Infoseek 楽天

イーロン・マスクの「城探し」に手を挙げた17世紀古城の実力──スペースXの欧州本部に?

ニューズウィーク日本版 2025年1月15日 19時7分

シャノン・マクドナー
かつてベートーベンも滞在したポーランドの古城は大規模な改修工事に資金を必要としているが、欧州諸国の指導者はXを使って過激情報や誤情報を流布するマスクを警戒する

ポーランドの小さな町が、電気自動車(EV)テスラのイーロン・マスクCEOに熱いラブコールを送っている。同じくマスクが立ち上げた宇宙企業スペースXの欧州本部を、町が誇りとする13世紀の古城に誘致しているのだ。

【動画】ベートーベンも滞在した由緒ある古城

人口5592人の町グウォグヴェクの住民たちは、大富豪の起業家が保有する4260億ドル(約67兆円)の資産の一部を、城の改修に投じてくれることを願っている。ピョートル・ブヤク町長は1月14日、マスクが所有するソーシャルメディのX(旧Twitter)にこの申し出を投稿したと述べた。正式な書簡もマスクが率いる各社に送ったという。マスクからの返答はまだない。

報道によると、マスクはスペースXなどの欧州事業の拠点となる「城」を探している。メディアの憶測では、イタリアが候補地のひとつに挙がっていたが、ブヤクは、ベルリン、ウィーン、プラハといった主要都市に近いグウォグヴェクの立地条件が、有利にはたらくのではないかと希望を抱いている。広大な城の敷地には、ヘリコプターの離着陸場を設置する十分なスペースもある。

最古の記録は11世紀まで遡り、16世紀はじめまでポーランド最初の統治王朝ピャスト朝につらなるオポーレ公家が所有していたグウォグヴェク城は、17世紀には一時ポーランドの首都が置かれたほか、作曲家のベートーベンなど多くの偉人が滞在した歴史がある。

ブヤクによると、景観もイタリアのトスカーナに匹敵するという。



現在の城の所有者であるグウォグヴェク町は、この古城の大規模な改修工事に資金を投じてくれる民間投資家を必要としている。その資金を使って中世の建造物を修復するだけでなく、最先端の設備を備えた施設として、マスクの事業拠点に転用したい計画だ。

実業家として大胆なプロジェクトを次々と成功させてきたマスクの経歴には、変身を遂げたい古い城はぴったりのように思える。

しかし、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領の当選に貢献し、1月20日にトランプ第2期政権が発足すれば「最側近」として政権入りすることになっているマスクの最近の政治的に行き過ぎた行動は、欧州諸国の指導者たちの強い反発を受けている。

例えば、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を支持し、総選挙ではAfDに投票するよう有権者に呼びかける行動は、選挙干渉だと怒りを買っている。とりわけマスクが所有する「X(旧ツイッター)」というプラットフォームを使った過激主義や誤情報の拡散は危険視もされている。

グウォグヴェク町長のブヤクは、AP通信に次のように述べた。「ここがトスカーナより劣っているとは思わない。気候も申し分なく、地球上で最高の場所だ。城は雰囲気が良く、素晴らしいことを行なうにはぴったりだ」



城の将来は不透明だが、ブヤクは、マスクがグウォグヴェクを次の欧州拠点に選んでくれる日を待ち望んでいる。
(翻訳:ガリレオ)

【動画】ベートーベンも滞在した由緒ある古城──スペースXの欧州本部に立候補



この記事の関連ニュース