐに分析してアプローチを継続するか中止するか判断しなければならない。つまりこの手順の方が難易度が高い」と言い添えた。

パイロット・インスティテュートによると、「一般的に自動着陸システムは、視界が悪くて目視で着陸できない場合にのみ使用される。着陸の最終段階は操縦士の目視が頼りだが、視界が悪ければそれが困難だったり、不可能な場合もある」

自動着陸は目的を果たしてくれるものの、「仕方なく、細心の注意を払って使用する場合がほとんどだ」。

自動操縦は一般的には「極めて信頼できる」半面、やはり単なるコンピュータにすぎない。意思決定能力や「人が操縦する場合の自然な『感覚』」はなく、着陸の「洗練度」は人間の操縦士よりも低い傾向があるという。

一般的に、航空機は「相当量の雨」にも対応できる。大雨が問題になるのは滑走路付近の視界が制限される場合や、雨粒が機体に凍り付くような「特異な気象現象」が発生した場合に限られる。

あまりに激しい雨の場合は、前方の視界が低下して地上付近や地上で安全に運航できるレベルを下回ることもある。ただしこうした状況は通常「極めて稀で長くは続かず」、発生は雷雨に関連する場合に限られる。

FAAは2013年2月、「雷雨と認識できる天候は危険とみなす必要がある。どんな雷雨であれ、航空機事故や搭乗者の死亡につながる可能性がある」と通知した。

視界は通常「雷雲の中ではほぼゼロ」になり、「乱気流、ひょう、稲妻など精密な計器飛行を事実上不可能にさせる雷雨ハザードが関係すれば、危険は増大する」とFAAは指摘している。

(翻訳:鈴木聖子)

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