マイカ・マッカートニー
<中国は、ノルマンディーと違って広い海岸が少ない台湾に上陸するための「解決策」を準備している>
中国で台湾上陸作戦用に特化した設計ともみられるバージ(艀)の建造が進んでいる。第二次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦のときに連合軍が建設したマルベリー港(桟橋)を連想させる構造物だ。
【動画】台湾侵攻に向けバージを建造し、海軍を訓練する中国
中国はここ数年台湾への締め付けを強化している。中国軍機が毎日のように台湾の防空識別圏に侵入し、台湾封鎖を想定した大規模な軍事演習も実施している。
中国共産党政権は過去に一度も台湾を統治したことはないが、中国政府は台湾は自国の領土であると主張し、武力を行使してでも併合すると誓っている。
ウィリアム・バーンズCIA長官ら米政府高官は、中国の習近平国家主席が自身の3期目が終わる2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう指示したとみている(同時に、侵攻に踏み切るとは限らないとも述べている)。
中国南東部の広州市にある造船会社・広船国際の造船所で、少なくとも3隻のバージが確認されたと、海軍専門メディアのネーバル・ニューズが複数の匿名の情報筋の話として伝えた。
これらのバージは、移動式の桟橋として機能する。3隻とも舳先から120メートル以上も突き出した桟橋のような構造物をもつ。積載された戦車やトラックはこの桟橋を使えば、厄介な砂浜を通らずに海から直接沿岸部の道路に上陸できる。
中国はいわゆるRORO船(ロールオン・ロールオフ船)の建造も加速させている。RORO船には作り付けのランプウェイ(傾斜路)があり、積まれた大型車両はそこを走って素早く下船できる。戦時には軍事車両の輸送にも使う。
安全保障問題アナリストで、米海軍大学の中国海事研究所の准教授でもあるイアン・イーストンによると、台湾本島は南北に山脈が連なる険しい地形で、中国軍が上陸できる海岸は限られている上、台湾海峡は広くはないが潮流が速く、台風シーズンなど渡航困難な時期も多いため、大規模な侵攻作戦を決行できるのは年間2 カ月間だけだ。
米シンクタンク・ランド研究所の政治学者レイモンド・クオは本誌に次のように語った。「これらのバージには軍事以外の用途もあるにせよ、大型車両が沿岸部の道路にすぐさま乗り込めるため、侵攻作戦では台湾の防衛戦略を無効化できるだろう。
とはいえ、中国は今のところせいぜい5、6隻しかバージを建造していない。これでは、何往復しても、大規模な侵攻作戦に必要な軍用車両や兵員を運ぶことは不可能だ。台湾侵攻に使うとすれば、台湾軍の抵抗を撃破して占領した港湾に支援部隊を送り込むなど、戦術面の選択肢を広げるために用いる程度だろう」
一方、元CIAの東アジア担当分析官ジョン・カルバーはXにこう投稿した。「先週露見した新型の移動式桟橋は、今後1年半〜2年の間に中国軍が衝撃的な新しい能力を有する可能性を示している」
ただし「中国軍の作戦決行を妨げる障壁は依然として非常に大きい」とカルバーはいう。「侵攻なり封鎖をするには、解決すべき問題がまだ多い」
その解決策の1つが移動式の桟橋だ。「十分な数を建造すれば、大規模な上陸作戦が可能になるだろう」と、カルバーはみている。
軍事用RORO船 Kanal13/YouTube
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<中国は、ノルマンディーと違って広い海岸が少ない台湾に上陸するための「解決策」を準備している>
中国で台湾上陸作戦用に特化した設計ともみられるバージ(艀)の建造が進んでいる。第二次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦のときに連合軍が建設したマルベリー港(桟橋)を連想させる構造物だ。
【動画】台湾侵攻に向けバージを建造し、海軍を訓練する中国
中国はここ数年台湾への締め付けを強化している。中国軍機が毎日のように台湾の防空識別圏に侵入し、台湾封鎖を想定した大規模な軍事演習も実施している。
中国共産党政権は過去に一度も台湾を統治したことはないが、中国政府は台湾は自国の領土であると主張し、武力を行使してでも併合すると誓っている。
ウィリアム・バーンズCIA長官ら米政府高官は、中国の習近平国家主席が自身の3期目が終わる2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう指示したとみている(同時に、侵攻に踏み切るとは限らないとも述べている)。
中国南東部の広州市にある造船会社・広船国際の造船所で、少なくとも3隻のバージが確認されたと、海軍専門メディアのネーバル・ニューズが複数の匿名の情報筋の話として伝えた。
これらのバージは、移動式の桟橋として機能する。3隻とも舳先から120メートル以上も突き出した桟橋のような構造物をもつ。積載された戦車やトラックはこの桟橋を使えば、厄介な砂浜を通らずに海から直接沿岸部の道路に上陸できる。
中国はいわゆるRORO船(ロールオン・ロールオフ船)の建造も加速させている。RORO船には作り付けのランプウェイ(傾斜路)があり、積まれた大型車両はそこを走って素早く下船できる。戦時には軍事車両の輸送にも使う。
安全保障問題アナリストで、米海軍大学の中国海事研究所の准教授でもあるイアン・イーストンによると、台湾本島は南北に山脈が連なる険しい地形で、中国軍が上陸できる海岸は限られている上、台湾海峡は広くはないが潮流が速く、台風シーズンなど渡航困難な時期も多いため、大規模な侵攻作戦を決行できるのは年間2 カ月間だけだ。
米シンクタンク・ランド研究所の政治学者レイモンド・クオは本誌に次のように語った。「これらのバージには軍事以外の用途もあるにせよ、大型車両が沿岸部の道路にすぐさま乗り込めるため、侵攻作戦では台湾の防衛戦略を無効化できるだろう。
とはいえ、中国は今のところせいぜい5、6隻しかバージを建造していない。これでは、何往復しても、大規模な侵攻作戦に必要な軍用車両や兵員を運ぶことは不可能だ。台湾侵攻に使うとすれば、台湾軍の抵抗を撃破して占領した港湾に支援部隊を送り込むなど、戦術面の選択肢を広げるために用いる程度だろう」
一方、元CIAの東アジア担当分析官ジョン・カルバーはXにこう投稿した。「先週露見した新型の移動式桟橋は、今後1年半〜2年の間に中国軍が衝撃的な新しい能力を有する可能性を示している」
ただし「中国軍の作戦決行を妨げる障壁は依然として非常に大きい」とカルバーはいう。「侵攻なり封鎖をするには、解決すべき問題がまだ多い」
その解決策の1つが移動式の桟橋だ。「十分な数を建造すれば、大規模な上陸作戦が可能になるだろう」と、カルバーはみている。
軍事用RORO船 Kanal13/YouTube
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