ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<人生の価値観について「お金より健康」「お金より家族」などと言ってしまいがちだが、本来は「お金も健康も」であり「お金も家族も」であるはずだ>
韓国出身の起業家であるケリー・チェ氏は、ファッション関連事業で約1億円の借金を負ったのち、食品チェーンを起こして復活。英国の長者番付けでベッカム夫妻より上位になった人物だ。現在はチャンネル登録者数53万人のインフルエンサーとして人生を通して成長するための啓発活動を行なう。
そんなチェ氏が成功者たちの共通習慣を分析し、富者の思考法を鍛えるための具体的な方法を綴った『富者の思考 お金が人を選んでいる』(小笠原藤子訳、CCCメディアハウス)は、韓国の大手書店サイトの「2022年今年の本(自己啓発書部門)」に選ばれ、現在112刷まで版を重ねている。
曰く、一時は返せる見込みがない借金を抱えて死まで意識したが、「とにかく生きよう」と決意したからこそ今がある。どん底で試みたのは徹底した意識改革だった。「どうせ自分は」という卑屈なマインドを捨て、「いつかは人のために」という思いで生きていこうと決めた。決意することで人生は決定的に好転しはじめたという。
意識改革に際しては、世界の成功者、単なる富豪ではなく人格的にも尊敬されている「真の富者」たちの本を読み、その思考法を研究しつくした。著作を通して彼らを自分のメンターと位置付けた。チェ氏は言う。「読むだけではだめだ。完全にその方法を習得する覚悟で成功者の功績を踏襲し、そのまま実践しなければならない」。
人生は失敗の繰り返し。だからこそ潰れずに生きるために心の持ち方を重視する。そして、自分なりに体得してきた心を鍛える方法を人々に共有して役立てたいと考えている。『お金が人を選んでいる』より、お金に対するバイアスを手放す重要性を紹介する。(全3回の前編)
◇ ◇ ◇
「お金じゃないもののほうが重要」という言葉の欺瞞
私は人々に富を築くノウハウを伝授している。その過程で、どういう理由からかお金を悪の根源のように見なす人が多いことを知った。「お金じゃないもののほうが重要」という言葉を初めて聞いた時は、物質的な生活を避け、上を目指すための道徳的な処世術のことだと思った。しかしそのうちに、それは富者に対するルサンチマンによって起こる態度だと気づいた。
ルサンチマンとは、弱者が強者に抱く憎しみ、復讐心、激情、嫉妬、 怒りが入り混じった感情だ。ドイツの哲学者ニーチェが提唱した概念で、実際は私がここで簡単に定義したものより、はるかに幅広い意味を持っている。
弱者が強者に抱く猜疑心、これに対する考えを少しだけ変えれば、新たな視点を持つことで世界を見ることができる。では、弱者は強者になるのが嫌なのだろうか? 弱者はずっと弱者であり続けたいのだろうか? そんなことはない。猜疑心の根底には貪欲が潜んでいるのだ。
「お金より幸福が重要」「お金より健康が重要」「お金より家族が重要」というように、お金より何がより大切かを説く文字や言葉に接するたび、私は危うい感覚に陥る。人生はいくつかの要素が均衡する時、ようやく安心感を抱くことができるからだ。お金が多いだけでは幸せとは言えず、家族円満だからといって懸念がないわけではない。
幸せ、健康、家族、お金などのあらゆる要素をまんべんなく手にすべきなのだ。ゆえに、お金も他の要素と同じように重要なのだ。
お金持ちになりたいのに「お金持ちは悪者」と思い込んでいないか?
あなたにも富者に対するルサンチマンがあるだろうか。お金が多い人はなんだか貪欲で、性的に乱れているようで、法の枠外で社会を嘲笑していると思っていないか。特別な理由もなく富者に対する理不尽な不快さを抱いていないか。それを問うているのだ。ルサンチマンがないなら幸いだが、もしあったとしても構わない。感情は一種の刷り込みだから、努力で十分に改善できる。
では、富者に対する否定的な見方はどのように形成されるのか? 意外と単純だ。驚くことに、我々はドラマ、映画、音楽、ニュースなどを通して非常に多くのことを学習している。多様なメディアで接する金持ちのネガティブなイメージが刷り込まれた瞬間、あたかもお金を悪の根源かのように思い込む。
周囲に大企業を成した富者がおらず、実際の見本がいないから、鵜呑みにしてしまう。しかし、本当に不可思議な点は、そのように刷り込まれた状態であっても、多くの人が富を築きたいと思っているという事実だ。
富を望むなら、富者とお金についての歪んだ考えを払拭しないといけない。実際、あなたも富を手に入れたいと思っているのでは? 内心、富を成せるのであれば、他に願い事はないとすら思っていないか?
あなたにとってお金とは何か?
これを機に経済的自由を享受するんだと決心したいなら、ペンと紙を準備して、次の2つの質問に正直に答えよ。
問1: あなたにとって富者とは何か?
問2: あなたにとってお金とは何か?
あなたが書いた内容を、もう一度よく見よ。金持ちとお金に対してどのような感情を抱いているか。幼い頃、お金にまつわるどんな話を聞いて育ったのか。誰がそのイメージを植え付けたのか。あなたから見てケリー・チェは金の亡者に見えるか。
私自身も、金持ちとお金についてネガティブに考えたことがあった。だが、〈ウェルシンキング(富者の思考)〉を通して、その偏見から解放された。
問1:あなたにとって富者とは何か?(ケリーの回答)
優しい人、人助けができる人、愛することを知り、かつ愛される人、尊敬される人、寛容な人、懸命に生きてきた人、友人になりたい人、周囲に目配りができる人、知恵のある人、人を救える人、自分に決定権がある人、社会的利益のために率先する人、動物を愛する人、環境を保護する人......。
問2:あなたにとってお金とは何か?(ケリーの回答)
多くあるべきもの、人助けの手段、あれば便利なもの、大抵の解決策、必ず持つべきもの、努力の結果、分け与えられるもの、やりがいの象徴、病気を治してくれるもの、余裕、母にあげたいもの......。
金持ちとお金についての私の見解だ。ネガティブな考えは、これっぽっちもない。私の潜在意識の中に溢れていた金持ちやお金へのポジティブな考えが、今いる場所にまで私を導いた。万が一、お金持ちとお金を、罵倒し、呪い、蔑視する人間だったら、今のケリー・チェは存在しなかっただろう。
お金に対する正しい感情がいい結果をもたらす
私は〈ウェルシンキング〉で、お金の持つポジティブな価値の数々を潜在意識の中に投影した。「お金を稼ぐことは、容易くおもしろい」「お金は優しく、幸福をもたらす」「お金は無限だ」と、繰り返した。お金は限られているから分け与えるべきであり、自分が持っていれば、他人の分まで奪ってしまうと考える人がいる。これは、誤りだ。お金持ちは、お金を無限だと捉える。実際その通りだ。
「金持ちだ」「資産が多い」というのは、単なる結果にすぎない。結果には必ず原因がある。原因の本質は考え方だ。私は富者になるために考えを改め、〈ウェルシンキング〉を始めたのだ。
思考が感情を呼び、感情が行動を呼び、行動が結果を呼び起こすという事実を忘れてはならない。金持ちは、詐欺師、強欲の塊、パワハラをする人、悪人、ではない。そのように行動する人たちもいるというだけだ。健康や愛、幸福のように富も重要で、必ずや手に入れるべきものだ。潜在意識のうちに隠れている、金持ちやお金に対する悪い認識をすべて打ち消せ。
◇ ◇ ◇
ケリー・チェ(Kelly Choi)
ヨーロッパ12ヵ国で寿司販売を中心としたアジア系食品フランチャイズチェーンを1200店舗展開する、グローバル企業「ケリーデリ(KellyDeli)」の創業者/会長(2021年当時)。全羅北道で生まれ、ソウルの縫製工場で働きながら夜間定時制高等学校を卒業。30代でパリでファッション事業を立ち上げるが、10億ウォン(約1 億円)の借金を抱える。これを機に、〈富者の思考〉と習慣を体得するため、1000人の成功者に学ぶ。2010年にケリー・デリを立ち上げ、2020年、「サンデー・タイムズ」が選ぶイギリスの資産家345位。
現在は、経営と〈富者の思考〉を伝えるために「ウェルシンキング・アカデミー」を設立。YouTubeやInstagram、講演活動を通じて啓発活動を続けている。著書に『パリでお弁当を売る女』(2021年、未邦訳)、『100日朝習慣の奇跡』(2023年、未邦訳)がある。。2022年には本書が大手ブックサイトYes24の「今年の本」に選出され、100刷突破記念刊行で表紙の装いを新たにした。
『富者の思考 お金が人を選んでいる』
ケリー・チェ[著]
小笠原藤子[訳]
CCCメディアハウス[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
<人生の価値観について「お金より健康」「お金より家族」などと言ってしまいがちだが、本来は「お金も健康も」であり「お金も家族も」であるはずだ>
韓国出身の起業家であるケリー・チェ氏は、ファッション関連事業で約1億円の借金を負ったのち、食品チェーンを起こして復活。英国の長者番付けでベッカム夫妻より上位になった人物だ。現在はチャンネル登録者数53万人のインフルエンサーとして人生を通して成長するための啓発活動を行なう。
そんなチェ氏が成功者たちの共通習慣を分析し、富者の思考法を鍛えるための具体的な方法を綴った『富者の思考 お金が人を選んでいる』(小笠原藤子訳、CCCメディアハウス)は、韓国の大手書店サイトの「2022年今年の本(自己啓発書部門)」に選ばれ、現在112刷まで版を重ねている。
曰く、一時は返せる見込みがない借金を抱えて死まで意識したが、「とにかく生きよう」と決意したからこそ今がある。どん底で試みたのは徹底した意識改革だった。「どうせ自分は」という卑屈なマインドを捨て、「いつかは人のために」という思いで生きていこうと決めた。決意することで人生は決定的に好転しはじめたという。
意識改革に際しては、世界の成功者、単なる富豪ではなく人格的にも尊敬されている「真の富者」たちの本を読み、その思考法を研究しつくした。著作を通して彼らを自分のメンターと位置付けた。チェ氏は言う。「読むだけではだめだ。完全にその方法を習得する覚悟で成功者の功績を踏襲し、そのまま実践しなければならない」。
人生は失敗の繰り返し。だからこそ潰れずに生きるために心の持ち方を重視する。そして、自分なりに体得してきた心を鍛える方法を人々に共有して役立てたいと考えている。『お金が人を選んでいる』より、お金に対するバイアスを手放す重要性を紹介する。(全3回の前編)
◇ ◇ ◇
「お金じゃないもののほうが重要」という言葉の欺瞞
私は人々に富を築くノウハウを伝授している。その過程で、どういう理由からかお金を悪の根源のように見なす人が多いことを知った。「お金じゃないもののほうが重要」という言葉を初めて聞いた時は、物質的な生活を避け、上を目指すための道徳的な処世術のことだと思った。しかしそのうちに、それは富者に対するルサンチマンによって起こる態度だと気づいた。
ルサンチマンとは、弱者が強者に抱く憎しみ、復讐心、激情、嫉妬、 怒りが入り混じった感情だ。ドイツの哲学者ニーチェが提唱した概念で、実際は私がここで簡単に定義したものより、はるかに幅広い意味を持っている。
弱者が強者に抱く猜疑心、これに対する考えを少しだけ変えれば、新たな視点を持つことで世界を見ることができる。では、弱者は強者になるのが嫌なのだろうか? 弱者はずっと弱者であり続けたいのだろうか? そんなことはない。猜疑心の根底には貪欲が潜んでいるのだ。
「お金より幸福が重要」「お金より健康が重要」「お金より家族が重要」というように、お金より何がより大切かを説く文字や言葉に接するたび、私は危うい感覚に陥る。人生はいくつかの要素が均衡する時、ようやく安心感を抱くことができるからだ。お金が多いだけでは幸せとは言えず、家族円満だからといって懸念がないわけではない。
幸せ、健康、家族、お金などのあらゆる要素をまんべんなく手にすべきなのだ。ゆえに、お金も他の要素と同じように重要なのだ。
お金持ちになりたいのに「お金持ちは悪者」と思い込んでいないか?
あなたにも富者に対するルサンチマンがあるだろうか。お金が多い人はなんだか貪欲で、性的に乱れているようで、法の枠外で社会を嘲笑していると思っていないか。特別な理由もなく富者に対する理不尽な不快さを抱いていないか。それを問うているのだ。ルサンチマンがないなら幸いだが、もしあったとしても構わない。感情は一種の刷り込みだから、努力で十分に改善できる。
では、富者に対する否定的な見方はどのように形成されるのか? 意外と単純だ。驚くことに、我々はドラマ、映画、音楽、ニュースなどを通して非常に多くのことを学習している。多様なメディアで接する金持ちのネガティブなイメージが刷り込まれた瞬間、あたかもお金を悪の根源かのように思い込む。
周囲に大企業を成した富者がおらず、実際の見本がいないから、鵜呑みにしてしまう。しかし、本当に不可思議な点は、そのように刷り込まれた状態であっても、多くの人が富を築きたいと思っているという事実だ。
富を望むなら、富者とお金についての歪んだ考えを払拭しないといけない。実際、あなたも富を手に入れたいと思っているのでは? 内心、富を成せるのであれば、他に願い事はないとすら思っていないか?
あなたにとってお金とは何か?
これを機に経済的自由を享受するんだと決心したいなら、ペンと紙を準備して、次の2つの質問に正直に答えよ。
問1: あなたにとって富者とは何か?
問2: あなたにとってお金とは何か?
あなたが書いた内容を、もう一度よく見よ。金持ちとお金に対してどのような感情を抱いているか。幼い頃、お金にまつわるどんな話を聞いて育ったのか。誰がそのイメージを植え付けたのか。あなたから見てケリー・チェは金の亡者に見えるか。
私自身も、金持ちとお金についてネガティブに考えたことがあった。だが、〈ウェルシンキング(富者の思考)〉を通して、その偏見から解放された。
問1:あなたにとって富者とは何か?(ケリーの回答)
優しい人、人助けができる人、愛することを知り、かつ愛される人、尊敬される人、寛容な人、懸命に生きてきた人、友人になりたい人、周囲に目配りができる人、知恵のある人、人を救える人、自分に決定権がある人、社会的利益のために率先する人、動物を愛する人、環境を保護する人......。
問2:あなたにとってお金とは何か?(ケリーの回答)
多くあるべきもの、人助けの手段、あれば便利なもの、大抵の解決策、必ず持つべきもの、努力の結果、分け与えられるもの、やりがいの象徴、病気を治してくれるもの、余裕、母にあげたいもの......。
金持ちとお金についての私の見解だ。ネガティブな考えは、これっぽっちもない。私の潜在意識の中に溢れていた金持ちやお金へのポジティブな考えが、今いる場所にまで私を導いた。万が一、お金持ちとお金を、罵倒し、呪い、蔑視する人間だったら、今のケリー・チェは存在しなかっただろう。
お金に対する正しい感情がいい結果をもたらす
私は〈ウェルシンキング〉で、お金の持つポジティブな価値の数々を潜在意識の中に投影した。「お金を稼ぐことは、容易くおもしろい」「お金は優しく、幸福をもたらす」「お金は無限だ」と、繰り返した。お金は限られているから分け与えるべきであり、自分が持っていれば、他人の分まで奪ってしまうと考える人がいる。これは、誤りだ。お金持ちは、お金を無限だと捉える。実際その通りだ。
「金持ちだ」「資産が多い」というのは、単なる結果にすぎない。結果には必ず原因がある。原因の本質は考え方だ。私は富者になるために考えを改め、〈ウェルシンキング〉を始めたのだ。
思考が感情を呼び、感情が行動を呼び、行動が結果を呼び起こすという事実を忘れてはならない。金持ちは、詐欺師、強欲の塊、パワハラをする人、悪人、ではない。そのように行動する人たちもいるというだけだ。健康や愛、幸福のように富も重要で、必ずや手に入れるべきものだ。潜在意識のうちに隠れている、金持ちやお金に対する悪い認識をすべて打ち消せ。
◇ ◇ ◇
ケリー・チェ(Kelly Choi)
ヨーロッパ12ヵ国で寿司販売を中心としたアジア系食品フランチャイズチェーンを1200店舗展開する、グローバル企業「ケリーデリ(KellyDeli)」の創業者/会長(2021年当時)。全羅北道で生まれ、ソウルの縫製工場で働きながら夜間定時制高等学校を卒業。30代でパリでファッション事業を立ち上げるが、10億ウォン(約1 億円)の借金を抱える。これを機に、〈富者の思考〉と習慣を体得するため、1000人の成功者に学ぶ。2010年にケリー・デリを立ち上げ、2020年、「サンデー・タイムズ」が選ぶイギリスの資産家345位。
現在は、経営と〈富者の思考〉を伝えるために「ウェルシンキング・アカデミー」を設立。YouTubeやInstagram、講演活動を通じて啓発活動を続けている。著書に『パリでお弁当を売る女』(2021年、未邦訳)、『100日朝習慣の奇跡』(2023年、未邦訳)がある。。2022年には本書が大手ブックサイトYes24の「今年の本」に選出され、100刷突破記念刊行で表紙の装いを新たにした。
『富者の思考 お金が人を選んでいる』
ケリー・チェ[著]
小笠原藤子[訳]
CCCメディアハウス[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)