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「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が「顔出し」で語る衝撃映像をゼレンスキー大統領が公開

ニューズウィーク日本版 2025年1月16日 16時28分

イザベル・バンブルーゲン
<北朝鮮兵は捕虜にならずに「自決」するよう求められているというが、負傷し捕虜となった兵士は「北朝鮮に帰りたいか?」という問いにこう答えた──>

韓国の情報機関は1月13日、ウクライナ軍との戦闘のためロシアに派遣された北朝鮮の兵士約300人が死亡し、2700人が負傷したと伝えた。この直前に、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は戦争捕虜の動画を公開している。

【動画】「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が「顔出し」で語る衝撃映像(ゼレンスキー大統領が公開)

本誌は同日、ロシア政府とウクライナ外務省、在ロンドン北朝鮮大使館に電子メールでコメントを求めた。

ウクライナと韓国は昨年末、北朝鮮がウクライナ軍との戦闘のために推定1万人から1万2000人の兵士をロシア南部に派遣したと伝えていた。ウクライナの情報機関が撮影して1月12日に公開した動画は、その情報を裏付けるものだった。

北朝鮮の兵士(一部は特殊部隊に所属すると思われる)はロシアと同盟関係にある北朝鮮の金正恩総書記によって派遣され、2024年10月にロシアに到着した。戦闘に入ったのは12月初旬と推定される。

ロシアも北朝鮮も、北朝鮮兵がロシアに配備されていることを認めていない。ウクライナによれば、戦闘に加わっている北朝鮮兵はロシア軍の偽の身分証明書を携帯していたという。

韓国聯合ニュースの報道によれば、李成権議員は韓国国家情報院(NIS)の話として、北朝鮮の兵士およそ300人が死亡し、2700人が負傷したと語った。

NISによると、北朝鮮の部隊は「現代の戦争に関する理解の欠如」しており、それが原因で「大量の死傷者」が出ているという。戦場で最近撮影された映像の中で長距離ドローンに狙いを定める北朝鮮兵の行動を、韓国情報機関は「無意味な」行為と評した。

北朝鮮兵はウクライナ軍の捕虜にならないよう、自決を求められているとNISは指摘する。

ゼレンスキーによると、ウクライナ軍はロシアの国境地域に位置するクルスク州で1月9日に北朝鮮兵2人を捕らえた。ロシアで戦争捕虜となったウクライナ人の解放と引き換えに、2人を引き渡す用意があるとしている。

ウクライナの情報機関は1月11日、この男性2人が「予備的な捜査のため」首都キーウに連行され、「国際法の要件を満たす適切な状況で」拘束されていると発表した。

動画の中で、捕虜となった2人の男性は朝鮮語を話し、自分たちが北朝鮮の現役兵であることを認めている様子だった。

ウクライナのゼレンスキー大統領はX(旧Twitter)にこう書き込んだ。

「最初の兵士に加えて、北朝鮮の兵士の拘束は間違いなく増える。我が軍がほかの兵士を捕らえるのは時間の問題だ。ロシア軍が北朝鮮からの軍事支援に依存していることは、疑う余地がなくなった」

「プーチンは3年前、NATOに最後通告を突きつけて歴史を書き換える試みを始めた。だが今や、平壌からの軍事支援なしには対応できなくなった」

「もしも金正恩が、ロシアで捕虜となっている我々の戦士たちとの交換を取りまとめられるのであれば、ウクライナは金正恩の兵士を引き渡す用意がある」

「帰国を望まない北朝鮮兵には別の選択肢もあり得る。特に、この戦争に関する真実を朝鮮語で広めることによって平和の実現を早めたいという意思を表明する者は、その機会を与えられるだろう」

ウクライナの情報機関は1月11日、「犯罪の記録と捜査を行っているウクライナ保安庁は、我が国に対するロシアの戦争に(北朝鮮が)加わっていることを裏付ける反論の余地のない証拠を入手した」とFacebookに投稿。

「2人の北朝鮮兵のうち、1人は2025年1月9日に(特殊作戦軍)84番戦術団の戦闘員によって捕らえられ、もう1人はウクライナ国軍の空挺部隊に捕らえられた」と伝えた。

ゼレンスキーが戦争捕虜の映像を公開した意図は、ロシアが外国の部隊に頼ってウクライナに対する戦争を続けている事実を隠していることを、国際社会に証明することにあるようだ。来月で4年目に入る戦争の中で、ロシアはこのやり方を続けるだろう。

ウクライナの情報機関は、北朝鮮部隊の参戦について捜査していることを明らかにした。

(翻訳:鈴木聖子)

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