ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
<全面禁止か米事業の売却か──トランプと中国の「取引」はどう転んでも米中関係を大きく揺るがすことになる>
トランプ米大統領は就任初日の1月20日、中国発の動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の米国内での利用を禁止する法律の施行を75日間延期。親会社のバイトダンス(北京字節跳動科技)が米事業の売却先を見つける猶予を与えた。
19日に新法が発効するのを前に、TikTokは18日深夜にアメリカでのサービスを停止したが、24時間足らずでトランプへの感謝のメッセージ(写真)と共に再開した。
ただし、中国企業であるバイトダンスは、地政学的に重要な問題について独自に判断を下すことはできない。つまり、TikTokの将来は中国共産党の手に委ねられている。そして中国の対応は、米中関係の短期的な展開を占う重要な手がかりになる。
今後のシナリオの1つは、75日以内にTikTokの米事業をアメリカもしくは別の国の企業に売却することだ。これは中国にとって最も賢明なアプローチであり、トランプの強欲さを1期目とは違う形で利用できることを物語る。
アメリカがTikTokの50%を所有しても、残り半分をバイトダンスが所有したままなら、アプリのデータとコンテンツアルゴリズムの管理は事実上、中国政府が握ることになる。
その場合、中国とのつながりを隠せば、米国内で右派のプロパガンダを広めるためにTikTokを利用することもできる。これは中国がアメリカの政治について理解を深めているという表れでもある。
たとえその売却先がトランプの盟友だったとしても、かえって中国にとっては明確な意思表示になるだろう。台湾の安全保障や南シナ海での拡張主義、貿易協定などの分野における譲歩と引き換えに、トランプの個人的な利益に擦り寄った取引を提示できるのだ、と。
大統領就任式のために訪米した中国の韓正(ハン・チョン)国家副主席は、イーロン・マスクと会談した。中国はマスクをTikTokの売却先として検討しているともいわれている。
【関連記事】中国、イーロン・マスクへのTikTok米国事業売却を検討=BBG
今回の話題は中国国内のテスラの工場と関税についてだったかもしれないが、いずれにせよ中国はマスクを有用な裏口とみているようだ。
ただし、中国の公式声明や国営メディアは、依然として売却に強く反対している。
売却が成立しなければ、主要なソーシャルメディアを味方にしておきたいトランプは、強引に事を進めようとしかねない。ビッグテックを取り込みたいトランプや一部議員が圧力をかけて、新法を無効にする新たな法案の可決が強行されることもあり得る。
トランプのTikTok延命の法的根拠は疑わしく、法的に不安定な状況は数カ月間、続きそうだ。
最後のシナリオは、しびれを切らしたトランプがTikTokの禁止を認め、中国との対立をさらにあおるというものだ。ただし、これで米企業の中国国内におけるビジネスはさらに困難になるだろう。
一方で、TikTok禁止は、政権内で対中強硬派と取引重視派の衝突を回避する唯一の選択肢でもある。
TikTokの周受資(チョウ・ショウツー)CEOが、米国家情報長官に指名されているタルシー・ギャバードの隣に座った就任式の画像に、米情報部門や安全保障スタッフは非公開のグループチャットで怒りをぶつけている。
トランプが中国と取引をしようとすれば、いずれ(おそらくより深刻な)衝突が起こるだろう。これはその予兆だ。
From Foreign Policy Magazine
<全面禁止か米事業の売却か──トランプと中国の「取引」はどう転んでも米中関係を大きく揺るがすことになる>
トランプ米大統領は就任初日の1月20日、中国発の動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の米国内での利用を禁止する法律の施行を75日間延期。親会社のバイトダンス(北京字節跳動科技)が米事業の売却先を見つける猶予を与えた。
19日に新法が発効するのを前に、TikTokは18日深夜にアメリカでのサービスを停止したが、24時間足らずでトランプへの感謝のメッセージ(写真)と共に再開した。
ただし、中国企業であるバイトダンスは、地政学的に重要な問題について独自に判断を下すことはできない。つまり、TikTokの将来は中国共産党の手に委ねられている。そして中国の対応は、米中関係の短期的な展開を占う重要な手がかりになる。
今後のシナリオの1つは、75日以内にTikTokの米事業をアメリカもしくは別の国の企業に売却することだ。これは中国にとって最も賢明なアプローチであり、トランプの強欲さを1期目とは違う形で利用できることを物語る。
アメリカがTikTokの50%を所有しても、残り半分をバイトダンスが所有したままなら、アプリのデータとコンテンツアルゴリズムの管理は事実上、中国政府が握ることになる。
その場合、中国とのつながりを隠せば、米国内で右派のプロパガンダを広めるためにTikTokを利用することもできる。これは中国がアメリカの政治について理解を深めているという表れでもある。
たとえその売却先がトランプの盟友だったとしても、かえって中国にとっては明確な意思表示になるだろう。台湾の安全保障や南シナ海での拡張主義、貿易協定などの分野における譲歩と引き換えに、トランプの個人的な利益に擦り寄った取引を提示できるのだ、と。
大統領就任式のために訪米した中国の韓正(ハン・チョン)国家副主席は、イーロン・マスクと会談した。中国はマスクをTikTokの売却先として検討しているともいわれている。
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今回の話題は中国国内のテスラの工場と関税についてだったかもしれないが、いずれにせよ中国はマスクを有用な裏口とみているようだ。
ただし、中国の公式声明や国営メディアは、依然として売却に強く反対している。
売却が成立しなければ、主要なソーシャルメディアを味方にしておきたいトランプは、強引に事を進めようとしかねない。ビッグテックを取り込みたいトランプや一部議員が圧力をかけて、新法を無効にする新たな法案の可決が強行されることもあり得る。
トランプのTikTok延命の法的根拠は疑わしく、法的に不安定な状況は数カ月間、続きそうだ。
最後のシナリオは、しびれを切らしたトランプがTikTokの禁止を認め、中国との対立をさらにあおるというものだ。ただし、これで米企業の中国国内におけるビジネスはさらに困難になるだろう。
一方で、TikTok禁止は、政権内で対中強硬派と取引重視派の衝突を回避する唯一の選択肢でもある。
TikTokの周受資(チョウ・ショウツー)CEOが、米国家情報長官に指名されているタルシー・ギャバードの隣に座った就任式の画像に、米情報部門や安全保障スタッフは非公開のグループチャットで怒りをぶつけている。
トランプが中国と取引をしようとすれば、いずれ(おそらくより深刻な)衝突が起こるだろう。これはその予兆だ。
From Foreign Policy Magazine