木村正人
<17歳の女性従業員に性的関係を迫るマネジャーに、わいせつな画像を送りつける同僚。吐き気を催すような事例が次々と明らかに>
[ロンドン発]「現在(英国の)マクドナルドでは160件の虐待が英BBC放送に報告されている。平等人権委員会には300件の報告がある。マクドナルドの現・元従業員700人が法的措置を取っている。マクドナルドはプレデター(捕食者)の楽園になっているのか」
1月7日、英下院ビジネス貿易特別委員会でリアム・バーン委員長(労働党)は「被害者の1人は上司から不適切な扱いを受け、訴えたところ『いい加減にしろ』と言われたとBBCに証言している」とマクドナルド英国・アイルランドの経営陣を追及した。
「別の女性従業員は男性マネジャーが上半身裸の写真を送ってきたと証言している。また17歳の女性従業員はシフトを増やす見返りにシフトマネジャーからセックスを要求された。1年前あなたはこのような行為や行為者をビジネスから根絶すると誓ったが、改革に失敗した」
性器を見せ「赤ん坊を作りたい」と迫るマネジャー
2023年、BBCはマクドナルドの職場で常態化している性的虐待とハラスメントを独自に調査して撲滅キャンペーンを展開した。吐き気を催す事例が次々と報道された。
女性元従業員(17)は20歳年上の同僚から人種差別的な言葉を浴びせられた上、性器を見せられ「赤ん坊を作りたい」と言われた。別の女性元従業員(17)はシニアマネジャーに首を絞められたり尻をつかまれたりし、シフトマネジャーからは性的な画像を送りつけられた。
ベイプ(電子タバコ)と引き換えに性行為をするようマネジャーからほのめかされた16歳の男性従業員もいた。16歳の新人女性にセックスを迫るマネジャー。どちらが先に新人従業員とセックスできるか現金を賭けて冗談を言い合う男性マネジャーと先輩従業員......。
47人が懲戒処分、29人が解雇
中傷的な言葉、人種差別的なジョーク、反ユダヤ主義的な虐待、スタッフ間の性的関係が職場で常態化していた。マクドナルド英国・アイルランドのアリスター・マクロウ最高経営責任者(CEO)は同年11月、同特別委員会で職場文化を根本的に改革すると誓った。
従業員がオンラインで職場での性的虐待やハラスメントを告発できる仕組みを導入。これまでに75件の告発があり、47人が懲戒処分を受け、29人が解雇されたとマクロウ氏は報告した。しかし1月7日に合わせたBBC報道を見る限り性的虐待やハラスメントは改められていない。
原因の一つと考えられるのは、9割近くの従業員が使用者の求めに応じ働いた時間分の賃金を受け取るゼロ時間(待機労働)契約を結んでいることだ。表向き最低保証時間への切り替えを選択できるが、何人かはゼロ時間契約の不安定さが力の格差につながっていると証言している。
狡猾な捕食者は脆弱さにつけ込んでくる
マクドナルドは英国最大の民間雇用者の一つで、1400店以上で16万8000人を雇っている。約1万7000人が時間保証契約を選択し、残りはゼロ時間契約のようなフレキシブルな雇用形態を選択している。従業員の大半は16~25歳。その多くはマクドナルドが初めての仕事だ。
マクロウ氏は「マクドナルドで働く人はフレキシブル契約か時間保証契約のどちらかを選ぶことができる。従業員の7割近くが25歳以下で、フレキシブル契約は若者に人気がある」と説明する。しかし狡猾な捕食者は若者たちの脆弱さに巧みにつけ込んでくる。
収入を増やすにはできるだけ多くシフトを入れてもらう必要があるため、マネジャーの権限は大きくなる。こうした若い従業員とマネジャーの力の格差が性的虐待とハラスメントの温床になる。権力と密室は現代社会でもいとも簡単に捕食者と搾取構造を作り出す。
米ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏の性的暴行、「ジャニーズ王国」創設者、故ジャニー喜多川氏の児童性的虐待、タレントの中居正広さんと女性とのトラブルにフジテレビ社員が関与したと週刊文春が報じた問題も根っこは同じと言えるだろう。
<17歳の女性従業員に性的関係を迫るマネジャーに、わいせつな画像を送りつける同僚。吐き気を催すような事例が次々と明らかに>
[ロンドン発]「現在(英国の)マクドナルドでは160件の虐待が英BBC放送に報告されている。平等人権委員会には300件の報告がある。マクドナルドの現・元従業員700人が法的措置を取っている。マクドナルドはプレデター(捕食者)の楽園になっているのか」
1月7日、英下院ビジネス貿易特別委員会でリアム・バーン委員長(労働党)は「被害者の1人は上司から不適切な扱いを受け、訴えたところ『いい加減にしろ』と言われたとBBCに証言している」とマクドナルド英国・アイルランドの経営陣を追及した。
「別の女性従業員は男性マネジャーが上半身裸の写真を送ってきたと証言している。また17歳の女性従業員はシフトを増やす見返りにシフトマネジャーからセックスを要求された。1年前あなたはこのような行為や行為者をビジネスから根絶すると誓ったが、改革に失敗した」
性器を見せ「赤ん坊を作りたい」と迫るマネジャー
2023年、BBCはマクドナルドの職場で常態化している性的虐待とハラスメントを独自に調査して撲滅キャンペーンを展開した。吐き気を催す事例が次々と報道された。
女性元従業員(17)は20歳年上の同僚から人種差別的な言葉を浴びせられた上、性器を見せられ「赤ん坊を作りたい」と言われた。別の女性元従業員(17)はシニアマネジャーに首を絞められたり尻をつかまれたりし、シフトマネジャーからは性的な画像を送りつけられた。
ベイプ(電子タバコ)と引き換えに性行為をするようマネジャーからほのめかされた16歳の男性従業員もいた。16歳の新人女性にセックスを迫るマネジャー。どちらが先に新人従業員とセックスできるか現金を賭けて冗談を言い合う男性マネジャーと先輩従業員......。
47人が懲戒処分、29人が解雇
中傷的な言葉、人種差別的なジョーク、反ユダヤ主義的な虐待、スタッフ間の性的関係が職場で常態化していた。マクドナルド英国・アイルランドのアリスター・マクロウ最高経営責任者(CEO)は同年11月、同特別委員会で職場文化を根本的に改革すると誓った。
従業員がオンラインで職場での性的虐待やハラスメントを告発できる仕組みを導入。これまでに75件の告発があり、47人が懲戒処分を受け、29人が解雇されたとマクロウ氏は報告した。しかし1月7日に合わせたBBC報道を見る限り性的虐待やハラスメントは改められていない。
原因の一つと考えられるのは、9割近くの従業員が使用者の求めに応じ働いた時間分の賃金を受け取るゼロ時間(待機労働)契約を結んでいることだ。表向き最低保証時間への切り替えを選択できるが、何人かはゼロ時間契約の不安定さが力の格差につながっていると証言している。
狡猾な捕食者は脆弱さにつけ込んでくる
マクドナルドは英国最大の民間雇用者の一つで、1400店以上で16万8000人を雇っている。約1万7000人が時間保証契約を選択し、残りはゼロ時間契約のようなフレキシブルな雇用形態を選択している。従業員の大半は16~25歳。その多くはマクドナルドが初めての仕事だ。
マクロウ氏は「マクドナルドで働く人はフレキシブル契約か時間保証契約のどちらかを選ぶことができる。従業員の7割近くが25歳以下で、フレキシブル契約は若者に人気がある」と説明する。しかし狡猾な捕食者は若者たちの脆弱さに巧みにつけ込んでくる。
収入を増やすにはできるだけ多くシフトを入れてもらう必要があるため、マネジャーの権限は大きくなる。こうした若い従業員とマネジャーの力の格差が性的虐待とハラスメントの温床になる。権力と密室は現代社会でもいとも簡単に捕食者と搾取構造を作り出す。
米ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏の性的暴行、「ジャニーズ王国」創設者、故ジャニー喜多川氏の児童性的虐待、タレントの中居正広さんと女性とのトラブルにフジテレビ社員が関与したと週刊文春が報じた問題も根っこは同じと言えるだろう。