Infoseek 楽天

早くも困難に直面...トランプ新大統領が就任初日に果たせなかった5つの「重要な公約」

ニューズウィーク日本版 2025年1月24日 12時0分

マーサ・マクハーディ
<国境封鎖、戦争の終結、関税課税──野心的な政策が注目されたが、その実現状況はどうなっているのか。共和党が直面する課題とともに検証する>

選挙運動中、ドナルド・トランプ大統領は就任初日に実現すると約束した数々の野心的な公約を掲げていた。

大幅な政策変更や重要な大統領令に至るまで、トランプ氏の「初日」アジェンダは有権者を引きつける大きな要素だった。しかし、月曜日に正式に大統領に就任した後、その大胆な公約の多くは実現されないままとなった。

トランプ氏が「初日」の公約を多く果たせなかったことは、政治の常識を覆すリーダーとして知られる彼でさえ、大胆な発言を具体的な政策に落とし込む難しさに直面していることを浮き彫りにしている。

現在、共和党はトランプ氏の野心的な計画を具体的な政策として実現するという困難な課題に直面している。

トランプ氏は就任日に100以上の大統領令に署名し、その多くはパリ協定からの離脱や米墨国境への部隊派遣といった選挙公約に基づいたものだった。

しかし、一部の公約は果たされなかった。

1. ウクライナ戦争の終結

トランプ氏は、就任後24時間以内にロシアとウクライナの戦争を終わらせると主張していた。しかし、Financial Timesによれば、就任前にそのタイムラインを「数カ月」に修正したと報じられている。

「(トランプ)チーム全体が力強さと強く見せることに執着しているため、ウクライナ対応を再調整している」と、ある欧州当局者が同紙に語った。

その後、トランプ氏は「6カ月」が戦争を終結させる現実的な目標だと示唆し、一方でトランプ氏が任命したウクライナ特使のキース・ケロッグ氏は、Fox Newsで「100日以内に紛争を終わらせることが目標だ」と語った。

2023年11月、トランプ氏の選挙勝利後、マルコ・ルビオ上院議員は、この戦争を解決するためには「非常に困難な選択」が必要であり、ロシアとウクライナ双方が妥協する必要があると述べた。

「私たちは紛争が終わることを望んでいるが、それには非常に困難な選択が必要だ」とルビオ氏は語った。「ロシアがウクライナ全土を掌握することはあり得ない。ウクライナ人はあまりに勇敢で、あまりに激しく戦っており、国はあまりにも広大だ。それは起こらない」

しかし、彼は同時にこうも述べた。

「ウクライナが侵攻前の状態までロシア軍を押し戻すことも不可能だ」

国境の封鎖

トランプ氏は以前、就任初日に米墨国境を封鎖すると約束していた。

「私は国境を閉鎖したい」と、2023年12月にトランプ氏は発言した。

さらに、7月の選挙集会では、「トランプ政権の初日に、渡航禁止令を復活させ、難民の受け入れを停止し、再定住プログラムを中断して、テロリストをこの国から完全に追い出す」と述べ、より強硬な姿勢を示した。

しかし、就任初日に発令された複数の大統領令は国境警備を強化するものであり、国境を完全に封鎖するものではなかった。

トランプ氏の大統領令は、国境に非常事態を宣言し、不法移民の子供に対する出生地主義を廃止し、連邦移民当局と協力を拒否する「サンクチュアリ・シティ(聖域都市)」と州への取り締まりを強化する内容だった。また、国防総省に対して、国土安全保障長官が国境の「完全な作戦統制」を確保するために必要な部隊や資源を提供するよう命じた。さらに、軍が移民を防ぐための国境壁の建設を支援するよう指示を出した。

一方で、第1期の政権開始時に導入された「イスラム教徒入国禁止令」と呼ばれた渡航禁止令と同じ内容を実施することはなかった。しかし、1月20日に署名した大統領令では、各国の審査およびスクリーニングプロセスが「不十分である」と判断された場合、その国の国民の入国を部分的または完全に停止する可能性を検討するよう、国務省、司法省、情報機関、国土安全保障省の高官らに60日以内の報告を求めた。

アメリカの市民権団体は、この命令がイスラム教徒入国禁止令を再導入するための土台となる可能性があると警告している。

3. ドローン情報の公開

今月初め、トランプ氏は昨年ニュージャージー州で発生したドローン目撃事件に関する報告書を公開することを約束していた。

「政権開始から1日以内に、ドローンについての報告をする」と、トランプ氏はフロリダ州マー・ア・ラゴの邸宅で共和党知事たちを前に語った。

「政府がドローンについて何が起きているのかを話さないのは馬鹿げていると思う」

「敵ではないと願っているが、21日、つまり就任翌日にその真相を明らかにする。就任式の時間を少しだけもらいたいが、その後すぐに報告をするつもりだ。何が起きているのか正確に教える。彼らは知っているのに、それを話さないのは奇妙だ」とトランプ氏は述べた。

軍や州議員によると、ドローンはピカティニー・アーセナル(兵器廠)やトランプ氏のベドミンスターのゴルフ場付近で目撃された。この目撃情報を受けて、連邦航空局(FAA)は一時的な飛行禁止令をこれらの地域に発令した。

先月、トランプ氏は記者会見でドローンについて質問された際、「政府は何が起きているかを知っている」と述べていた。

ドローンの出所は依然として不明のままである。

4. 関税の課税

トランプ氏は以前、中国、メキシコ、カナダを含む各国に追加関税を課すことや、すべての輸入品に対して10~20%の一律関税を導入する考えを示していた。

しかし、ホワイトハウスに復帰した初日には、彼が掲げた最大の経済政策に関する大きな動きはなかった。ただし、歴史的な新関税が導入される可能性があることを明確にした。

「メキシコとカナダには25%を考えている」と、月曜日に大統領令に署名しながらトランプ氏は述べた。「2月1日にこれを実施するつもりだと思う」とも語った。

さらに、一律関税の導入も引き続き検討しているが、実施時期はもう少し先になる可能性があるとし、「どの国も程度の差はあれアメリカを搾取している」と述べた。

また、中国がTikTokの事業分割案を承認しない場合には、中国にも関税を課す可能性があることを示唆した。

5. 独裁者になる発言

トランプ氏は、大統領就任前に「初日は独裁者になる」とも受け取れる驚きの発言をした。

2023年12月、Fox Newsのショーン・ハニティ氏が司会の番組で、2期目を獲得した場合に報復措置を取るのかと質問された際、トランプ氏はこう答えた。

「(ハニティ氏は)素晴らしい奴だ」とトランプ氏は笑いながら言った。「彼が『あなたは独裁者にはならないですよね?』と聞いた。私はこう答えたんだ。『いやいや、初日を除いてね。国境を閉鎖し、石油を掘る。掘って掘って掘りまくるんだ。それが終わったら、私は独裁者じゃない』とね」

初日に国境閉鎖は実現しなかったものの、トランプ氏は就任演説で「掘れ、掘れ、掘りまくれ」と石油採掘の推進を誓った。また、大統領令を次々と署名し、自身の政策を固める第一歩を踏み出した。その中には、何千人もの連邦職員を「政治任用」に再分類し、大統領やその方針に忠実でないとみなされた場合に解雇しやすくするものも含まれていた。

トランプ氏が掲げた大胆な公約の多くを実現するには、議会の支持が必要となる。共和党内では、彼の野心的な計画を議会で通過させる方法について、まだ一致を見出せていない状況だ。

【随時更新】トランプ政権の最新ニュース・ニューズウィーク独自分析・解説


この記事の関連ニュース