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ガザを「解体現場」にしたのはそもそも誰か?── イスラエル極右と同調するトランプにアラブの報い

ニューズウィーク日本版 2025年1月27日 20時1分

マンディ・タヘリ
<中東でも調子に乗るトランプだが、イスラエル一辺倒でガザの人々を家畜同然に扱うなら、アメリカはアラブの反発を受けかねない。アジアでさえ、インドネシアが1月にBRICsに正式参加表明をしたのは、人口の9割を占めるイスラム教徒の怒りが背景にあると言われる>

トランプは、ヨルダンとエジプトがパレスチナ自治区ガザからパレスチナ難民を受け入れ、ガザ地区を「空にする」ことを望んでいると述べた。

ガザ保健省によれば、イスラエルとハマスの15カ月以上にわたる戦争で、ガザは荒廃し、4万7000人以上のパレスチナ人が死亡した。国連によれば、イスラエルの爆撃により、少なくとも190万人(人口の約90%)が国内避難民となっている。

 

この紛争でガザの大部分が破壊され、家族は住まいを奪われて離散し、医療システムは荒廃した。

イスラエル政府の一部高官は、パレスチナ人をガザからエジプトのシナイ半島や他のアラブ諸国に移住させることを提案している。パレスチナの団体や国際機関は、この提案を強制移住や民族浄化だと非難している。提案されている移転は、パレスチナ人から、彼らの歴史、アイデンティティ、文化の礎である故郷を奪うことになる。

ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、約250人の人質をとって以来、イスラエルはこれに対抗して、ガザへの空爆と地上侵攻を実施した上、住民に必要な援助物資の搬入経路を封鎖してきた。

1月25日、トランプは大統領専用機エアフォースワンの機内で、ガザで進行中の危機について記者団に語った。

AP通信によれば、トランプは、ヨルダンのアブドラ2世国王に「もっと(パレスチナ人を)引き受けてほしい。なぜなら、今、ガザ地区全体を見ているんだが、ひどい混乱だ。混乱の極みだ」と伝えたという。

ヨルダンはすでに多くのパレスチナ人を受け入れており、国連の報告によれば、その国内に登録済みのパレスチナ難民が239万人以上居住している。

 

トランプは、この問題についてエジプト大統領アブデル・ファタハ・アル・シシとも話すつもりだと付け加え、「エジプトにも難民を受け入れてもらいたい」と述べた。

さらに記者団にこの計画をもう少し詳しく説明し、ガザを指して「そこにいる150万人を、すべて追い出す」と語った。

ガザは「文字通り解体現場になっている。ほとんどすべてが破壊だれ、人々は死んでいる。だから、むしろアラブ諸国と協力して、人々が平和に暮らせる別の場所に住宅を建てる方がいい」とも述べた。

移動の時期について尋ねられたトランプは、「一時的なものかもしれないし、長期的なものかもしれない」と答えた。

トランプは大統領就任初日、ガザについてこう語っている。「本当に何か別の方法で再建しなければならない。ガザは興味深い。海に面していて、立地は素晴らしい。気候は最高で、何もかもがいい。何か素晴らしいことができるかもしれない。とにかく興味深い」

 

また、エアフォースワンの機内での記者との会話の中で、トランプは、バイデン前政権が停止していたイスラエルへの重量2000ポンド(約900キロ)の大型爆弾MK84の供与を再開したことを発表した。この爆弾を「イスラエルは長い間待っていた」と語り、再開の理由として「彼らが買ったから」と付け加えた。

イスラエルとハマスは最近の合意に基づいて19日より停戦を開始、パレスチナ人捕虜とイスラエル人質の交換が2度にわたって行われた。

エジプトのモタズ・ザーラン駐米大使は26日、ワシントンの政界ニュース紙ザ・ヒルに寄稿してこう述べた。「イスラエルはガザにいる100万人を超える住民の立ち退きを求めているが、これは実行不可能なだけでなく、占領側の法的義務に違反しており、人道的な危機を招く恐れがある」

「立ち退き提案はさらに、公平と正義に基づく2国家解決の考えとも相容れない。住民から祖国を奪い、永続的な難民状態に置くことは、恒久的な政治解決に向けて前進することにはならないし、嫌悪感を生み、苦しみの感情、そして復讐心からの暴力という形の反応に火を付けることになる」

 

ザーランはこうも述べた。「エジプトの立場ははっきりしている。パレスチナ人をシナイ半島に移すことを含むいかなる解決案にも与することはできない。そうした動きは第2のナクバ(大災厄、48年5月のイスラエル建国に伴い、英委任統治領パレスチナから75万人以上の住民が追い出された)の引き金を引くことになるだろう。つまりそれは、先祖伝来の土地と断ち切ることのできない絆で結ばれ、困難に遭っても立ち上がる力を持つ民族にとっての、想像を絶する悲劇だ」

トランプと親しいリンゼー・グラム米上院議員(共和党)は、26日朝にCNNの番組でこう述べた。「すべてのパレスチナ人が(ガザを)去ってどこかに行くという案は、あまり現実的とは思えない。彼(トランプ)が何のことを言っているのか分からないが、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子やアラブ首長国連邦(UAE)、エジプトと話してみるといい」

「彼らはパレスチナ人のためにどんなプランを考えているのか。全員を(ガザから)出て行かせたいと思っているのか。すべてのパレスチナ人をガザから送り出すことに、アラブ世界は賛成しているのか。もし賛成だったら驚きだ」

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス前代表は26日、X(旧ツイッター)にこう投稿した。「すべてのパレスチナ人をガザから追放することでハマスの問題を『解決』するというのは、イスラエル極右がかねてから主張している案で、強制的な国外追放という重大な戦争犯罪だ。もしアメリカの兵器を使って実行された場合は、トランプはそれを支援し教唆したとして起訴されるかも知れない」

進歩主義的な政治アナリストのオマル・バダーは25日夜、Xにこう投稿した。「トランプ大統領はガザの民族浄化をあからさまかつ明確に呼びかけている。勘違いしてはならない。イスラエルがパレスチナ人を完全に抹殺し、パレスチナ人の自由と正義を求める戦いを根絶するのに、トランプは手を貸そうとしている」

パレスチナ系アメリカ人のコメディアン、サミー・オベイドは26日朝にXにこう投稿した。「この計画は最初から一貫して民族浄化だった。事態を注視してきた人間にとって、トランプのコメントは驚きでも何でもない。ガザはバイデン政権の下で15カ月にわたって文字通りじゅうたん爆撃を受け、飢餓状態に置かれていた。

自分の政権は他の政権に比べてパレスチナ人のために尽くしているなんてたわごとはたくさんだ。それに、状況を注視してこなかった人のために言っておくと、どんなもうろく爺さんがアメリカ大統領であろうと関係なく、パレスチナ人は自らの権利と祖国を守るために戦う用意がある」

 

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