リシ・アイエンガー(フォーリン・ポリシー誌記者)
<移民やジェンダーに関する規制を撤廃し、「ジェンダーや性的指向に対して異常性を主張する」などのヘイト行為も許容する今回の発表。メタ社の「真の意図」とは?>
メタ(Meta)のマーク・ザッカーバーグCEO(Mark Zuckerberg)が1月7日、重大発表を行った。同社のSNSプラットフォーム、フェイスブックとインスタグラムに投稿した5分間の動画で、「移民やジェンダーなどのトピックに関する規制を撤廃する」と同時に、有害と判断したコンテンツを削除する自動システムの敷居を下げると明言したのだ。
【動画】ザッカーバーグ自ら「重大発表」として、規制撤廃について説明する様子
「ヘイトまみれの行為」に対するポリシーも変更され、「ジェンダーや性的指向に対する精神疾患や異常性の主張」も許容するという。
さらにアメリカでは「ファクトチェック機能を廃止」し、ユーザー同士が誤情報に注意喚起する「コミュニティーノート」方式に置き換える。これはイーロン・マスクが2022年に買収し、翌年にXと改名した旧ツイッターに近いやり方だ。「自由な表現という原点に立ち返る」と、ザッカーバーグは力説した。
どうやら次期大統領を意識した方針変更らしい。ザッカーバーグはトランプ同様に政府や既存メディアの「検閲」を批判し、「最近の選挙は再び言論(の自由)を優先する方向に進む文化的転換点のように感じる」と付け加えた。
メタが政権を握った政党に合わせてポリシーを変えるのは目新しい動きではないと、同社の元公共政策ディレクター、ケイティ・ハーバスは言う。「これは結局、言論ではなくビジネスの問題だ」
今のところ、ファクトチェック廃止の対象はアメリカだけだ。メタのファクトチェック・プログラムは世界90以上の国・地域の独立したパートナーで構成され、60以上の言語で運営されている。
彼らの多くは自分たちも切られるのではないかと心配している。「大半はメタのプログラムのおかげで成長し、生計を立ててきた小規模な組織」だと、台湾ファクトチェックセンターの元編集長サマー・チェンは言う。
自分たちは新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ紛争をめぐる偽情報と闘ってきたと、チェンは力説する。「私たちは世界的な偽情報の防衛ラインを構築した」
だがマスク買収後のXにメタが追従したことで、「防衛ラインとファクトチェック・コミュニティーは存亡の危機に立たされる」という。
もっと規模の大きなパートナーもこの決定に憤慨しているようだ。フランスの通信社AFPもその1つ。
「アメリカでのファクトチェック廃止をメタから知らされたのは発表の15分前だった」と、グローバルニュース・ディレクターのフィル・チェトウィンドは同社のサイトに書き込んだ。
誤情報に関するメタの対応がもたらす有害な影響は、欧米以外のほうが深刻だ。例えばフェイスブックは18年、ミャンマーで民族間の暴力をあおる手段として使われるのを防ぐ措置を十分に講じてこなかったことを認めている。
だが、専門家がさらに懸念するのは、「ヘイトまみれのコンテンツ」に対する規制の撤廃だ。この変更は世界中で適用される。「かなり悲惨な結果を招く変更だと思う」と、民主主義とテクノロジー研究所・自由言論プロジェクト(ワシントン)のディレクター、ケイト・ルエインは言う。
一方で、こうした「トランプ頼み」の姿勢は裏目に出る可能性もある。「問題はトランプが本当に味方でいてくれるかどうか」だと、ハーバスは言う。「自分にとって一番有利な道を選ぶのがトランプという人間だ」
From Foreign Policy Magazine
<移民やジェンダーに関する規制を撤廃し、「ジェンダーや性的指向に対して異常性を主張する」などのヘイト行為も許容する今回の発表。メタ社の「真の意図」とは?>
メタ(Meta)のマーク・ザッカーバーグCEO(Mark Zuckerberg)が1月7日、重大発表を行った。同社のSNSプラットフォーム、フェイスブックとインスタグラムに投稿した5分間の動画で、「移民やジェンダーなどのトピックに関する規制を撤廃する」と同時に、有害と判断したコンテンツを削除する自動システムの敷居を下げると明言したのだ。
【動画】ザッカーバーグ自ら「重大発表」として、規制撤廃について説明する様子
「ヘイトまみれの行為」に対するポリシーも変更され、「ジェンダーや性的指向に対する精神疾患や異常性の主張」も許容するという。
さらにアメリカでは「ファクトチェック機能を廃止」し、ユーザー同士が誤情報に注意喚起する「コミュニティーノート」方式に置き換える。これはイーロン・マスクが2022年に買収し、翌年にXと改名した旧ツイッターに近いやり方だ。「自由な表現という原点に立ち返る」と、ザッカーバーグは力説した。
どうやら次期大統領を意識した方針変更らしい。ザッカーバーグはトランプ同様に政府や既存メディアの「検閲」を批判し、「最近の選挙は再び言論(の自由)を優先する方向に進む文化的転換点のように感じる」と付け加えた。
メタが政権を握った政党に合わせてポリシーを変えるのは目新しい動きではないと、同社の元公共政策ディレクター、ケイティ・ハーバスは言う。「これは結局、言論ではなくビジネスの問題だ」
今のところ、ファクトチェック廃止の対象はアメリカだけだ。メタのファクトチェック・プログラムは世界90以上の国・地域の独立したパートナーで構成され、60以上の言語で運営されている。
彼らの多くは自分たちも切られるのではないかと心配している。「大半はメタのプログラムのおかげで成長し、生計を立ててきた小規模な組織」だと、台湾ファクトチェックセンターの元編集長サマー・チェンは言う。
自分たちは新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ紛争をめぐる偽情報と闘ってきたと、チェンは力説する。「私たちは世界的な偽情報の防衛ラインを構築した」
だがマスク買収後のXにメタが追従したことで、「防衛ラインとファクトチェック・コミュニティーは存亡の危機に立たされる」という。
もっと規模の大きなパートナーもこの決定に憤慨しているようだ。フランスの通信社AFPもその1つ。
「アメリカでのファクトチェック廃止をメタから知らされたのは発表の15分前だった」と、グローバルニュース・ディレクターのフィル・チェトウィンドは同社のサイトに書き込んだ。
誤情報に関するメタの対応がもたらす有害な影響は、欧米以外のほうが深刻だ。例えばフェイスブックは18年、ミャンマーで民族間の暴力をあおる手段として使われるのを防ぐ措置を十分に講じてこなかったことを認めている。
だが、専門家がさらに懸念するのは、「ヘイトまみれのコンテンツ」に対する規制の撤廃だ。この変更は世界中で適用される。「かなり悲惨な結果を招く変更だと思う」と、民主主義とテクノロジー研究所・自由言論プロジェクト(ワシントン)のディレクター、ケイト・ルエインは言う。
一方で、こうした「トランプ頼み」の姿勢は裏目に出る可能性もある。「問題はトランプが本当に味方でいてくれるかどうか」だと、ハーバスは言う。「自分にとって一番有利な道を選ぶのがトランプという人間だ」
From Foreign Policy Magazine