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轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋

ニューズウィーク日本版 2025年1月15日 19時40分

エリー・クック
<ドローンとミサイルを駆使し、化学工場や燃料貯蔵施設などロシア軍にとって重要な施設を各地で攻撃したウクライナ軍。その被害をとらえた写真や映像が各地で撮影され、ソーシャルメディア上で拡散されている>

ウクライナの当局者によれば、同国は一晩でロシアの複数地域をミサイルとドローンで攻撃した。ロシア軍の武器や爆弾の製造に不可欠な複数の化学工場などを標的にしたものだという。

【画像】【動画】轟音に次ぐ轟音...ATACMSミサイルによるとみられる攻撃で燃え上がるブリャンスクの化学工場

ウクライナ国家安全保障国防会議のアンドリー・コバレンコ(Andriy Kovalenko)は、ウクライナ軍は1月13日夜、ロシアのブリャンスク化学工場を攻撃したと述べた。ブリャンスク州の軍需産業施設で、ウクライナとの国境に近い。

ロシアとウクライナの情報筋によれば、ウクライナは、アメリカから供与された長距離ミサイルシステム「ATACMS」を使用したようだ。ロシア国防省は、ATACMSによる攻撃があったことを認めたが、すべて迎撃したと述べている。

ウクライナはロシア軍にとって重要な多数の施設を標的にしたとコバレンコは言う。ブリャンスク化学工場に近い、ミサイルシステムや防空システムの部品を製造しているマイクロエレクトロニクス施設や、タタールスタン共和国の化学工場などだ。

ウクライナは主に国産の長距離ドローンを使用し、空軍基地から石油精製所、化学工場まで、国境から何百キロも離れたロシアの重要な施設を標的にしてきた。

ロシアの独立系メディア「アストラ(ASTRA)」は、ウクライナが、ブリャンスク州の州都ブリャンスクの北西に位置するセリツォの化学工場を攻撃したと報じている。ロシアの保安当局とつながりがあるとされるテレグラムチャンネルは、今回の攻撃にはATACMSが使用されたと伝えている。

ウクライナの無人システム部隊は声明の中で、ドローンでロシアの防空システムを「かく乱」し、「ミサイルが主要な標的を正確に攻撃する」ための道を開いた後、「ブリャンスク化学工場に正確な一撃を食らわせた」と述べた。

ウクライナ当局は、ブリャンスク化学工場の攻撃に使われたミサイルの種類については特定しなかったが、これらの攻撃はドローン部隊や情報機関、その他の軍部による共同作戦だったと述べた。

ロシア国防省は14日、ウクライナが「米国製のATACMS戦術弾道ミサイル6発と、英国製の空中発射巡航ミサイル『ストームシャドウ』6発、無人航空機31機を使って」、ブリャンスク州の「複数の標的」に対する攻撃を試みたと発表した。

ロシア当局は、飛来したドローンとミサイルはすべて迎撃したと述べた。ウクライナ軍は、ブリャンスク化学工場の火災とする画像を共有している。

コバレンコによれば、ブリャンスク化学工場は、砲弾や爆弾に使われる「火薬の製造を専門とし」、砲弾の製造を支えているという。ウクライナは以前も同じ標的を攻撃したが、被害の程度は明らかになっていない。

さらに、ウクライナは近くのマイクロエレクトロニクス工場「クレムニーEL(Kremniy El)」も攻撃し、「そこでも何かが再び爆発した」とコバレンコは補足した。

コバレンコは、ロシア全土で「多数」の攻撃が行われたと述べたうえで、タタールスタン共和国、サラトフ州、ブリャンスク州、トゥーラ州で破壊の様子を撮影したとする動画を共有した。

ロシアとウクライナの情報筋は、タタールスタン共和国の首都カザンにある燃料貯蔵施設への攻撃について伝えている。オンラインに出回っている動画には、燃料タンクが燃える様子が映っているように見える。アストラによれば、ドローン攻撃の後、燃料タンク3基が炎上したという。

コバレンコは、ウクライナがカザン北部にあるオルグシンテズ(Orgsintez)の化学工場を攻撃したと述べ、「ロシアの軍産複合体にとって直接的な重要性がある戦略的施設」と説明している。この工場では、装甲車などの軍装備品の素材が製造されているという。

コバレンコはさらに、ロシアの防空システムは、ウクライナによるサラトフ州の攻撃を阻止できなかったと述べた。サラトフ州のロマン・ブサルギン(Roman Busargin)知事は、ウクライナが州都サラトフとエンゲリスで「大規模」なドローン攻撃を行い、2つの産業施設が被害を受けたと報告した。

トゥーラ州の知事は、ロシアの防空システムが一晩で16機のドローンを迎撃したと述べた。ロシア国営メディアの報道によれば、複数の車と建物が被害を受けたという。

ウクライナは今後も国内で開発したドローンを用いて、ロシアに対する長距離攻撃を継続する可能性が高い。ただし、ドナルド・トランプが20日に大統領に就任した後、ウクライナがアメリカからATACMSミサイルの追加供与をどの程度受けられるかは不明だ。

(翻訳:ガリレオ)

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